最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
50話 一人目
「……おれを買え」
「おや?」
檻の奥から男の声が飛んでくる。
奴隷の一人らしい。
「誰だ?」
「名前なんて後でいいだろ。おれにしておけ、買って後悔しないはずだ」
暗がりから紫髪短髪の青年が現れた。歳は俺達と同じぐらいで、実力はありそうだ。
「……わかった。こいつをくれ」
「クロト?」
「まいどあり。金貨三枚になります」
俺は金貨をジェームズに渡す。
「既に奴隷紋は刻んでありますので魔力を流すだけで奴隷紋が有効になります」
「わかった」
ジェームズは檻の鍵を開けて青年を出す。そして青年は俺の前まで来ると上の服を脱ぐ。そこにはしっかりと奴隷紋が刻まれていた。
「おれの名前はレオ、よろしく頼むぜ」
「おう」
俺は手を当て魔力の流れを作る。
まずは奴隷紋を通して魔力を流し込み、逆流させる。レオは少しビクッと動く。
すると奴隷紋の端から薄くなっていく。
「な、何を!?」
「お前、何をして……」
そして奴隷紋は消えて無くなった。
「俺が欲しいのは仲間であって奴隷じゃない」
一瞬の静寂が場を包む。
「はははは!! 面白い奴だ。このまま逃げてやろうかと思ったがいいぜ。なってやるよ。仲間に」
「ま、まぁ代金さえ払って頂ければ私はなんでもいいですが……」
レオは大笑いし、エヴァもクスクス笑っている。ジェームズだけが口をパクパクさせている。
「よろしくな、レオ。俺はクロトで、こっちは……」
「エヴァリオン。よろしく」
「クロトにエヴァリオンだな、よろしく!」
自己紹介をしていると周りからガチャガチャと音がしはじめる。
「俺も買いやがれ!」
「そーだ!働いてやるからよー!」
「めんどくさくなってきたな。クロト、エヴァリオン……それに店主。上に行こうぜ」
◇
「我流 熊ノ太刀」
「水術 水圧爆散」
リンリの炎を纏った剣と、エンリの水を纏った槍が衝突する。爆発がおき、周りが土煙に覆われる。
煙を突き抜け後ろに飛ばされたのはリンリだ。
「いたた、エンリは強いね」
リンリはショートの髪を整えながら立ち上がる。
「うむ、そもそも炎と水では相性が悪い」
煙の中から出てきたのはエンリ。リンリの姉で四大魔王の一人、アリスの奴隷だ。
「さて、訓練もこの辺にして、一旦部屋に戻るか」
「うん」
ここは魔族領、四大魔王が根城としている古城の中庭。
「ふぉっふぉっふぉっ。エンリ、リンリ。訓練は順調か?」
そこへ四大魔王の一人、リヴァが現れる。
「リ、リヴァ様」
「そう固くならなくてよい。お前さんらももうすぐ次の作戦には加わるのだろう?」
「は、はい。その予定です」
「次の作戦は熾烈を極めるやもしれん。わしも異能を全開にして戦うことになるじゃろう」
「リヴァ様の異能って……?」
「ん、そういえば詳しく話したことはなかったの。簡単に言えば死者蘇生だが、そんな夢のある異能ではない」
「どういうことだ?」
「冥府より死んだ者の魂を呼び出し、地上の肉体に封じ込める。しかし我々は兵力を増やすため疑似肉体に封じ込めている」
「それはだめなんですか?」
「魂と肉体が一致すればその者が持つ全ての力を引き出せる。だが、疑似肉体では一致せず、うまく思考することはおろか、喋ることもままならない者も少なくはない」
「確かに。死者蘇生というよりは、ゾンビ生成だな」
「うむ、更に肉体が一致した死者は確かに強力だが、わしも魔力を使う。故に数体しか持てんのじゃ」
「リヴァ様でも数体……」
「増やし方はもう一つあっての。生きている者にアンデットの攻撃を与える。詳しく言えば体内にアンデットの瘴気を入れると五年から十年でアンデット化する。もちろん肉体も一致してるから強いんじゃが、まず時間がかかりすぎるんじゃ」
「なるほど……」
「うむ、ではわしは会合に向かうとするかの」
そう言い残すとリヴァは古城の中へ入っていった。
「もう!エンリ! あんな口調だめだよ!」
「リヴァのジジイなら問題ないさ」
「そんなこと言って、これがアリス様やフロリエル様に聞かれたらどうするの!」
「うむ、たしかにそれもそうだな。以後気をつけることにする」
