近距離魔法使いの異世界冒険記 ~妹と二人で転生しました~
第14話 いざ、遠距離魔法
数日後の昼下がり、私はエイリーを連れて森へ来ていた。それも、普段は入らない森の奥の方。
2日ほど前から、森にいる動物がかなり減っているのだ。恐らく強力な動物か魔獣が来て、捕食されたか避難したかだと思うけど、血の跡は見えないから捕食はほとんどされていないだろう。
ちなみに、動物と魔獣の違いは、魔石を持っているかどうか。持っていれば魔獣、持っていなければ動物である。
さて、動物が居ないのは私にとって都合が悪い。動物の肉は食べるとして、皮や角などは商人が来た時に売って少し小遣い稼ぎをしているのだ。
「それにしても、本当に一切動物が居ないね」
エイリーがふと呟いた。エイリーは魔法はほとんど使えないものの、魔力の流れを感知することはできるようで、今のはこれを使った上での発言である。
「居なさすぎて怖いくらいだよ」
「たぶんそろそろ最深部なんだけど、本当に何の気配も無いね」
普段なら森の奥に行けばたくさん見つかるはずの兎のような動物でさえ、1匹も見当たらない。
「うーん、やっぱり何人か大人を連れてくるべきだったかな。手分けして探せたらもっと早く……っ!」
突然、遠くからガサガサッという音が聞こえた。
私達が感知できる魔力の流れは、せいぜい100メートル先まで。周りには何の気配も無かったので、少なくとも100メートル以上先からその音は聞こえてきていた。
「エイリー、急いで行こう」
「そうだね、急ごう」
数秒後には「きゃあ!」という女性の悲鳴まで聞こえてきた。私達は更にスピードを上げ、その音の方へ急いだ。
100メートル程進むと、2つの生き物の魔力を感じ取れた。1つは人間、恐らくさっきの女性だろう。もう1つは、狼のような見た目で爪が鋭く、小さい角が1本生えている「ナルウルフ」と呼ばれている魔獣だった。
「エンシー、木の間に隙間を作るから、あれ撃って!」
「わかった!じゃあ5秒後に動かして。ギリギリまで気付かれたくないから」
「了解!」
5秒前。私は手を前に伸ばし、魔法で足下の小石をいくつか手のひらの前に持ってくる。
4秒前。小石を1つ硬い対物理結界で包み、残りを別の結界で包む。その結界は黒く、中は見えない。更に、その結界に内側の状態を記憶させる。
3秒前。黒い結界で包んだ小石を加熱し、魔法で手を加えながら気体にする。
2秒前。結界内の気体を電離させ、プラズマにする。内側からの熱や光は結界で遮断しているので、熱かったり眩しかったりはしない。
1秒前。もう一度ナルウルフの居る位置を確認し、狙いを定める。
0。私達の居る位置からナルウルフの居る位置まで、一直線に隙間ができる。それと同時に、私は結界の性質を少し変化させ、一方向にだけ伸びやすいようにする。
すると結界は一気に伸び、その前に置いていた1つの小石を押し出す。その小石は勢いよく飛んで行き、ナルウルフの目に直撃した。
そして最後に、結界の内側を記憶させた状態に戻す。これでプラズマは消え、小石が復活する。
これが私達が考えた、遠距離への対策だ。
「よし、今のうちに仕留めて!」
「わかった!行ってくる!」
エイリーは周囲の植物を巧みに使い、ナルウルフとの距離を一気に詰めた。
その間に既にナルウルフは草や木で拘束されており、エイリーは剣をひと振りして首を落とした。
その傍で1人の女性が呆然としながら木にもたれかかっていた。魔法使いのような格好をしていて、長くて茶色い髪がとても良く似合う女性だ。
「あ、大丈夫でしたか?怪我は……してますね。おーい、早く来て!」
「はいはい、治癒魔法ね。すいません、少しの間動かないでくださいね」
「え、えぇ」
私は女性に治癒魔法をかけ、魔力もほとんど無かったようなので少し渡した。
「あなた達、強いのね。もしかして、アルマイラ村の子?」
確かに、アルマイラ村とは私達の住んでいる村だ。
「そうですけど、村にご用ですか?」
「えぇ、ちょっと人を探しててね。丁度あなた達くらいの年齢だと思うんだけど」
「私達くらいの、ですか」
歳が近い子供は何人かいるけど、名前を聞いてみないとわからない。と思っていたら、先に言ってくれた。
「確か、エンシーって言ってたかしら」
「「……え?」」
まさか、私だとは思わなかった。全く知らない人だったし。
「えっと……私がエンシーです」
「あら、やっぱりそうだったのね。強いって噂だったから、そうかと思って。……そうそう、私はカルミ。王都第一学園で教師をしているわ」
「あ、エイリーです。エンシーの双子の妹です」
エイリーが、私のし損ねた説明をしてくれた。
「ところで、どうして王都の学園の先生が……って、ずっとここに居るのもあれですね。一旦家に案内します」
「うーん、そうね。お言葉に甘えさせてもらうわ」
