最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

10話 新しい仲間は悪魔?

「ったく……マナ、さっき言ってた意味がわかったぜ」

「え?」

「さっき『あの王子はだめよ』って言ってたろ?」

「あ、ええ、でしょ?」


 王子が出ていってすぐガイナとマナが話し出す。


「さてと、決めること決めよう!」

「おう」

「まず、レイグ、だっけ? お前は俺達の仲間になったって事でいいのか?」

「ああ。ってまぁ、もし入れてくれるならって話だけど……」

「もちろんだ、よろしく」

「ああ、よろしく!」

「軽く寝返ったな 大丈夫なのか?」

「大丈夫だと思うよ」

「そうか。で、エヴァリオンさん さっき言いかけてた事だけど、俺達のチームに入らないか?」

「…………だめ」

「どうして?」

「迷惑……かけるから。さっきも迷惑かけた」

「……どうして悪魔なんて呼ばれてるのか、教えてくれないか?」

「ん…………」


 エヴァリオンさんは俺が何も知らないことに心底驚いている様子だったが、コクっと頷き話し始める。
 話を簡単にまとめるとこうだ。


 今は亡きハルバード公爵家は代々魔術一家として有名だった。
 ハルバード家の血が入っているものは例外なく二属性持ち、更に人理限界をもつ者も珍しくないという。……人理限界とは訓練しても身につかない人の理を超えた能力のこと。一生をかけても習得する事が出来ず、まさに才能と呼ばれるものだ。
 エヴァリオンさんにも人理限界があり、それが氷属性だ。水と風の属性を合わせることにより氷の魔術を使用可能にする。


 エヴァリオンさんが十歳になったある日、魔術訓練を行っている際に事件は起きた。
 ハルバード公爵がエヴァリオンさんの氷属性の真価を開花させようと無理に力を引き出したせいで魔力が暴走。ハルバード公爵、ハルバード夫人、使用人を巻き込みエヴァリオンさん以外全員が死亡。それが原因でハルバード公爵は滅び、今に至る。


 そのせいで氷の悪魔、なんて呼ばれているらしい。


「…………」


 話し終えたエヴァリオンさんは無言で俯く。話した事で俺達が去っていくと思ってるみたいだ。


「……辛かったな」


 俺はエヴァリオンさんの頭を撫でながら言う。


「……っ!」


 エヴァリオンさんは驚いた表情でこっちを見てくる。


「……な……んで……? 他の人に話したらみんな私を……」

「俺も家族や友達、知り合いを全員殺された。今はだいぶ立ち直ったけどかなり辛かった。エヴァリオンさんの場合は自分の意志では無いとはいえ自分の力のせいで起こってしまった事故だ。辛くないわけがない」

「…………うっ」


エヴァリオンさんの目に涙が滲む。


「なぁお前ら、今の話を聞いてまだこいつを氷の悪魔なんて呼ぶか?」


 俺は後ろに立っているガイナ、マナ、レイグを順番に見る。


「呼ぶわけねぇだろ」

「辛かったでしょうね……」


 良かった、みんな受け入れてくれた。
 と、次の瞬間衝撃が……いや、エヴァリオンさんが抱きついてきた。


「……ありがとう……ありがとう…………」


 俺の胸に顔を押し付けて泣きながらエヴァリオンさんは言う。


「大丈夫だ、エヴァリオンさん。俺達はエヴァリオンさんから離れたりしないから」

「……エヴァ」

「ん?」

「エヴァって呼んで、父上や母上、レボはそう呼んでくれた」

「…………わかった。エヴァ」

「ありがとう……本当に……」


 エヴァは時間にすればたった五分ほどではあったが今まで溜まっていた気持ちを吐き出した。涙と共に。


「……エヴァリオン・ハルバード」

「ん……?」


エヴァが泣き終わると今まで黙っていたレイグがエヴァに話しかける。


「悪かった」


 レイグはエヴァに頭を下げた。
 こいつ……良い奴だ。


「事情も知らず、王子……いや、イーニアスの命令だったとしても、僕は君を氷の悪魔と罵り、剣を向けた。本当に、すまなかった」

「……もういいよ 今は私を理解してくれる仲間がいる。レイグもその一人でしょ?」

「……ああ!よろしく頼むよ」

「よしゃぁこれで五人。とりあえずチームの紙だけ書いて一旦外に出ようぜ」


俺達はガイナの号令で紙に集まる。


「えーと、メンバーの名前とリーダーの名前、でチーム名だよな?」

「ええ、確かそうだったわ」

「んーと、リーダーは……エヴァだな」

「んっ……?なんで?」

「一番向いてると思ってさ、嫌か?」

「…………クロトが言うならそれで、いい」

「よし、サンキューな」


 俺はぱぱっと紙にチーム名と自分の名前を書き他のみんなに回す。


「このチーム名……ふふ、いいじゃない!」

「だろ?」

「流石クロトだぜぇ」

「……ん?」

「いいと思うよ」


 俺が考えたチーム名はこうだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

氷の姫イエロ・プリンセッサ


・ナンバーズ

No.1ナンバーワン
エヴァリオン・ハルバード 【水・風】

No.2ナンバーツー
クロト・アルフガルノ 【雷】

No.3ナンバースリー
ガイナ・ベルガラック 【土】

No.4ナンバーフォー
マナティア・エルネア 【火・光】

No.5ナンバーファイブ
レイグ・フィルトルト 【水】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「エヴァは氷の悪魔なんかじゃない。そういう意味を込めた」