エンリは槍を持ち直し、リンリも剣を納め砂を払う。
「リンリ。私達はいつかここから逃げて自由に生きような」
「うん……」
「いつまで奴らの元で戦わなければならないのだろうか」
「いつか必ず救世主は現れる」
「親父の言葉か……」
◇
あの後、一階に戻ってきた俺達は買ったものをまとめていた。
「かなりの量だな」
荷物は三人で分けて持ってちょうどってぐらいの量があった。
「移動が大変そうだ」
「なら、馬車と馬を買われては?」
「なるほど、たしかに必要かもな。だが、金はこれだけしかない」
と、袋の中身を出す。金貨と銀貨が数枚ずつだ。
「これだけあれば馬二頭と馬車ぐらいは買えますよ」
「あ、ちょ……」
止める間も無くジェームズは硬貨を持っていってそのまま外へ出てしまった。
「まぁいいか」
「ねぇクロト、レオは?」
そういえば。周りを見渡してもレオは居ない。
「あったあった」
するとカウンターの奥から細長い物を持ってきた。
「何してたんだ?」
「悪い悪い。これを探してたんだ」
と、細長い物を俺の目の前に突き出す。
「俺の愛刀、二代銀月。奴隷になる時に取られちまったんだが、売られずに残ってて良かったぜ」
真っ白な鞘の刀だ。こいつも武器で刀を使うのか。
「そりゃ良かったな。行くぜ、それ一個持て」
と、荷物の袋を一つ指差す。
「あいよ」
俺達は一人一つ荷物を持ち、外へ出た。すると店の前には既に馬と馬車が用意されていた。
「準備が早いな」
ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
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リヴァ「読んでくれてありがとうの
わしは異能以外に魔術が使えなくての
剣術を極めたのじゃ
しかしエンリとリンリは努力家でいいのぅ
おっと、クイズじゃったな
Q13 わしの異能は死魂召喚
ではフロリエルの異能は?」
「おや?」
檻の奥から男の声が飛んでくる。
奴隷の一人らしい。
「誰だ?」
「名前なんて後でいいだろ。おれにしておけ、買って後悔しないはずだ」
暗がりから紫髪短髪の青年が現れた。歳は俺達と同じぐらいで、実力はありそうだ。
「……わかった。こいつをくれ」
「クロト?」
「まいどあり。金貨三枚になります」
俺は金貨をジェームズに渡す。
「既に奴隷紋は刻んでありますので魔力を流すだけで奴隷紋が有効になります」
「わかった」
ジェームズは檻の鍵を開けて青年を出す。そして青年は俺の前まで来ると上の服を脱ぐ。そこにはしっかりと奴隷紋が刻まれていた。
「おれの名前はレオ、よろしく頼むぜ」
「おう」
俺は手を当て魔力の流れを作る。
まずは奴隷紋を通して魔力を流し込み、逆流させる。レオは少しビクッと動く。
すると奴隷紋の端から薄くなっていく。
「な、何を!?」
「お前、何をして……」
そして奴隷紋は消えて無くなった。
「俺が欲しいのは仲間であって奴隷じゃない」
一瞬の静寂が場を包む。
「はははは!! 面白い奴だ。このまま逃げてやろうかと思ったがいいぜ。なってやるよ。仲間に」
「ま、まぁ代金さえ払って頂ければ私はなんでもいいですが……」
レオは大笑いし、エヴァもクスクス笑っている。ジェームズだけが口をパクパクさせている。
「よろしくな、レオ。俺はクロトで、こっちは……」
「エヴァリオン。よろしく」
「クロトにエヴァリオンだな、よろしく!」
自己紹介をしていると周りからガチャガチャと音がしはじめる。
「俺も買いやがれ!」
「そーだ!働いてやるからよー!」
「めんどくさくなってきたな。クロト、エヴァリオン……それに店主。上に行こうぜ」
◇
「我流 熊ノ太刀」
「水術 水圧爆散」
リンリの炎を纏った剣と、エンリの水を纏った槍が衝突する。爆発がおき、周りが土煙に覆われる。
煙を突き抜け後ろに飛ばされたのはリンリだ。
「いたた、エンリは強いね」
リンリはショートの髪を整えながら立ち上がる。
「うむ、そもそも炎と水では相性が悪い」
煙の中から出てきたのはエンリ。リンリの姉で四大魔王の一人、アリスの奴隷だ。
「さて、訓練もこの辺にして、一旦部屋に戻るか」
「うん」
