最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
49話 奴隷商
「こちらへ。足元気をつけてください」
ジェームズに連れられて俺とエヴァはカウンターの奥にある地下への階段を降りていた。
「おい、とっておきって何なんだ?」
「まぁ、まぁ、ついてくればわかりますから」
ようやく階段を降り終わると、ジェームズは壁に立て掛けてあるランタンを取り、火をつける。ボウッと火が付き、薄暗い地下が照らされる。
細長い通路で、奥に鉄格子の扉がある。一体何があるんだ……?
エヴァは好奇心と恐怖心の間で彷徨ってるらしく、俺の後ろから覗き込んだり引っ込んだりを繰り返している。
ジェームズは腰についた鍵の束の中から迷わず一本の銀の鍵を取り出し、鉄格子の扉を開ける。錆びた金属同士が擦れる嫌な音がして、鉄格子の扉が開く。
中は明かりがなく真っ暗だが、ジェームズは迷わず中には行っていく。続いて俺達も入っていくとかなり広い空間に出た。
両脇には人が五、六人は入れるほど巨大な四角形の物がカーテンのような布に覆われて幾つも置かれている。少し先に部屋に唯一ある明かりが吊るされている。
ジェームズは明かりの下に置いてある机まで歩いていき、上に置いてある紙の束に目を通し、別の紙の束と見比べている。
「…………おい」
「うん? あー、これは失礼。こちらへどうぞ」
入り口で呆然と立ち尽くす俺達を招き入れ、ジェームズは再び紙の束に目を落とす。
周りの四角形の物を見る。何かわからないが、ただの物じゃない気がする。中から微かに気配を感じる。人……いや、なんだこれ。
「お、おい。ジェームズ……」
「…………はい!」
何かを見つけたように紙の束を置き、ジェームズが振り返る。
「一体何なんだ?」
「我がジェームズ商店が誇るのは格安便利道具だけではありません」
ジェームズは四角い物へトコトコと歩いていくと端に垂れている紐を掴み一気に引く。バサッとカーテンが開き檻が現れる。
中には人が数人いるようで、俺達をジロジロと見ている。
「お、久しぶりの人だな」
「みろよぉ、女がいるぜ」
「おい女。もっとこっちへ来い」
エヴァはスッと俺の後ろに隠れながら憎悪を顕にする。その証拠に足元が凍ってきてる。
「落ち着け、エヴァ」
「……う、うん!」
「このように強靭な肉体を持つ奴隷達も多く保有しています」
そしてジェームズはその隣にある檻の紐も引く。カーテンが開くと同時に何かが檻を揺らす。
「グァァァァァァ!!」
「更に二級魔物や一級魔物と言った魔物の奴隷も居ります」
二級魔物のベアーが鉄格子を掴みこちらに牙を剥く。
「更にはエルフや魔族なんかも仕入れております」
ジェームズは紐を離し、再びカーテンが閉じる。
「おい、どういうつもりだ? 俺達は奴隷なんて……」
「まぁまぁまぁまぁ。とにかく騙されたと思って見るだけ見てくださいよ」
と、ジェームズは奥へ進んでいく。
「仲間を集めたい、と仰っておりましたがご要望は? 女、男、戦闘員から荷物持ち、なんでも揃ってますよ」
「その前に、奴隷について教えてくれ。こいつらはどうして奴隷なんだ?」
「そりゃ、場合によりますよ。凶悪犯を抑えるために奴隷にして売ったり、金に困った親が子供を売るなんて話も珍しくありません」
「それは、また酷い話だな」
「それがこの世界です。売ってる側の私が言えた事ではないですがね」
「そうか。しかしどうやって抑えてるんだ? さっき見た感じだと凶暴な奴も多いんだろ?」
「奴隷紋を使います。そうですね……実際に見てもらった方が早いでしょう」
ジェームズは一つの檻のカーテンを開け、中に向かって話しかける。
「ニア、来なさい」
すると中から一人の小柄な女の子が出てきた。
痩せ細った体、ボサボサな青い髪の毛、全身からみすぼらしさが出ている。歳は見た感じ十二歳程度だろうか。
「こちらをご覧ください」
すると、ジェームズはニアと呼ばれた少女の胸元に手を当て、服を少し下にずらす。ニアの胸元には赤く二重丸のようなものが描かれていた。
「それが……」
「奴隷紋です。まぁ実際は結界術から応用した制限魔術なんですけどね。扱える人はそう多くいません」
確かセントレイシュタンで会ったエンリとリンリにも刻まれてたんだよな。
「解除する方法はあるのか?」
「不思議な事を聞きますね。主人の魔力を奴隷紋を通して対象者に流すことで行動を縛ります。逆にその魔力を取り除いてやれば奴隷紋は消え、効果もなくなります」
「なるほど」
「解除する人なんてまぁいないですから、解除方法を知らない人も多いですね」
まぁ、そらそうだろうな。奴隷も、ありなのか……? ろくな道じゃない、むしろ奴隷の方がいいのかもしれない。
「さて、ご要望は?」
「そうだな……戦闘タイプなら何でもいい」
「なるほど、ではこの檻ですね」
と、ニアが入っていた檻の一つ隣の檻を指差す。
「適当に選んでくれ」
「ふむ、では……」
ジェームズは再び紙の束に目を落とす。
「……おれを買え」
ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
読んでいただきありがとうございます!
フォロー&いいね&コメントよろしくお願いします!
エンリ「読んでくれてありがとな
今回出てきた奴隷紋は私と妹のリンリにも刻まれている
ちなみに、主人の命令に逆らうと体が動かなくなるんだ」
リンリ「ではクイズです!
