エタニティオンライン
閉塞の洞窟
旅立ったアキ達は、アビスへ向かう際に南から入った『港へ続く道』を、東側へ出る。このルートから行くと比較的険しい道のりになるが、他に比べ格段に早く到着することができる。
まず中級ダンジョン『閉塞の洞窟』を抜け、次の上級フィールド『風巻の山脈』を越えたところにヴァルカンはある。
閉塞の洞窟入り口。岩山の麓にあるそれは、岩の陰に隠れるように開いていた。付近にモンスターは見られないが、入り口の穴の何もかもを吸い込んでしまいそうな漆黒が、冒険者の不安を煽る。
「はいクオンに白虎、これ」
アキはアイテムチェストから常備していた松明を二人に手渡し、マッチで火を灯した。洞窟内は灯りがなく、松明やスペルなしではとても抜けられる場所ではない。アキ自身も長い松明を持ち、洞窟内へと入って行った。
照らされた洞窟内は明るく、初めて地面が黄土色、壁が岩肌のような灰色であることがわかる。モンスターは先に誰かが狩っていったのか、さっぱりいなかった。
「アッキー抜かりないねぇー」
「アイテムは一式ないと不安になるんだよ。特に俺みたいな職業のやつはさ、無理な戦闘がしづらいからな」
二人のさして大きくもない声が洞窟内で反響する。洞窟内の道幅は広く、三人を横に並べてもまだ十分余裕はありそうだ。次第になだらかに道が分岐し始めた。
ヴァルカンへと続く道順を熟知していた三人は、迷うことなく正しい道を進んでいく。
「……ん? 人影だ」
「なんか、戦ってるのかな?」
遠方に僅かながらに見えたほとばしる閃光は、明らかに電撃系スペルのものだった。松明もない暗闇で戦闘しているようだ。一方的に攻撃されていたらしいプレイヤーが、アキ達の松明を見つけ、一目散に走って向かってきた。
「うわ、巻き込まれちゃうね」
「……不運の女神をキュータに移されたかなあ」
ぼやいているうちに、その青年は叫びながらクオンへと抱きついてきた。
「た、助けておくれぇ~!」
「さ、触らないでよ!」
明らかに不機嫌になったクオンは、その青年の頬に裏拳をかました。「ぎゃふんっ!」と壁際まで飛んでいった青年は、しばらく悶えてから立ち上がろうとしたが、その場に座り込んでしまった。足を震わせながら腰を抜かしている。
「ごご、ごめんよ。暗いから女の子だってわからなくて……! PKの人達に待ち伏せされてピンチなんだ!」
「アキどうするー?」
「どうせこの道を通らなきゃいけないんだし、そのPKが俺達をみすみす見逃すはずもない」
そんな会話をしているうちに、PKと思しきプレイヤー達がやってきた。男が二人と女が一人の三人編成だった。以前挑んできた二人組とは違い、誰に強制をされている素振りは一切なく、薄ら笑っている。
武器はどれも中級クラスのドロップアイテムだけど、防具はブラックスミスが作るオーダーメイドの品物。俺はブラックスミスじゃないから素材元のモンスターがどの程度か判別できないな。見たところ甲殻類モンスターっぽいけど……。
アキの背後に立った白虎がPK三人を見回した。
「アタッカーのプレイヤー二人は、マーダークラブの甲殻を前面及び背面に用いている。関節部分には同じくマーダークラブの筋組織が使用されており、非常に扱いやすい作りだ。しかし、マーダークラブ自体が中級クラスのモンスター故に防御力は決して高くはない。
サポーターの女は見た目重視のオーダー、この先にいるプチレッドドラゴンの鱗を用いたローブ。対スペル用にはしてあるようだが、元来戦闘向きではないため、論外」
「び、白虎。あれ、全部分析したのか……?」
「……俺は、メイン職業こそナイトだが、サブ職業はブラックスミス。そしてあの防具らは恐らく全て、俺がネットに公開していたレシピによるものだ。素材の扱い方の癖が似ている」
本物の職人なのかと疑いたくなるな。ブラックスミスは発想次第でとんでもなく高性能な武器防具が作り出せるけど、レシピを作り出すなんて相当の腕利きか。
でもおかげで、敵の実力が計り知れた。
「白虎、そこの腰抜かしてる人とクオンを守っておいて。クオンは待機してエンチャンターのスペルを温存するんだ」
「アッキー、まさか一人で?」
「今の俺がどこまでやれるか、試したい。精鋭隊の力になれないようなら、大人しくディザイアにでも引きこもるよ。
お前ら三人、まとめてかかってこいっ!」
アキは腰に付けていた藍色の水神鞭を解き、軽く振るい、目にも留まらぬ速さで空気を激しく叩きつける。
前衛の一人は短剣の二刀流、もう一人は脇差の一本のみ。そしてあの後衛は白虎の言う通りの防具なら、察するに主にサポーター。
でもさっき電撃系のスペルがちらと見えた。定石通りなら後衛が放ったスペルだけど、意表を突いて前衛のどちらかがウィザードということもあるか。
さあ……どう出る?
