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足立韋護

協力者への手がかり

「私の勝手な意見で強制するつもりはないが、クオン、リベリィ、お前達は次回のログアウトホールが開いたとき、早急にログアウトすべきだろう。この世界に明確な目的がない者は、そもそも危険をおかしてまでインし続ける意味がない」


 正面のリベリィは膝に手を乗せて俯いたままだ。クオンは唇を若干尖らせて不貞腐れながら反論した。


「じゃあさ、テンマ団長には何か目的があるの? 楽しいってだけじゃ私と同じだよ?」


「……正直に話せば、目的はある。察しの良い者には通じると思うが、私は今も『本来の目的』のために動いている。しかしヴァルカンで、『本来の目的』の前に私がすべきである『避けて通れない目的』を見つけた。今はそれを達成することのみ目指しているのだ」


 アキは手に持ったティーカップを一瞬だけ激しく震わせた。飲むふりをして、すぐさまテーブルに置くことでクオンとリベリィは誤魔化せた。しかし、テンマはアキのティーカップをじっとりと見つめている。


 まさか……テンマが協力者なのか。いや、そんなはずはない。テンマの言う『本来の目的』というのはこの世界の存続に違いないんだ。
 存続……? テンマにとってこの世界が永遠に続くことは、存続と言えるのか?


 そうだとしたらヴァルカンで見つけたという、テンマがすべき『避けて通れないの目的』は、すべての事実を知り、尚且つ西倉の協力者を見つけ出そうとしている俺の排除になる。


 クオンとリベリィをログアウトするように促したのは、俺を誰にも疑われない状況下で殺そうとしているからか? 精鋭隊や多くの人々と繋がっている中で殺してしまえば、すぐに犯人は特定できてしまう。だから親しい人間からは切り離して……という計画なら合理的で納得できる。
 気になる点は、なぜ俺にわかるように発言したか、だ。


 隣で「ふぅーん」と気の無い返事をしているクオンをよそに、アキは気が気でなかった。まるでテンマの小さな家が鉄格子のついた檻のように思えてしまった。
 だが一方でアキは、協力者らしい人物を二人も見つけることができたことで、これまでの成果を得られたような感覚に陥った。


「……確かにそーかもね。考えとく」


「ああ頼んだ。一人の仲間からのお節介だと、頭の片隅にでも置いといてほしい。
 さてアキ、今日ここへ連れて来られたということは、やはりモガミへと突っかかったのだな」


「多くの人々が訳のわからないことに利用されて、自由を奪われてる。こんなことじゃ、ログアウトホールが現れたってログアウトできるかすらわからないじゃないか。
 助けてもらったことには感謝するけど、これは俺の好きにさせてもらう」


 テンマは呆れたように肩をすくめながら自らの紅茶を上品に飲み、静かにソーサーへと置いた。
 そして、アキへ鋭い視線を浴びせる。


「オルフェという人物を知っているな?」


「オルフェって……和服姿で、狐の仮面を付けたブロンドの髪の? どうしてテンマが知ってるんだ?」


 知った名前が出てきたからか、クオンも耳を傾けているようだ。


「以前、ヴァルカンへ訪れた時、一人ではなかったろう?
 最初に再会したという白虎とラインハルトに聞いておいた。アキは何か変わった様子はなかったか、とな」


「……それで?」


「その時初めて私も彼女の存在を知った。
 その後、先にディザイアへ赴いていた白虎が、偶然にも同じ人物を見かけたので話しかけたらしいのだ。名前をオルフェ、アキとは友人だと言ったそうだ」


 結局、ディザイアへ戻ってきたんだな。まだ生きていて良かった。


「そのオルフェだが白虎の調査によればフールギャザリングへ加入したそうだ。恐らく多くの者と同様に食糧の問題があったのだろう」


「なんだって……!?」


 アキは椅子から飛び上がった。口をあんぐり開けて、思索にふけるように黒目を左右に振りながら俯いていく。


「アキ、フールギャザリングに加入を余儀なくされた人々を救う手助けをさせてもらえないか。計画も練らずに突撃し、その人々に危険が及ぶとも限らない。
 一度冷静に腰を落ち着け、計画を練るべきだと考えている」

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