エタニティオンライン
深淵の樹海
────粗方の買い物を済ませたアキ達は、アビスへ戻るため再び荒野に降り立った。
ヴァルカンとアビスの間には雄大な山々が聳え立っている。山を突っ切って行く最短の山脈ルートと、山を迂回して避ける街道ルートとがある。
上級者プレイヤーならば迷わず山脈ルートを選び取るところだが、今回は洋館にいたプレイヤー達の足取りを追って街道ルートを行くことにした。
「早く敵出てこないかなー!」
「モンスターなら良いけど、相手がプレイヤーだったらちゃんと手加減してくれよ?」
「ただ、相手がPKだった場合は別だがな。殺されてしまったら元も子もない」
「ぶっ飛ばせば全部解決!」
クオンは得意げな顔をして自信満々に腕組みした。テンマが横で面白おかしそうに手を叩いて大笑いしている。
ぶっ飛ばして全部解決出来たら、俺だってとっくに全モンスター喚起してるさ。まったく呑気なもんだ。
しかしクオンの胆力もすごい。洋館のような凄惨な現場を見ていないにしろ、こんな世界に俺を手伝うという理由だけでいられるなんて。
元々頭のネジは二、三本外れかけてると思ったけど、まさか本当にバカになっちゃいないだろうな……。
「クオン、一つ聞いても良いだろうか」
テンマが突然クオンへと顔を向けた。表情は柔らかだ。物騒な質問ではないことは明らかだった。
「クオンはアキのことをどう思っているのだ?」
クオンが反応する前に、アキがいち早く反応を返す。
「ど、どうした突然!」
「どうって……パートナーだよ?」
「恋愛の相手として見ているのか?」
アキはぽかんと口を開けたままクオンの反応を窺う。クオンはみるみる顔を紅潮させていった。指を弄びながら俯いている。
やがて、ぎこちなくこくりと頷いた。
「な、クオン!?」
「で、で、でもわかんない! 恋愛とか、そういうのしたことないから……」
「ふむ、なるほど。では私は恋のライバルというわけだな」
「な、なぁぁあ!?」
アキとクオンは驚いたようにテンマの兜を見つめた。その奥の表情はわからない。
クオンもテンマもどうかしてる。こういうのを吊り橋効果っていうのか? クオンは、まあ付き合いも長かったし……わからなくもないけど。テンマとはいつどこでそういう感情を抱くきっかけができたか検討もつかない。
「冗談きついなあ……」
「冗談ではない。お前の志、私はそれに惚れているのだ」
「わかった、わかったから、この話はもうやめよう。頭がショートする」
すっかり頭がかき乱されたアキを見て、クオンとテンマは笑い合った。自称ライバルと言えど、険悪な雰囲気にするつもりはないようだ。
三人が山の麓を避けて石で舗装されている街道をひたすら突き進むと、次第に付近は木々に囲まれ始めた。
「中級ダンジョン『深淵の樹海』か。久しく来ていなかった」
「俺はたまに材料採取で来てた程度だな。クオンは?」
「ここあんまり強いモンスター出てこないんだ。よって興味なし!」
「ホント、その闘争本能を見習いたいよ……」
進むにつれ葉の匂いがより濃くなっていく。周囲の景色は深緑に染まっていき、完全に樹海の中へと入り込んだ。
舗装された道のおかげで『絡み合う森』ほどの閉塞感はないが、鳥類の不気味な鳴き声が森中に響き、恐怖心を掻き立てる。風でザワザワと森がざわめく。三人は警戒心を高めつつ、辺りへ気を配った。
「エンカウント率は高く、出現モンスターの経験値も高い。以前は足繁く通ったものだ」
テンマは挑戦的な笑みを浮かべた。ガサリ、と前方の草が大きく揺れ動く。三人が足を止め、前方へ注視した。
小柄な鶏のような鳥が一羽、草むらから歩いて出てきた。
「カニバルクックか。難なく突破できそうだな」
「……いやアキ、よく見るのだ。カニバルクックは本来集団行動をする。だが今回は一匹だ。これはもしや────」
突如、カニバルクックの真横の草むらが大きく揺れ動いた。美しい白い毛並みを持つ、人の二倍はあろう巨体の虎がカニバルクックの首に歯を立てた。
「ホワイトタイガーのエンカウントイベントってわけか。いちいちこんなことせずに、普通に出てくりゃ良いのに」
「でも強い敵になってくれたよ……!」
アキ達を発見したホワイトタイガーは、息絶えているカニバルクックを道端に置いておき、真正面からアキ達に対峙した。
「白虎がいれば、仲間になってくれたか?」
「ならんだろうな。私が勝手につけた名だ」
「……冗談を真面目に返さないでくれよ。とにかく、戦おう」
アキとクオンは武器を構えた。テンマは歪みを開き、かつてアキの店の前で戦った時に使った厚みのある両刃の大剣を取り出した。
「それじゃ作戦は────」
「ぶっ飛ばす!」
辛抱の限界だったクオンがアキの言葉を遮って飛び出した。アキとテンマは顔を見合わせて呆れてから、それに続くことにした。
