最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

8話 魔力不足という死活問題

「行きますよ……」

「ええ」


 俺とイザベラさんはいつもの訓練所で距離を起き向かい合う。
 これから入学前最後の訓練を始めるところだ。
 今までは剣術のみ、魔術のみの模擬戦しかしたことなかったが、今日は剣術魔術両方ありの模擬戦をする。これが一番実戦に近い形だろう。


 俺はテンペスターを抜き、剣狼の構えをとる。そして魔装衣と魔鉄を発動させる。雷術はかなりの魔力を使うのでなるべく温存しておきたいが、本気のイザベラさんと戦うなら必須だろう。


 イザベラさんも豪傑流の構えを取る。


「黒帝流 剣狼」


 俺は一気に踏み込みイザベラさんに接近。
 全力の突きを放つ。が、イザベラさんも一年間の訓練で俺がそう来ることはわかっている。お互いある程度の手の内を明かしているだけに意表をつく攻撃は厳しい。


「豪傑流 撃鉄」


 イザベラさんは振り下ろした剣で器用に剣狼の軌道をずらす。
 そのせいで俺はバランスを崩し、前のめりになるがその勢いを利用してイザベラさんと距離を取る。


 数回地面を転がりイザベラさんと再び向かい合う。


 一年間ほぼ毎日手合わせし、お互いの手の内をさらしてるとは言っても、俺はまだイザベラさんの聖術を全て見たわけじゃない。
 俺のほうが不利だが、最近使いこなせてきた雷術があれば多少は太刀打ちできるだろう。


「雷術 雷装衣」


 魔装衣の魔力を雷へ変換させ雷を纏う技だ。


「……へぇ、見たことないわね」

「イザベラさんを倒すために考えた新技ですよ」

「それは楽しみね…… さぁ、来なさい!」


 イザベラさんを倒す新技と言っても俺の魔力量じゃ数分しか発動してられない。それほど魔力の消費が激しいのだ。


 テンペスターに雷を流し、バチバチと稲妻を纏う。魔鉄と同じ要領で武器に雷を纏う事が出来るのだ。
 構えを取り、イザベラさんと数秒にらみ合った後に一気に距離を詰める。


 これまでとは桁違いに上がった速度で接近する。一瞬反応に遅れたイザベラさんだが流石は実力者というべきか、致命的な隙になるわけでもなく、体勢を崩すわけでもない。本当に少しだけ驚いただけですぐに対応してくる。


「豪傑流 断斬」


 イザベラさんはローズレインを腰に添えるように構え、横一閃に薙ぎ払う。


「雷帝流 稲妻剣」


 対する俺は上空に振り上げたテンペスターを一気に振り下ろす。
 上から振り下ろした一撃と横からの一閃がぶつかるも、パワーは断斬の方が上。そのまま弾かれて吹き飛ばされる。


 何度か地面を転がり、なんとか止まる。


「いってー、流石に強いですね……!」

「クロトもやるじゃない」

「へへ、まだまだこれからですよ」


 俺はテンペスターを両手で持ち直し、上に掲げる。


「雷帝流…………」


 イザベラさんは左手を前へ出し魔力を込める。


「ふふ、私も少し本気を出そうかしら。聖術 聖なる新星ホーリーノヴァ


 イザベラさんの左手に光が集まり、そこから数十本以上の光の矢が俺めがけて一斉に放たれる。



「………雷千剣」


 そのままテンペスターを振り下ろす。
 雷の斬撃が千に分かれて聖なる新星ホーリーノヴァと衝突。雷と光のぶつかり合いってこともありかなり眩しい。
 聖なる新星ホーリーノヴァと雷千剣の勝負は雷千剣の斬撃一つ一つが聖なる新星ホーリーノヴァを相殺し、引き分けに終わる。


 まだ数発しか雷術を撃っていないにもかかわらずここまで魔力が持っていかれる。


「はぁはぁ……だめか……」

「ふぅ……すごいわ クロト。まさか聖なる新星ホーリーノヴァを完全に防ぐなんて……」

「でも……これ以上は……はぁはぁ…」


 だめだな。魔力をかなり持っていかれた。
 雷装衣も魔装衣に戻ってるし、テンペスターに纏わせていた雷も消えてる。まだ完全になくなったわけではないが、これ以上雷術を連発すれば確実に魔力切れに陥る。


「光属性魔術はね、癒術と聖術ともう一つ、結界術に優れてるの。属性的に攻撃に優れた雷とは違って威力の高い魔術は無いのだけれど、それでも聖なる新星ホーリーノヴァは上位魔術なのよ」


