近距離魔法使いの異世界冒険記 ~妹と二人で転生しました~
第19話 カルミと、魔法
「連れて来てくれてありがとう。きっとすぐに目が覚めるわ」
倒れたカルミを家に連れて行くと、母はすぐに母のベッドを整えてカルミを寝かせてくれた。
「でも、どうしてあのカルミが倒れたのかしら。不死鳥なんて二つ名もあるくらいなのに」
「「不死鳥?」」
「えぇ。炎を操る魔法が得意で、魔法を使っても魔力が減らないからそう呼ばれているのよ」
確かに、いくら魔法を使っても魔力は一切減っていなかった。あれは見間違いなどではなかったようだ。
そういえばちょうど聞こうと思っていたことだし、親友の母なら知っているだろうから聞いてみよう。
「確かに魔力減ってなかったよね。あと、魔法の構築も異様に速かったし。あれはなんでなの?」
「そうね……まず魔法の構築の速さは、カルミのスキルのせいよ。カルミのスキルは『速攻』で、魔法の構築にかかる時間が通常の100分の1になるっていうスキルなのよ」
強すぎない?
「……強すぎない?」
……あ、つい思っていたことが口に出てしまった。
「えぇ、本当に強力なスキルよね」
「あ、やっぱりお母さんもそう思うんだ」
「まぁもし貰えるなら、冒険者をやってた頃に欲しかったわ。今はもうほとんど魔法は使わないからね」
確かに母は魔法使いとはいえ、魔法を使っているところはあまり見たことがない。あるとすれば、怪我をした時に治癒魔法を使ってくれた時くらいだ。
「さて、次は魔力が減らない理由よね。あれは……」
「私のオリジナル魔法の効果よ」
声がした方を見ると、父と母の部屋から出てきたカルミが居た。
「エイリーちゃん、さっきは急に倒れちゃってごめんなさいね。降参よ。それに、ベッドまで貸してもらっちゃって……本当に申し訳ないわ」
「大丈夫よ。起きてきたなら、説明を頼もうかしら。私はまだあんまり理解出来てない魔法だし」
「了解。まぁ説明はそんなに難しくないんだけどね」
カルミは軽く伸びをしてから説明を始めた。
「あれは私のオリジナル魔法で、箱などの入れ物の内側と外側の魔力の密度を揃える魔法なの。それは内側に物が入っていても問題ないわ」
「……それのどこに魔力の消費がなくなる要素があるんですか?」
「確かに、それだけじゃ魔力は減るもんね」
「ところが、よ。その箱の代わりに生物を対象にすると、外側の魔力は対象にされた生物の支配下に置かれるの」
……?箱の代わりに生物を対象にするとはどういうことだろうか。生物に内側と外側があるようには思えないし。
「……まぁ、ちょっと理解するのは難しいわよね。さっき内側に物が入っていても問題ないって言ったでしょう?だから、身体の表面にある皮膚を箱として考えればいいの。内側に何が詰まっていようと関係ないんだから」
「なる……ほど……?」
「無理に理解しろとは言わないわ。ほとんどの人がその用法を出来ないんだけど、理解できないのが理由だしね。だから、この魔法は実質オリジナル魔法なのよ」
あぁ、聞く限り普通の魔法なのになぜオリジナルなのかと思っていたけど、そういうことだったのか。
「で、要するになんだけど、私の中の魔力と空気中の魔力の密度が同じ時にそれを使えば魔力量は変わらないし、その上空気中の魔力を使えるから魔力が減らないのよ。しかも私は一瞬で魔法を構築できるから、ただ見ているだけじゃ何をしたのかわからないのよね」
「なるほど。なんとなくわかりました」
「空気中の魔力と自分の中の魔力の密度を揃えて、空気中の魔力を使って……あれ?」
隣で内容を整理していたエイリーが何かに気付いたのか、少し顔が青ざめている。
「エイリー、どうしたの?」
「いや、あの……カルミさんが倒れたのって、私のせいなんじゃないかと……」