という訳で、ナルウルフの死体もしっかりと回収して家へと帰った。
2日ほど前から、森にいる動物がかなり減っているのだ。恐らく強力な動物か魔獣が来て、捕食されたか避難したかだと思うけど、血の跡は見えないから捕食はほとんどされていないだろう。
ちなみに、動物と魔獣の違いは、魔石を持っているかどうか。持っていれば魔獣、持っていなければ動物である。
さて、動物が居ないのは私にとって都合が悪い。動物の肉は食べるとして、皮や角などは商人が来た時に売って少し小遣い稼ぎをしているのだ。
「それにしても、本当に一切動物が居ないね」
エイリーがふと呟いた。エイリーは魔法はほとんど使えないものの、魔力の流れを感知することはできるようで、今のはこれを使った上での発言である。
「居なさすぎて怖いくらいだよ」
「たぶんそろそろ最深部なんだけど、本当に何の気配も無いね」
普段なら森の奥に行けばたくさん見つかるはずの兎のような動物でさえ、1匹も見当たらない。
「うーん、やっぱり何人か大人を連れてくるべきだったかな。手分けして探せたらもっと早く……っ!」
突然、遠くからガサガサッという音が聞こえた。
私達が感知できる魔力の流れは、せいぜい100メートル先まで。周りには何の気配も無かったので、少なくとも100メートル以上先からその音は聞こえてきていた。
「エイリー、急いで行こう」
「そうだね、急ごう」
数秒後には「きゃあ!」という女性の悲鳴まで聞こえてきた。私達は更にスピードを上げ、その音の方へ急いだ。
100メートル程進むと、2つの生き物の魔力を感じ取れた。1つは人間、恐らくさっきの女性だろう。もう1つは、狼のような見た目で爪が鋭く、小さい角が1本生えている「ナルウルフ」と呼ばれている魔獣だった。
「エンシー、木の間に隙間を作るから、あれ撃って!」
「わかった!じゃあ5秒後に動かして。ギリギリまで気付かれたくないから」
「了解!」
5秒前。私は手を前に伸ばし、魔法で足下の小石をいくつか手のひらの前に持ってくる。
4秒前。小石を1つ硬い対物理結界で包み、残りを別の結界で包む。その結界は黒く、中は見えない。更に、その結界に内側の状態を記憶させる。
3秒前。黒い結界で包んだ小石を加熱し、魔法で手を加えながら気体にする。
2秒前。結界内の気体を電離させ、プラズマにする。内側からの熱や光は結界で遮断しているので、熱かったり眩しかったりはしない。
1秒前。もう一度ナルウルフの居る位置を確認し、狙いを定める。
0。私達の居る位置からナルウルフの居る位置まで、一直線に隙間ができる。それと同時に、私は結界の性質を少し変化させ、一方向にだけ伸びやすいようにする。
すると結界は一気に伸び、その前に置いていた1つの小石を押し出す。その小石は勢いよく飛んで行き、ナルウルフの目に直撃した。
そして最後に、結界の内側を記憶させた状態に戻す。これでプラズマは消え、小石が復活する。
これが私達が考えた、遠距離への対策だ。
「よし、今のうちに仕留めて!」
「わかった!行ってくる!」
エイリーは周囲の植物を巧みに使い、ナルウルフとの距離を一気に詰めた。
その間に既にナルウルフは草や木で拘束されており、エイリーは剣をひと振りして首を落とした。
その傍で1人の女性が呆然としながら木にもたれかかっていた。魔法使いのような格好をしていて、長くて茶色い髪がとても良く似合う女性だ。
「あ、大丈夫でしたか?怪我は……してますね。おーい、早く来て!」
「はいはい、治癒魔法ね。すいません、少しの間動かないでくださいね」
「え、えぇ」
私は女性に治癒魔法をかけ、魔力もほとんど無かったようなので少し渡した。
「あなた達、強いのね。もしかして、アルマイラ村の子?」
確かに、アルマイラ村とは私達の住んでいる村だ。
「そうですけど、村にご用ですか?」
「えぇ、ちょっと人を探しててね。丁度あなた達くらいの年齢だと思うんだけど」
「私達くらいの、ですか」
歳が近い子供は何人かいるけど、名前を聞いてみないとわからない。と思っていたら、先に言ってくれた。
「確か、エンシーって言ってたかしら」
「「……え?」」
まさか、私だとは思わなかった。全く知らない人だったし。
「えっと……私がエンシーです」
「あら、やっぱりそうだったのね。強いって噂だったから、そうかと思って。……そうそう、私はカルミ。王都第一学園で教師をしているわ」
「あ、エイリーです。エンシーの双子の妹です」
エイリーが、私のし損ねた説明をしてくれた。
「ところで、どうして王都の学園の先生が……って、ずっとここに居るのもあれですね。一旦家に案内します」
「うーん、そうね。お言葉に甘えさせてもらうわ」
という訳で、ナルウルフの死体もしっかりと回収して家へと帰った。
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