Q12 二級魔物ベアーの類種でテリア山に生息している魔物はなんでしょう!」
ジェームズに連れられて俺とエヴァはカウンターの奥にある地下への階段を降りていた。
「おい、とっておきって何なんだ?」
「まぁ、まぁ、ついてくればわかりますから」
ようやく階段を降り終わると、ジェームズは壁に立て掛けてあるランタンを取り、火をつける。ボウッと火が付き、薄暗い地下が照らされる。
細長い通路で、奥に鉄格子の扉がある。一体何があるんだ……?
エヴァは好奇心と恐怖心の間で彷徨ってるらしく、俺の後ろから覗き込んだり引っ込んだりを繰り返している。
ジェームズは腰についた鍵の束の中から迷わず一本の銀の鍵を取り出し、鉄格子の扉を開ける。錆びた金属同士が擦れる嫌な音がして、鉄格子の扉が開く。
中は明かりがなく真っ暗だが、ジェームズは迷わず中には行っていく。続いて俺達も入っていくとかなり広い空間に出た。
両脇には人が五、六人は入れるほど巨大な四角形の物がカーテンのような布に覆われて幾つも置かれている。少し先に部屋に唯一ある明かりが吊るされている。
ジェームズは明かりの下に置いてある机まで歩いていき、上に置いてある紙の束に目を通し、別の紙の束と見比べている。
「…………おい」
「うん? あー、これは失礼。こちらへどうぞ」
入り口で呆然と立ち尽くす俺達を招き入れ、ジェームズは再び紙の束に目を落とす。
周りの四角形の物を見る。何かわからないが、ただの物じゃない気がする。中から微かに気配を感じる。人……いや、なんだこれ。
「お、おい。ジェームズ……」
「…………はい!」
何かを見つけたように紙の束を置き、ジェームズが振り返る。
「一体何なんだ?」
「我がジェームズ商店が誇るのは格安便利道具だけではありません」
ジェームズは四角い物へトコトコと歩いていくと端に垂れている紐を掴み一気に引く。バサッとカーテンが開き檻が現れる。
中には人が数人いるようで、俺達をジロジロと見ている。
「お、久しぶりの人だな」
「みろよぉ、女がいるぜ」
「おい女。もっとこっちへ来い」
エヴァはスッと俺の後ろに隠れながら憎悪を顕にする。その証拠に足元が凍ってきてる。
「落ち着け、エヴァ」
「……う、うん!」
「このように強靭な肉体を持つ奴隷達も多く保有しています」
そしてジェームズはその隣にある檻の紐も引く。カーテンが開くと同時に何かが檻を揺らす。
「グァァァァァァ!!」
「更に二級魔物や一級魔物と言った魔物の奴隷も居ります」
二級魔物のベアーが鉄格子を掴みこちらに牙を剥く。
「更にはエルフや魔族なんかも仕入れております」
ジェームズは紐を離し、再びカーテンが閉じる。
「おい、どういうつもりだ? 俺達は奴隷なんて……」
「まぁまぁまぁまぁ。とにかく騙されたと思って見るだけ見てくださいよ」
と、ジェームズは奥へ進んでいく。
「仲間を集めたい、と仰っておりましたがご要望は? 女、男、戦闘員から荷物持ち、なんでも揃ってますよ」
「その前に、奴隷について教えてくれ。こいつらはどうして奴隷なんだ?」
「そりゃ、場合によりますよ。凶悪犯を抑えるために奴隷にして売ったり、金に困った親が子供を売るなんて話も珍しくありません」
「それは、また酷い話だな」
「それがこの世界です。売ってる側の私が言えた事ではないですがね」
「そうか。しかしどうやって抑えてるんだ? さっき見た感じだと凶暴な奴も多いんだろ?」
「奴隷紋を使います。そうですね……実際に見てもらった方が早いでしょう」
ジェームズは一つの檻のカーテンを開け、中に向かって話しかける。
「ニア、来なさい」
すると中から一人の小柄な女の子が出てきた。
痩せ細った体、ボサボサな青い髪の毛、全身からみすぼらしさが出ている。歳は見た感じ十二歳程度だろうか。
「こちらをご覧ください」
すると、ジェームズはニアと呼ばれた少女の胸元に手を当て、服を少し下にずらす。ニアの胸元には赤く二重丸のようなものが描かれていた。
「それが……」
「奴隷紋です。まぁ実際は結界術から応用した制限魔術なんですけどね。扱える人はそう多くいません」
確かセントレイシュタンで会ったエンリとリンリにも刻まれてたんだよな。
「解除する方法はあるのか?」
「不思議な事を聞きますね。主人の魔力を奴隷紋を通して対象者に流すことで行動を縛ります。逆にその魔力を取り除いてやれば奴隷紋は消え、効果もなくなります」
「なるほど」
「解除する人なんてまぁいないですから、解除方法を知らない人も多いですね」
まぁ、そらそうだろうな。奴隷も、ありなのか……? ろくな道じゃない、むしろ奴隷の方がいいのかもしれない。
「さて、ご要望は?」
「そうだな……戦闘タイプなら何でもいい」
「なるほど、ではこの檻ですね」
と、ニアが入っていた檻の一つ隣の檻を指差す。
「適当に選んでくれ」
「ふむ、では……」
ジェームズは再び紙の束に目を落とす。
「……おれを買え」
ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
読んでいただきありがとうございます!
フォロー&いいね&コメントよろしくお願いします!
エンリ「読んでくれてありがとな
今回出てきた奴隷紋は私と妹のリンリにも刻まれている
ちなみに、主人の命令に逆らうと体が動かなくなるんだ」
リンリ「ではクイズです!
Q12 二級魔物ベアーの類種でテリア山に生息している魔物はなんでしょう!」
コメント
相鶴ソウ
Q12 答え
ホワイトベアーです!
テリア山ではフロリエルに遊ばれてましたね