ヴァルカンとアビスの間には雄大な山々が聳え立っている。山を突っ切って行く最短の山脈ルートと、山を迂回して避ける街道ルートとがある。
上級者プレイヤーならば迷わず山脈ルートを選び取るところだが、今回は洋館にいたプレイヤー達の足取りを追って街道ルートを行くことにした。
「早く敵出てこないかなー!」
「モンスターなら良いけど、相手がプレイヤーだったらちゃんと手加減してくれよ?」
「ただ、相手がPKだった場合は別だがな。殺されてしまったら元も子もない」
「ぶっ飛ばせば全部解決!」
クオンは得意げな顔をして自信満々に腕組みした。テンマが横で面白おかしそうに手を叩いて大笑いしている。
ぶっ飛ばして全部解決出来たら、俺だってとっくに全モンスター喚起してるさ。まったく呑気なもんだ。
しかしクオンの胆力もすごい。洋館のような凄惨な現場を見ていないにしろ、こんな世界に俺を手伝うという理由だけでいられるなんて。
元々頭のネジは二、三本外れかけてると思ったけど、まさか本当にバカになっちゃいないだろうな……。
「クオン、一つ聞いても良いだろうか」
テンマが突然クオンへと顔を向けた。表情は柔らかだ。物騒な質問ではないことは明らかだった。
「クオンはアキのことをどう思っているのだ?」
クオンが反応する前に、アキがいち早く反応を返す。
「ど、どうした突然!」
「どうって……パートナーだよ?」
「恋愛の相手として見ているのか?」
アキはぽかんと口を開けたままクオンの反応を窺う。クオンはみるみる顔を紅潮させていった。指を弄びながら俯いている。
やがて、ぎこちなくこくりと頷いた。
「な、クオン!?」
「で、で、でもわかんない! 恋愛とか、そういうのしたことないから……」
「ふむ、なるほど。では私は恋のライバルというわけだな」
「な、なぁぁあ!?」
アキとクオンは驚いたようにテンマの兜を見つめた。その奥の表情はわからない。
クオンもテンマもどうかしてる。こういうのを吊り橋効果っていうのか? クオンは、まあ付き合いも長かったし……わからなくもないけど。テンマとはいつどこでそういう感情を抱くきっかけができたか検討もつかない。
「冗談きついなあ……」
「冗談ではない。お前の志、私はそれに惚れているのだ」
「わかった、わかったから、この話はもうやめよう。頭がショートする」
すっかり頭がかき乱されたアキを見て、クオンとテンマは笑い合った。自称ライバルと言えど、険悪な雰囲気にするつもりはないようだ。
三人が山の麓を避けて石で舗装されている街道をひたすら突き進むと、次第に付近は木々に囲まれ始めた。
「中級ダンジョン『深淵の樹海』か。久しく来ていなかった」
「俺はたまに材料採取で来てた程度だな。クオンは?」
「ここあんまり強いモンスター出てこないんだ。よって興味なし!」
「ホント、その闘争本能を見習いたいよ……」
進むにつれ葉の匂いがより濃くなっていく。周囲の景色は深緑に染まっていき、完全に樹海の中へと入り込んだ。
舗装された道のおかげで『絡み合う森』ほどの閉塞感はないが、鳥類の不気味な鳴き声が森中に響き、恐怖心を掻き立てる。風でザワザワと森がざわめく。三人は警戒心を高めつつ、辺りへ気を配った。
「エンカウント率は高く、出現モンスターの経験値も高い。以前は足繁く通ったものだ」
テンマは挑戦的な笑みを浮かべた。ガサリ、と前方の草が大きく揺れ動く。三人が足を止め、前方へ注視した。
小柄な鶏のような鳥が一羽、草むらから歩いて出てきた。
「カニバルクックか。難なく突破できそうだな」
「……いやアキ、よく見るのだ。カニバルクックは本来集団行動をする。だが今回は一匹だ。これはもしや────」
突如、カニバルクックの真横の草むらが大きく揺れ動いた。美しい白い毛並みを持つ、人の二倍はあろう巨体の虎がカニバルクックの首に歯を立てた。
「ホワイトタイガーのエンカウントイベントってわけか。いちいちこんなことせずに、普通に出てくりゃ良いのに」
「でも強い敵になってくれたよ……!」
アキ達を発見したホワイトタイガーは、息絶えているカニバルクックを道端に置いておき、真正面からアキ達に対峙した。
「白虎がいれば、仲間になってくれたか?」
「ならんだろうな。私が勝手につけた名だ」
「……冗談を真面目に返さないでくれよ。とにかく、戦おう」
アキとクオンは武器を構えた。テンマは歪みを開き、かつてアキの店の前で戦った時に使った厚みのある両刃の大剣を取り出した。
「それじゃ作戦は────」
「ぶっ飛ばす!」
辛抱の限界だったクオンがアキの言葉を遮って飛び出した。アキとテンマは顔を見合わせて呆れてから、それに続くことにした。
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