 嬉しそうなイザベラさんの表情がキリっとした真剣なものに変わる。


「そしてこれが私の使える最強の聖術」


「まだ上があるんですか…… 今のでこっちも全力なんですけどね」


 さてどうする。雷千剣以上の技は魔力が足りない……


「聖術奥義 聖なる輝きホーリーグリッター


 イザベラさんは両手を前に出す。そこに光が集まり俺目掛けて真っ直ぐ放たれる。


 一転に凝縮された魔術の強さは雷砲で十分理解している。だがこの聖術は雷砲よりもずっと高威力。打ち破るなら雷砲ではまるで威力が足りない。
 となれば使ったことないけどあれやってみるか。当たって砕けろだ。


「無術 鏡盾シュピーゲル


 俺の目の前に魔法陣が展開される。
 鏡盾シュピーゲルは無属性魔術の一つで敵の物理攻撃、魔術を二倍三倍にして跳ね返す術だ。
 図書館に通っているときに見つけ、なにかに使えるかと思って練習していたのだった。


 聖なる輝きホーリーグリッター鏡盾シュピーゲルにぶつかるとイザベラさんめがけて跳ね返る。
 イザベラさんは驚いた表情で何もできずに直撃する。


 が、聖なる輝きホーリーグリッターはイザベラさんに当たる瞬間に分散しイザベラさんに吸収される。


「ふぅ……言っておくべきだったわね。魔術はね……術者本人に当たると魔力に還元されるの。つまり、魔力が回復しちゃうのね」

「え……まじ……?」

「ふふ、ごちそうさま。鏡盾シュピーゲルは物理攻撃を使う相手、もしくは多人数が相手のときに使わないとね」


 まじかよ……会心の一手だと思ったんだけどな。
 俺の最後の手段も打ち破られ、もはや打つ手はない。だが、最後に意地は見せてやる。


 俺は魔装衣を解きテンペスタージを鞘に戻す。そしてイザベラさん目掛けて走る。


「ふふ、真っ向勝負かしら?受けて立つわよ」

「はぁぁぁぁぁぁ!」


 俺は右手に全魔力を込める。


「雷術 雷拳」


 右手に雷が宿る。
 俺の全魔力だ……威力はそこそこだろう。


「どこにそんな魔力が残ってたのかしら……でも、全力には全力で応えるわ。クロトのおかげで魔力完全回復してるしね! 見せてあげる、私のもう一つの奥の手。結界術奥義 聖域サンクチュアリ


 イザベラさんの右手の先から白い魔法陣が展開される。
 聖域サンクチュアリに思いっきり拳を振りかぶり雷拳をぶつかる。当然ボロボロの魔力で最強の結界は超えられない。だが……退くことは出来ない。


 俺は右手に魔力を集める。
 そして、一気に放つ。


「だ、だめよ それ以上は…………」


 雷を伴った大爆発が起き、俺は意識を失った。





「ん…………ここは……」

「あ、やっと起きた?」


 体を起こすとご飯を作っていたイザベラさんがこっちに来る。


「えーと、ああそうか 俺は気を失ったのか」

「そうよ。ほんとにびっくりしたわよ あんな無理矢理聖域サンクチュアリを破ろうとしてくるなんて……」

「あはは……すみません。あそこで退いたら確実に負けてたので……」

「だからって……」


 苦笑いを浮かべながらイザベラさんは呆れたように言う。


「早く回復させなさいよ。明日からエルトリア学園でしょ」

「はい!…………あ、そうだ イザベラさん」  

「ん?」

「……いいこと考えたんです」





「本当に一年間ありがとうございました。あの時助けてもらわなければ俺はすでに死んでました。本当に感謝してます」


 俺はイザベラさんに最後のお礼を告げていた。


「ふふ、気にしなくていいわよ。また何かあれば来なさいよ? 行ってらっしゃい」


 行ってきますと答え俺はエルトリア学園へ向う。



ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
8話読んでいただき、ありがとうございます!

今日は調子がいいので2話目出しちゃいます!

クロト君、このままじゃ長期戦はろくに出来ませんね……
どうするのか、乞うご期待!!なんてね

そういえば一つ聞きたいんですが、あとがきのコーナーで毎回キャラが喋ってくれてるんですが、正直に、アレいりますか??率直な感想ほしいです!!



テンペスター「…………………………」

クロト「おい誰だ!テンペスターにあとがきコーナーやらせようとしてるの!
剣ができるわけ無いだろ!」

テンペスター「…………………………」

クロト「……誰か、助けて……」

「最弱属性魔剣士の雷鳴轟く」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • 相鶴ソウ

    コメントありがとうございます(≧∀≦)

    本当ですか!このまま好きでいてもらえるように頑張ります(*^^*)

    1
  • 黒音

    こういうのめっちゃ好き( *´꒳`* )

    2
コメントを書く