「……恥ずかしい」

「ふっ。で、クロト。君、雷なんて大丈夫なのかい? 剣を交えたから剣術ができるのはわかったけど……」

「任せとけよ、なんなら一戦交えてみるか?」

「…………クロト」

「ん?」

「……私と戦って」

「ん、おう!」





「本当に良いのか? エヴァ」

「うん、クロトの力を見てみたい」

「わかったよ じゃあ全力で行くぜ」


 俺はテンペスターを抜き剣狼の構えを取る。


「黒帝流 剣狼」


 目にも止まらぬスピードでエヴァに突きを放つ。流石に当たる直前で止めるつもりではあるが、本気で挑んだ方がエヴァの為だ。


「氷術 氷の盾アイスシールド


 エヴァの前に氷の薄い板のようなものが出現する。これが氷術か。


 剣狼と氷の盾アイスシールドがぶつかる。
 氷の盾アイスシールドは剣狼の衝撃を無へと返し崩れる。


「……すごいな!」

「ふふっ、気を抜かないほうがいいよ。……氷術 氷の雨アイスレイン


 上空に数十個のつららが生成される。


「すご、こんな広範囲に……雷術 雷装衣」


 俺は雷を体に纏いテンペスターに魔力を流す。


「降り注げ」


 エヴァの合図とともにつららが落下してくる。
 これじゃ範囲が広すぎて避けようにも避けれない。


「雷帝流 雷千剣」


 俺はテンペスターを頭上で振る。雷の斬撃が上に向かって千に別れて氷の雨アイスレインとぶつかる。


「……雷でそんなに戦える人、見たことない」

「はは、俺もやるだろ? 雷は最強の魔術属性だ。氷にも負けないぜ」


 俺は一気に踏み込みエヴァに接近する。
 纏っている雷がバチバチと音を立てる。


「雷術 雷拳」


 雷を纏った右手でエヴァの顔面を殴り飛ばす。


「あ、悪い!」


 止めるつもりが勢い余って殴り飛ばしてしまう。


「氷術 氷の身代わりアイススケープゴート。大丈夫だよ ただの人形だから」


 よく見ると殴ったエヴァは氷となって砕け散った。
 そして俺の背後にエヴァが立つ。


「まったく……恐れ入るな。雷術……」

「これで決めるよ。氷術……」


 俺とエヴァは十メートルほど間隔を開けて向かい合いお互いに魔術を発動させる。
 俺は手のひらと手のひらを握りこぶし一つ分間隔を開けて向かい合わせ、バチバチと雷を生成。雷丸を作り出す。


 エヴァは両手を重ね魔力を込める。微かに冷気が漏れ出ている。


「雷砲」

氷の大砲アイスキャノン


 雷砲と氷の大砲アイスキャノンが激突。
 雷と氷を伴う激しい爆発が起きる。かなりの衝撃だ。氷の破片が飛んでくるので腕で顔を覆いながらなんとか前に目を向ける。


 雷砲と氷の大砲アイスキャノンの力は均衡しそのまま消滅した。


 俺もエヴァもそのまま向かい合ったままだ。


「ふぅ……流石、強いな」

「クロトもすごい。雷は最弱だって皆言ってたのに全然そんなことない」

「まぁな、さて、レイグ。これで俺もそこそこ強いって証明できたか?」

「ああ、なんというか、すごいよ」

「ハッハッハッ クロト 一ヶ月前雷属性って見たときは心配になったもんだが、全くの無意味だったな。たった一ヶ月でここまで使いこなしてるし」

「そんなに褒めるなよ。さ、帰ろうぜ」

「「「「おー!!!(……おー)」」」」



ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
10話読んでくれてありがとうございます!


今日は少し早めの投稿です!
後半はエヴァvsクロトでした!
もっと上手く戦闘描写とか書けたらいいんですがなかなか……




レイグ「10話 新しい仲間は悪魔? を読んでくれてありがとう

これからも応援してくれると嬉しいよ

良かったって人はグッド&フォロー&コメント

ここどうなってるんだ?って人はコメントにて質問してくれると助かる

ではまたね」

コメント

  • 相鶴ソウ

    コメントありがとうございます♪

    いえいえ!
    更新楽しみに待ってます!

    頑張りましょう!

    1
  • 桜花 時雨

    読ませていただきました。

    話が纏まっていて、とても読みやすく分かりやすかったです!

    僕の作品にコメントして頂き、ありがとうございました。

    更新を楽しみにしています!

    お互い頑張りましょう!

    3
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