近距離魔法使いの異世界冒険記 ~妹と二人で転生しました~
第12話 魔剣と、魔力
「どうやって俺を倒したんだ?」
さっきまでとは違うロイズの表情や口調から、質問の真剣さが感じ取れる。負けた原因を知って、それを克服して強くなりたいのだろう。
とはいえ、こういうザックリとした質問だと答えにくい。
「あ、すまない。もう少し具体的に聞くよ。最後に俺の脚から力が抜けたんだけど、それは君の仕業なのかい?」
ロイズも気付いて聞き直してくれた。これなら答えやすい。
「そうですよ」
「やっぱり。なら、今俺が動けないのも君の魔法って事かな」
ロイズはまだ、さっきとほとんど同じ状態のままだ。
「そうなら、解除して欲しいんだけど」
「ちょっと違います。ロイズさんが動けないのは、ロイズさん自身の魔法の影響ですよ」
どうやら、私が魔法で倒れさせたと思っているようだ。私はただ、魔法の発動を邪魔しただけなのに。
「どういう事だい?俺は身体強化しか使っていないはずだけど」
「その、身体強化ですよ」
「……尚更、訳がわからないよ」
ここまで言えばわかると思ったのに……。どうやら、最後まで説明する必要がありそうだ。
「そうですか……なら、身体強化の特徴はなんですか?」
「え?あー、そうだね、効果範囲が狭い方が効果が大きくなる事かな」
「違います。それは他の多くの魔法にも言えます。……じゃあ、身体強化……と言うより、自分の体に直接作用する魔法を解除する時に気を付けることは?」
かなり大きいヒントをあげた。これでわからないのなら、本当に全部教えなければならなさそう……。
「確か、解除するにも少し魔力が必要だから、魔力を使い切ってはいけない……だったか」
「それです!次、使い切ってはいけない理由は?」
……わかっていなさそう。でも、もしこの答えがわかるのなら、ここで説明は終わっても問題ないはずだ。……わかっていて下さい。
「要するに、解除しないといけない理由って事だろう?うーん……それは知らないな」
「……知らない、ですか。聞いた覚えも無いですか?」
「うん、無いね。学園の授業でも習った覚えがない」
はい、全部説明しなければならない事が確定しました。説明しようとすると長くなるから面倒なんだけど。
「そうですか……。答えは『魔力の供給が無くなると、魔法陣が暴走するから』です。暴走すると、真逆の効果が出る事が多いです」
「……うん?なら、俺の今の脚は、真逆の効果を受けた結果という事かい?」
「そうなりますね」
よし、これで第一段階が理解出来たはず。そして、次の疑問が浮かぶはず。
「でも、俺は魔力を絶やしていない。なら、なぜ暴走したんだい?」
予想通りの質問だ。さて、説明頑張りますか。
「さっき、魔力の供給を絶やしてはいけないと言いましたよね。逆に言うと、魔力が尽きなくても供給を止めれば暴走させられるんです」
「……それをやったと?」
「はい、やりました」
ロイズは私を、恐ろしい物を見るような目で見始めた。
「はぁ……それはもう、人間業じゃないよ。俺の魔力に干渉したって事だろう?」
「そういう事ですね」
「そんな事ができるなんて、今まで聞いた事がない。魔族にさえできないんじゃないか?」
「まぁ、誰相手にでもできる訳じゃないです。それに、私1人の力では出来ませんし」
「どういう事だい?」
「その魔剣を利用させてもらいました」
まぁ、その魔剣でないと使えなかったと思うけど。
「魔剣を利用って……本当に君は何者なんだ」
「何者と言われても、ただの6歳児ですけど……。それに、魔剣であれば何でもいい訳でも無いですし。その魔剣みたいに、付与が甘くないと」
「……6歳児に甘いと言われる、プロの付与って」
ロイズは額に手を当てている。片手を剣から離しているところを見ると、脚の力はだいぶ回復したようだ。
「この魔法陣の魔力、簡単に乗っ取れますよ。たぶん、空気中の魔力を付与に使ったんでしょうね」
空気中の魔力は、誰でも簡単に操ることができる。それは、誰の意思にも従っていないから。
逆に人間や動物、魔物などの魔力は、自分の魔力以外はそう簡単には操れない。魔物から取れた魔石もそう。何者かの意思に従っている魔力は、他の者からの影響をほとんど受けない。
そしてその性質は、魔法……特に付与に影響を及ぼす。空気中の魔力を使って付与をすれば簡単にその魔法を乗っ取れるし、自分や魔石の魔力を使って付与をすれば乗っ取りにくくなる。
そういう事を簡単にロイズに伝えた。
「……君は本当に6歳なのかい?もう、誰かが魔法で若返ったように思えるよ」
まぁ、確かにある意味若返っている。魔法ではないし、別人としてだけど。
「本当に6歳ですよ。それはともかく、魔剣と使用者の魔力は繋がるので、剣が結界に触れた時に魔力を乗っ取って、ロイズさんの魔力の循環を止めたって訳です。私がした事はそれだけですよ」
「なるほどね。君がただの6歳児ではないということがよくわかったよ」
ロイズはようやく歩ける程度には回復したようで、立って剣を地面から抜いて仕舞いながらそう言った。
この後、商人たちはすぐに出発した。予定していた時間までかなりギリギリだったようだ。