「確かにエイリーと戦っているときに倒れたけど、それとはちょっと違うんじゃない?」
「えぇ、あれはきっと、私が魔法の制御を誤っただけよ」
エイリーがしたことと言えば、イグニッションを無効化して、アイシクルアローを避けて、灼熱剤を投げただけ。これと言ってカルミが倒れるようなことは……
「……あ」
「エンシーも気付いた?」
「うん。でも、あれには私も協力したからエイリーだけのせいじゃないよ」
「えっと……どういうことかしら?」
何が起こったのか私はわかったけど、逆に言えば私とエイリーしかわからないので、カルミがわからないのは仕方がない。
「あの、私が最後に投げたものを覚えてますか?」
「えぇ、何か液体が入ったガラスの管だったわよね。あれがどうかしたの?」
「あの中に入っていた液体なんですけど、簡単に言えば、周りの空気中の魔力を消費して熱を発するんです。なので……」
「恐らくですが、さっきの魔法で魔力の密度を揃えたときに、カルミさんから魔力が大量に溢れちゃって倒れたんじゃないかと……」
まさか、灼熱剤がそんな風に働くとは思っていなかった。ただの嫌がらせのようなつもりで作っていたのに……。
「なるほどね。……確かにそれは原因になった可能性があるわね」
「カルミが倒れたのって、そんなことがあったのね」
「さて、それはともかく、約束通り推薦させてもらうわね。ただ……」
カルミは少し気まずそうな顔をしている。どうしたのだろうか。
「もう少し休ませてもらえると助かるわ。まだ魔力が回復しきってないから」
「えぇ、もちろん大丈夫よ。なんなら今日は泊っていったらどうかしら」
確かにそれがいいかもしれない。もうすぐ夜だから、休んでから行くとなると、夜中に出ることになるだろうし。
などと話したりしていると、カルミを家に運び込むや否や家を出て行った父が帰ってきた。
「お、カルミさん目が覚めたのか」
「あら、アナタ。おかえりなさい」
「お陰様で。迷惑をかけちゃってすいません」
「いやいや、大丈夫だ。それより、これを買いに行ってたんだ。飲んでくれ」
父が手に持っているのは「エリクサー」と呼ばれるポーションだ。飲むと魔力が回復する。
「いえいえそんな、大丈夫ですよ」
「いや、飲んでくれ。借りだとでも思うなら、いつか返してくれればいい」
「うーん……じゃあ一応貰っておきます。ありがとうございます」
父は満足げに頷いた。
「そうそうアナタ、今晩カルミが泊っていっても大丈夫よね?」
「あぁ、大丈夫だぞ」
「いえ、流石にこれ以上迷惑をかけるわけには……。軽く休ませてもらうだけで大丈夫なので」
「まさか夜中に出発する気?それに、王都まで魔力は持つの?」
「うっ……」
カルミは気まずそうに2人から目線を逸らし、私たちの方をチラリと見た。
「私たちも大丈夫ですよ」
「全く気にしません」
「……お言葉に甘えさせてもらいます」
と、カルミ今晩泊っていくことになった。
倒れたカルミを家に連れて行くと、母はすぐに母のベッドを整えてカルミを寝かせてくれた。
「でも、どうしてあのカルミが倒れたのかしら。不死鳥なんて二つ名もあるくらいなのに」
「「不死鳥?」」
「えぇ。炎を操る魔法が得意で、魔法を使っても魔力が減らないからそう呼ばれているのよ」
確かに、いくら魔法を使っても魔力は一切減っていなかった。あれは見間違いなどではなかったようだ。
そういえばちょうど聞こうと思っていたことだし、親友の母なら知っているだろうから聞いてみよう。
「確かに魔力減ってなかったよね。あと、魔法の構築も異様に速かったし。あれはなんでなの?」
「そうね……まず魔法の構築の速さは、カルミのスキルのせいよ。カルミのスキルは『速攻』で、魔法の構築にかかる時間が通常の100分の1になるっていうスキルなのよ」
強すぎない?