ここは魔族領、四大魔王が根城としている古城の中庭。
「ふぉっふぉっふぉっ。エンリ、リンリ。訓練は順調か?」
そこへ四大魔王の一人、リヴァが現れる。
「リ、リヴァ様」
「そう固くならなくてよい。お前さんらももうすぐ次の作戦には加わるのだろう?」
「は、はい。その予定です」
「次の作戦は熾烈を極めるやもしれん。わしも異能を全開にして戦うことになるじゃろう」
「リヴァ様の異能って……?」
「ん、そういえば詳しく話したことはなかったの。簡単に言えば死者蘇生だが、そんな夢のある異能ではない」
「どういうことだ?」
「冥府より死んだ者の魂を呼び出し、地上の肉体に封じ込める。しかし我々は兵力を増やすため疑似肉体に封じ込めている」
「それはだめなんですか?」
「魂と肉体が一致すればその者が持つ全ての力を引き出せる。だが、疑似肉体では一致せず、うまく思考することはおろか、喋ることもままならない者も少なくはない」
「確かに。死者蘇生というよりは、ゾンビ生成だな」
「うむ、更に肉体が一致した死者は確かに強力だが、わしも魔力を使う。故に数体しか持てんのじゃ」
「リヴァ様でも数体……」
「増やし方はもう一つあっての。生きている者にアンデットの攻撃を与える。詳しく言えば体内にアンデットの瘴気を入れると五年から十年でアンデット化する。もちろん肉体も一致してるから強いんじゃが、まず時間がかかりすぎるんじゃ」
「なるほど……」
「うむ、ではわしは会合に向かうとするかの」
そう言い残すとリヴァは古城の中へ入っていった。
「もう!エンリ! あんな口調だめだよ!」
「リヴァのジジイなら問題ないさ」
「そんなこと言って、これがアリス様やフロリエル様に聞かれたらどうするの!」
「うむ、たしかにそれもそうだな。以後気をつけることにする」
エンリは槍を持ち直し、リンリも剣を納め砂を払う。
「リンリ。私達はいつかここから逃げて自由に生きような」
「うん……」
「いつまで奴らの元で戦わなければならないのだろうか」
「いつか必ず救世主は現れる」
「親父の言葉か……」
◇
あの後、一階に戻ってきた俺達は買ったものをまとめていた。
「かなりの量だな」
荷物は三人で分けて持ってちょうどってぐらいの量があった。
「移動が大変そうだ」
「なら、馬車と馬を買われては?」
「なるほど、たしかに必要かもな。だが、金はこれだけしかない」
と、袋の中身を出す。金貨と銀貨が数枚ずつだ。
「これだけあれば馬二頭と馬車ぐらいは買えますよ」
「あ、ちょ……」
止める間も無くジェームズは硬貨を持っていってそのまま外へ出てしまった。
「まぁいいか」
「ねぇクロト、レオは?」
そういえば。周りを見渡してもレオは居ない。
「あったあった」
するとカウンターの奥から細長い物を持ってきた。
「何してたんだ?」
「悪い悪い。これを探してたんだ」
と、細長い物を俺の目の前に突き出す。
「俺の愛刀、二代銀月。奴隷になる時に取られちまったんだが、売られずに残ってて良かったぜ」
真っ白な鞘の刀だ。こいつも武器で刀を使うのか。
「そりゃ良かったな。行くぜ、それ一個持て」
と、荷物の袋を一つ指差す。
「あいよ」
俺達は一人一つ荷物を持ち、外へ出た。すると店の前には既に馬と馬車が用意されていた。
「準備が早いな」
ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
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リヴァ「読んでくれてありがとうの
わしは異能以外に魔術が使えなくての
剣術を極めたのじゃ
しかしエンリとリンリは努力家でいいのぅ
おっと、クイズじゃったな
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ではフロリエルの異能は?」
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コメント
相鶴ソウ
Q13 答え
フロリエルの異能は超再生
どれだけダメージを受けてもたちどころに回復する異能。
だが、エヴァの黒氷や獄気をまとった攻撃を受けると著しく速度が落ちる