ともかく、私はこうして魔石を手に入れた訳だ。しかし、使い道が罠くらいしか思いつかなかったので、踏んだ動物に電撃を与える罠として使っている。
でも、毎回罠を仕掛けるもの面倒だから、ちゃんとスキルの対策も考えることにしよう。
さっきまでとは違うロイズの表情や口調から、質問の真剣さが感じ取れる。負けた原因を知って、それを克服して強くなりたいのだろう。
とはいえ、こういうザックリとした質問だと答えにくい。
「あ、すまない。もう少し具体的に聞くよ。最後に俺の脚から力が抜けたんだけど、それは君の仕業なのかい?」
ロイズも気付いて聞き直してくれた。これなら答えやすい。
「そうですよ」
「やっぱり。なら、今俺が動けないのも君の魔法って事かな」
ロイズはまだ、さっきとほとんど同じ状態のままだ。
「そうなら、解除して欲しいんだけど」
「ちょっと違います。ロイズさんが動けないのは、ロイズさん自身の魔法の影響ですよ」
どうやら、私が魔法で倒れさせたと思っているようだ。私はただ、魔法の発動を邪魔しただけなのに。
「どういう事だい?俺は身体強化しか使っていないはずだけど」
「その、身体強化ですよ」
「……尚更、訳がわからないよ」
ここまで言えばわかると思ったのに……。どうやら、最後まで説明する必要がありそうだ。
「そうですか……なら、身体強化の特徴はなんですか?」
「え?あー、そうだね、効果範囲が狭い方が効果が大きくなる事かな」
「違います。それは他の多くの魔法にも言えます。……じゃあ、身体強化……と言うより、自分の体に直接作用する魔法を解除する時に気を付けることは?」
かなり大きいヒントをあげた。これでわからないのなら、本当に全部教えなければならなさそう……。
「確か、解除するにも少し魔力が必要だから、魔力を使い切ってはいけない……だったか」
「それです!次、使い切ってはいけない理由は?」
……わかっていなさそう。でも、もしこの答えがわかるのなら、ここで説明は終わっても問題ないはずだ。……わかっていて下さい。
「要するに、解除しないといけない理由って事だろう?うーん……それは知らないな」
「……知らない、ですか。聞いた覚えも無いですか?」
「うん、無いね。学園の授業でも習った覚えがない」
はい、全部説明しなければならない事が確定しました。説明しようとすると長くなるから面倒なんだけど。
「そうですか……。答えは『魔力の供給が無くなると、魔法陣が暴走するから』です。暴走すると、真逆の効果が出る事が多いです」
「……うん?なら、俺の今の脚は、真逆の効果を受けた結果という事かい?」
「そうなりますね」
よし、これで第一段階が理解出来たはず。そして、次の疑問が浮かぶはず。
「でも、俺は魔力を絶やしていない。なら、なぜ暴走したんだい?」
予想通りの質問だ。さて、説明頑張りますか。
「さっき、魔力の供給を絶やしてはいけないと言いましたよね。逆に言うと、魔力が尽きなくても供給を止めれば暴走させられるんです」
「……それをやったと?」
「はい、やりました」
ロイズは私を、恐ろしい物を見るような目で見始めた。
「はぁ……それはもう、人間業じゃないよ。俺の魔力に干渉したって事だろう?」
「そういう事ですね」
「そんな事ができるなんて、今まで聞いた事がない。魔族にさえできないんじゃないか?」
「まぁ、誰相手にでもできる訳じゃないです。それに、私1人の力では出来ませんし」
「どういう事だい?」
「その魔剣を利用させてもらいました」
まぁ、その魔剣でないと使えなかったと思うけど。
「魔剣を利用って……本当に君は何者なんだ」
「何者と言われても、ただの6歳児ですけど……。それに、魔剣であれば何でもいい訳でも無いですし。その魔剣みたいに、付与が甘くないと」
「……6歳児に甘いと言われる、プロの付与って」
ロイズは額に手を当てている。片手を剣から離しているところを見ると、脚の力はだいぶ回復したようだ。
「この魔法陣の魔力、簡単に乗っ取れますよ。たぶん、空気中の魔力を付与に使ったんでしょうね」
空気中の魔力は、誰でも簡単に操ることができる。それは、誰の意思にも従っていないから。
逆に人間や動物、魔物などの魔力は、自分の魔力以外はそう簡単には操れない。魔物から取れた魔石もそう。何者かの意思に従っている魔力は、他の者からの影響をほとんど受けない。
そしてその性質は、魔法……特に付与に影響を及ぼす。空気中の魔力を使って付与をすれば簡単にその魔法を乗っ取れるし、自分や魔石の魔力を使って付与をすれば乗っ取りにくくなる。
そういう事を簡単にロイズに伝えた。
「……君は本当に6歳なのかい?もう、誰かが魔法で若返ったように思えるよ」
まぁ、確かにある意味若返っている。魔法ではないし、別人としてだけど。
「本当に6歳ですよ。それはともかく、魔剣と使用者の魔力は繋がるので、剣が結界に触れた時に魔力を乗っ取って、ロイズさんの魔力の循環を止めたって訳です。私がした事はそれだけですよ」
「なるほどね。君がただの6歳児ではないということがよくわかったよ」
ロイズはようやく歩ける程度には回復したようで、立って剣を地面から抜いて仕舞いながらそう言った。
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