エタニティオンライン
曙の光
エンジェル、サキュバスが洞窟内から上空へと飛び出した。プチベビードラゴンは長時間の滞空ができないため、今回は後発組へと組み込む。
外からは忙しなく指示を出し合う声が聞こえてくる。それを聞いたクオンと青龍は頷き合った。
クオンがふっとアキの方へと顔を向け、「私は大丈夫だからね」と笑いかける。
アキが突然の言葉に虚を突かれている間に、クオンと青龍は洞窟の外へと駆け出していった。
「っ……クオン」
「アキ、ボサッとしない! 遠距離攻撃を放てるモンスターはいないの?」
アキが振り向くと、洞窟内に残されたワームホールの前にカトレアが仁王立ちし、こちらを睨んでいる。
白兵戦対策のためか、白虎は洞窟出入り口付近に陣取っていた。
「あっ、プチベビーワイバーンとゴブリンロード、それにプチエンジェルも多少使えたはず。今言った三体はカトレアさんの指示に従ってくれ!」
三体はその矮躯を寄せ合い、カトレアの横に並んだ。
「あなたたち、遠距離攻撃の準備をなさい。合図したらこのワームホールに撃ち込むのよ」
ゴブリンロードが慣れた様子で杖を突き出し、それに合わせてプチエンジェルも短い腕を精一杯に伸ばした。
カトレアがカドゥケウスを構え、先端に赤く光る古代文字が円を形作っていく。
「今よ!」
カトレアの大火球がワームホールに飲み込まれ、それを追うように先の尖った氷とプチベビードラゴンの吐いた小さな火球、そしてプチエンジェルのふっくらとした手の平から細い光線が放たれた。
洞窟の外で大きな地響きが鳴り、同時に悲鳴にも似た指示が飛び交った。
ワームホールが一瞬消え、洞窟の天井に改めて開かれた。テンマが落ちてくる様子もない。
「……攻撃地点を変えた、か」
白虎の呟きにアキとカトレアが頷く。
それもそうだ、相手も木偶の坊じゃない。攻撃した地点に集まっていた信者はすぐさま前後左右に退避するはず。そうなれば指示系統も徐々に混線してくる。
撹乱は上手くいってる。あとはこっちが出るタイミングを逃さなければ……。
アキはスキルメニューを一瞥してから、二発目のスペルを飲み込んでいくワームホールへ視線を向けた。先程とは違い、消えることなく開き続けている。
「……よし、そろそろ洞窟を出ようと思う。モンスター達は出来るだけカトレアさんを守ってあげて。
白虎は俺と一緒に先頭で応戦してほしい」
「私はどうすれば良いのよ?」
「後方から不意打ちされるかもしれない。背中は任せたよ」
「ま、後衛職のサダメね。わかったわ」
アキと白虎を先頭にし、その背後にカトレアを囲む形でモンスター達が群がった。
「……アキ、お前は鞭使いだ。後ろでも良いだろう」
「俺だけ安全地帯に居座るわけにはいかない」
「しかし」
アキは軽くため息をついて、皮肉げに口を歪めた。
「もう後悔したくないんだ。これ以上、自分自身を責めさせないでくれ」
白虎は間を空けてから「わかった」とだけ呟く。
アキは口の端を上げてから振り向いた。
「テンマがワームホールの位置を変えなかったのは、きっと十分に撹乱出来ているって証拠だ。よって、今から作戦通り、クオンと青龍の向かった方面へと走る。良いかな」
白虎とカトレア、そしてモンスター達は首を縦に振った。
「五つ数える。零になったタイミングで洞窟を出るから、頼んだよ。
五、四、三、二、一……零! 走れぇッ!」
しばらく暗い洞窟内に留まっていたためか外が妙に眩しく感じた。アキは初めて、霧雨が晴れ、空が明るいことに気がついた────夜が明けていた。
その下には、ずいぶん隊列の崩れた信者達が自分達を囲むようにして並んでいたが、ほとんどの信者達が時折現れるテンマや、上空から降り注ぐ光線への対応に追われているようだった。
アキは安堵しつつ、のんびりしている暇はない、と自身に言い聞かせ、左方へと足を踏み出した。
外からは忙しなく指示を出し合う声が聞こえてくる。それを聞いたクオンと青龍は頷き合った。
クオンがふっとアキの方へと顔を向け、「私は大丈夫だからね」と笑いかける。
アキが突然の言葉に虚を突かれている間に、クオンと青龍は洞窟の外へと駆け出していった。
「っ……クオン」
「アキ、ボサッとしない! 遠距離攻撃を放てるモンスターはいないの?」
アキが振り向くと、洞窟内に残されたワームホールの前にカトレアが仁王立ちし、こちらを睨んでいる。
白兵戦対策のためか、白虎は洞窟出入り口付近に陣取っていた。
「あっ、プチベビーワイバーンとゴブリンロード、それにプチエンジェルも多少使えたはず。今言った三体はカトレアさんの指示に従ってくれ!」
三体はその矮躯を寄せ合い、カトレアの横に並んだ。
「あなたたち、遠距離攻撃の準備をなさい。合図したらこのワームホールに撃ち込むのよ」
ゴブリンロードが慣れた様子で杖を突き出し、それに合わせてプチエンジェルも短い腕を精一杯に伸ばした。
カトレアがカドゥケウスを構え、先端に赤く光る古代文字が円を形作っていく。
「今よ!」
カトレアの大火球がワームホールに飲み込まれ、それを追うように先の尖った氷とプチベビードラゴンの吐いた小さな火球、そしてプチエンジェルのふっくらとした手の平から細い光線が放たれた。
洞窟の外で大きな地響きが鳴り、同時に悲鳴にも似た指示が飛び交った。
ワームホールが一瞬消え、洞窟の天井に改めて開かれた。テンマが落ちてくる様子もない。
「……攻撃地点を変えた、か」
白虎の呟きにアキとカトレアが頷く。
それもそうだ、相手も木偶の坊じゃない。攻撃した地点に集まっていた信者はすぐさま前後左右に退避するはず。そうなれば指示系統も徐々に混線してくる。
撹乱は上手くいってる。あとはこっちが出るタイミングを逃さなければ……。
アキはスキルメニューを一瞥してから、二発目のスペルを飲み込んでいくワームホールへ視線を向けた。先程とは違い、消えることなく開き続けている。
「……よし、そろそろ洞窟を出ようと思う。モンスター達は出来るだけカトレアさんを守ってあげて。
白虎は俺と一緒に先頭で応戦してほしい」
「私はどうすれば良いのよ?」
「後方から不意打ちされるかもしれない。背中は任せたよ」
「ま、後衛職のサダメね。わかったわ」
アキと白虎を先頭にし、その背後にカトレアを囲む形でモンスター達が群がった。
「……アキ、お前は鞭使いだ。後ろでも良いだろう」
「俺だけ安全地帯に居座るわけにはいかない」
「しかし」
アキは軽くため息をついて、皮肉げに口を歪めた。
「もう後悔したくないんだ。これ以上、自分自身を責めさせないでくれ」
白虎は間を空けてから「わかった」とだけ呟く。
アキは口の端を上げてから振り向いた。
「テンマがワームホールの位置を変えなかったのは、きっと十分に撹乱出来ているって証拠だ。よって、今から作戦通り、クオンと青龍の向かった方面へと走る。良いかな」
白虎とカトレア、そしてモンスター達は首を縦に振った。
「五つ数える。零になったタイミングで洞窟を出るから、頼んだよ。
五、四、三、二、一……零! 走れぇッ!」
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