「……強すぎない?」
……あ、つい思っていたことが口に出てしまった。
「えぇ、本当に強力なスキルよね」
「あ、やっぱりお母さんもそう思うんだ」
「まぁもし貰えるなら、冒険者をやってた頃に欲しかったわ。今はもうほとんど魔法は使わないからね」
確かに母は魔法使いとはいえ、魔法を使っているところはあまり見たことがない。あるとすれば、怪我をした時に治癒魔法を使ってくれた時くらいだ。
「さて、次は魔力が減らない理由よね。あれは……」
「私のオリジナル魔法の効果よ」
声がした方を見ると、父と母の部屋から出てきたカルミが居た。
「エイリーちゃん、さっきは急に倒れちゃってごめんなさいね。降参よ。それに、ベッドまで貸してもらっちゃって……本当に申し訳ないわ」
「大丈夫よ。起きてきたなら、説明を頼もうかしら。私はまだあんまり理解出来てない魔法だし」
「了解。まぁ説明はそんなに難しくないんだけどね」
カルミは軽く伸びをしてから説明を始めた。
「あれは私のオリジナル魔法で、箱などの入れ物の内側と外側の魔力の密度を揃える魔法なの。それは内側に物が入っていても問題ないわ」
「……それのどこに魔力の消費がなくなる要素があるんですか?」
「確かに、それだけじゃ魔力は減るもんね」
「ところが、よ。その箱の代わりに生物を対象にすると、外側の魔力は対象にされた生物の支配下に置かれるの」
……?箱の代わりに生物を対象にするとはどういうことだろうか。生物に内側と外側があるようには思えないし。
「……まぁ、ちょっと理解するのは難しいわよね。さっき内側に物が入っていても問題ないって言ったでしょう?だから、身体の表面にある皮膚を箱として考えればいいの。内側に何が詰まっていようと関係ないんだから」
「なる……ほど……?」
「無理に理解しろとは言わないわ。ほとんどの人がその用法を出来ないんだけど、理解できないのが理由だしね。だから、この魔法は実質オリジナル魔法なのよ」
あぁ、聞く限り普通の魔法なのになぜオリジナルなのかと思っていたけど、そういうことだったのか。
「で、要するになんだけど、私の中の魔力と空気中の魔力の密度が同じ時にそれを使えば魔力量は変わらないし、その上空気中の魔力を使えるから魔力が減らないのよ。しかも私は一瞬で魔法を構築できるから、ただ見ているだけじゃ何をしたのかわからないのよね」
「なるほど。なんとなくわかりました」
「空気中の魔力と自分の中の魔力の密度を揃えて、空気中の魔力を使って……あれ?」
隣で内容を整理していたエイリーが何かに気付いたのか、少し顔が青ざめている。
「エイリー、どうしたの?」
「いや、あの……カルミさんが倒れたのって、私のせいなんじゃないかと……」
「確かにエイリーと戦っているときに倒れたけど、それとはちょっと違うんじゃない?」
「えぇ、あれはきっと、私が魔法の制御を誤っただけよ」
エイリーがしたことと言えば、イグニッションを無効化して、アイシクルアローを避けて、灼熱剤を投げただけ。これと言ってカルミが倒れるようなことは……
「……あ」
「エンシーも気付いた?」
「うん。でも、あれには私も協力したからエイリーだけのせいじゃないよ」
「えっと……どういうことかしら?」
何が起こったのか私はわかったけど、逆に言えば私とエイリーしかわからないので、カルミがわからないのは仕方がない。
「あの、私が最後に投げたものを覚えてますか?」
「えぇ、何か液体が入ったガラスの管だったわよね。あれがどうかしたの?」
「あの中に入っていた液体なんですけど、簡単に言えば、周りの空気中の魔力を消費して熱を発するんです。なので……」
「恐らくですが、さっきの魔法で魔力の密度を揃えたときに、カルミさんから魔力が大量に溢れちゃって倒れたんじゃないかと……」
まさか、灼熱剤がそんな風に働くとは思っていなかった。ただの嫌がらせのようなつもりで作っていたのに……。
「なるほどね。……確かにそれは原因になった可能性があるわね」
「カルミが倒れたのって、そんなことがあったのね」
「さて、それはともかく、約束通り推薦させてもらうわね。ただ……」
カルミは少し気まずそうな顔をしている。どうしたのだろうか。
「もう少し休ませてもらえると助かるわ。まだ魔力が回復しきってないから」
「えぇ、もちろん大丈夫よ。なんなら今日は泊っていったらどうかしら」
確かにそれがいいかもしれない。もうすぐ夜だから、休んでから行くとなると、夜中に出ることになるだろうし。
などと話したりしていると、カルミを家に運び込むや否や家を出て行った父が帰ってきた。
「お、カルミさん目が覚めたのか」
「あら、アナタ。おかえりなさい」
「お陰様で。迷惑をかけちゃってすいません」
「いやいや、大丈夫だ。それより、これを買いに行ってたんだ。飲んでくれ」
父が手に持っているのは「エリクサー」と呼ばれるポーションだ。飲むと魔力が回復する。
「いえいえそんな、大丈夫ですよ」
「いや、飲んでくれ。借りだとでも思うなら、いつか返してくれればいい」
「うーん……じゃあ一応貰っておきます。ありがとうございます」
父は満足げに頷いた。
「そうそうアナタ、今晩カルミが泊っていっても大丈夫よね?」
「あぁ、大丈夫だぞ」
「いえ、流石にこれ以上迷惑をかけるわけには……。軽く休ませてもらうだけで大丈夫なので」
「まさか夜中に出発する気?それに、王都まで魔力は持つの?」
「うっ……」
カルミは気まずそうに2人から目線を逸らし、私たちの方をチラリと見た。
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