最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

73話 アイギスの盾

 右拳をフルスイングしてグラキエースドラゴンの顔を殴り、続けて左拳でもう一度顔を殴り飛ばす。
 だが、グラキエースドラゴンもやられっぱなしでは終わらない。氷で出来た爪を振り、俺を引き剥がそうとする。
 空中で身動きの取れない俺は簡単に引き裂かれ、その勢いで吹き飛ばされ地面に落ちる。


「クロト!!」


 エヴァが駆け寄ってくる。


「大丈夫だ。獄化・地装衣インフェルノトォールは体質を雷へ変え、更には雷の鎧を纏う。あの程度の攻撃じゃどうにもならねぇよ」


 とは言え、そう何度も攻撃を受けるわけにはいかない。
 この状態を保つだけで体力がゴリゴリ削られてるのがわかる。早く終わらせないと……


「クロト! 来るよ!」

「クァァァァァァァ」


 グラキエースドラゴンの口からかなりの魔力を感じる。
 この感じ……サラマンダーと戦った時、ブレスを吐く直前にも似たような魔力を感じた。つまり……ブレスが来る。さっきはシエラの結界術があったからなんとかなったが、あの量の氷柱のブレスをどうやって防いだもんか。
 俺は獄化・地装衣インフェルノトォールがあるから良いとしても、エヴァを守りきれない。


「クァァァァァァァァァッッ!!!」

「エヴァ!」

『雹術奥義 武具顕現 【アイギスの盾】 雹絶盾水鏡守護陣ひょうぜつたてすいきょうしゅごじん


 咆哮と共に冷たい突風が駆け抜け、直後俺達の周りに無数の氷柱が降り注ぐ。だが、俺達の所には一切降ってこない。
 見上げると巨大な円形の盾が俺達とグラキエースドラゴンの間を遮っていた。その盾が氷柱のブレスを吸収している。


「なんだ……あの盾。エヴァか?」

「はぁはぁ……何……今の……」


 エヴァがやったんじゃないのか。でもあの氷の盾と直前に聞こえた雹術奥義という言葉。どう考えてもエヴァが使ったんじゃ……


「本当にエヴァじゃないのか?」

「使ったのは私……だけど」

「だけど?」

「私の意志じゃない。一瞬だけ何かに意識を乗っ取られた……」

「意識を乗っ取られた?」


 ここには俺とエヴァ、そして未だブレスを吐き続けてるグラキエースドラゴンしかいないはず。
 精神を乗っ取る魔術も噂ではあるらしいが、そのたぐいじゃないみたいだな。


「多分……魔力もかなり持っていかれてるからやったのは私……だけどあんな魔術知らないし使えない」


 謎は深まるばかりか。
 気になる所ではあるが、そればっかりに構っていられない。


「エヴァ その事は後で考えるぞ」


 アイギスの盾はブレスを吸収しきるとグラキエースドラゴンに向けてブレスを放つ。それも見た限りではただの反射じゃない。
 相手の攻撃を吸収し、自分のエネルギーに変換して放つ。つまりは鏡盾シュピーゲルの上位互換……
 ブレスを吸収したアイギスの盾は氷柱を無数に放つブレスから、氷のエネルギーを一直線に飛ばすブレスへと変換させ、グラキエースドラゴンに放つ。ブレスはグラキエースドラゴンの顔に命中し、氷は顔に凍り付き、顔を覆う。


「自分の氷のブレスを自分で食らうとはな。この調子で畳み掛ける……エヴァ、魔力は大丈夫か?」

「うん! あの盾にかなり持っていかれたけど、まだまだ戦えるよ」

「よし、行くぜって……あいつ……」


 グラキエースドラゴンは顔に凍り付いた氷をバリバリと食べていた。


「ま、まぁ 氷なんだから食っても害はないだろうけど……」


「クァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」


 グラキエースドラゴンは氷を食べ尽し、咆哮と共に、またもやブレスを放つ。さっきより勢いも強く、一つ一つの氷柱もでかい。
 なんか、パワーアップしてないか?


「氷術! 武具顕現!!……だめだ 出来ない……」

「エヴァ!!」


 俺はエヴァを抱きかかえ飛び退く。雪の上をゴロゴロと転がり、ブレスの範囲から逃れる。
 数発氷柱をかすったが、俺は獄化・地装衣インフェルノトォールで無事。だが、エヴァがまずい。なんとか俺の体で隠し雷の鎧で守ったが、このブレス、さっきのとは比にならない。


「一体何がどうなってんだ……」

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