まず中級ダンジョン『閉塞の洞窟』を抜け、次の上級フィールド『風巻の山脈』を越えたところにヴァルカンはある。
閉塞の洞窟入り口。岩山の麓にあるそれは、岩の陰に隠れるように開いていた。付近にモンスターは見られないが、入り口の穴の何もかもを吸い込んでしまいそうな漆黒が、冒険者の不安を煽る。
「はいクオンに白虎、これ」
アキはアイテムチェストから常備していた松明を二人に手渡し、マッチで火を灯した。洞窟内は灯りがなく、松明やスペルなしではとても抜けられる場所ではない。アキ自身も長い松明を持ち、洞窟内へと入って行った。
照らされた洞窟内は明るく、初めて地面が黄土色、壁が岩肌のような灰色であることがわかる。モンスターは先に誰かが狩っていったのか、さっぱりいなかった。
「アッキー抜かりないねぇー」
「アイテムは一式ないと不安になるんだよ。特に俺みたいな職業のやつはさ、無理な戦闘がしづらいからな」
二人のさして大きくもない声が洞窟内で反響する。洞窟内の道幅は広く、三人を横に並べてもまだ十分余裕はありそうだ。次第になだらかに道が分岐し始めた。
ヴァルカンへと続く道順を熟知していた三人は、迷うことなく正しい道を進んでいく。
「……ん? 人影だ」
「なんか、戦ってるのかな?」
遠方に僅かながらに見えたほとばしる閃光は、明らかに電撃系スペルのものだった。松明もない暗闇で戦闘しているようだ。一方的に攻撃されていたらしいプレイヤーが、アキ達の松明を見つけ、一目散に走って向かってきた。
「うわ、巻き込まれちゃうね」
「……不運の女神をキュータに移されたかなあ」
ぼやいているうちに、その青年は叫びながらクオンへと抱きついてきた。
「た、助けておくれぇ~!」
「さ、触らないでよ!」
明らかに不機嫌になったクオンは、その青年の頬に裏拳をかました。「ぎゃふんっ!」と壁際まで飛んでいった青年は、しばらく悶えてから立ち上がろうとしたが、その場に座り込んでしまった。足を震わせながら腰を抜かしている。
「ごご、ごめんよ。暗いから女の子だってわからなくて……! PKの人達に待ち伏せされてピンチなんだ!」
「アキどうするー?」
「どうせこの道を通らなきゃいけないんだし、そのPKが俺達をみすみす見逃すはずもない」
そんな会話をしているうちに、PKと思しきプレイヤー達がやってきた。男が二人と女が一人の三人編成だった。以前挑んできた二人組とは違い、誰に強制をされている素振りは一切なく、薄ら笑っている。
武器はどれも中級クラスのドロップアイテムだけど、防具はブラックスミスが作るオーダーメイドの品物。俺はブラックスミスじゃないから素材元のモンスターがどの程度か判別できないな。見たところ甲殻類モンスターっぽいけど……。
アキの背後に立った白虎がPK三人を見回した。
「アタッカーのプレイヤー二人は、マーダークラブの甲殻を前面及び背面に用いている。関節部分には同じくマーダークラブの筋組織が使用されており、非常に扱いやすい作りだ。しかし、マーダークラブ自体が中級クラスのモンスター故に防御力は決して高くはない。
サポーターの女は見た目重視のオーダー、この先にいるプチレッドドラゴンの鱗を用いたローブ。対スペル用にはしてあるようだが、元来戦闘向きではないため、論外」
「び、白虎。あれ、全部分析したのか……?」
「……俺は、メイン職業こそナイトだが、サブ職業はブラックスミス。そしてあの防具らは恐らく全て、俺がネットに公開していたレシピによるものだ。素材の扱い方の癖が似ている」
本物の職人なのかと疑いたくなるな。ブラックスミスは発想次第でとんでもなく高性能な武器防具が作り出せるけど、レシピを作り出すなんて相当の腕利きか。
でもおかげで、敵の実力が計り知れた。
「白虎、そこの腰抜かしてる人とクオンを守っておいて。クオンは待機してエンチャンターのスペルを温存するんだ」
「アッキー、まさか一人で?」
「今の俺がどこまでやれるか、試したい。精鋭隊の力になれないようなら、大人しくディザイアにでも引きこもるよ。
お前ら三人、まとめてかかってこいっ!」
アキは腰に付けていた藍色の水神鞭を解き、軽く振るい、目にも留まらぬ速さで空気を激しく叩きつける。
前衛の一人は短剣の二刀流、もう一人は脇差の一本のみ。そしてあの後衛は白虎の言う通りの防具なら、察するに主にサポーター。
でもさっき電撃系のスペルがちらと見えた。定石通りなら後衛が放ったスペルだけど、意表を突いて前衛のどちらかがウィザードということもあるか。
さあ……どう出る?
「エタニティオンライン」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
2.1万
-
7万
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
176
-
61
-
-
66
-
22
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
5,039
-
1万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
2,534
-
6,825
-
-
3,152
-
3,387
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
3,548
-
5,228
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
1,295
-
1,425
-
-
2,860
-
4,949
-
-
6,675
-
6,971
-
-
6,044
-
2.9万
-
-
3万
-
4.9万
-
-
344
-
843
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
76
-
153
-
-
1,863
-
1,560
-
-
3,653
-
9,436
-
-
14
-
8
-
-
108
-
364
-
-
2,629
-
7,284
-
-
2,951
-
4,405
-
-
9,173
-
2.3万
-
-
1,301
-
8,782
-
-
614
-
221
-
-
2,431
-
9,370
-
-
4,922
-
1.7万
-
-
614
-
1,144
-
-
88
-
150
-
-
2,799
-
1万
-
-
164
-
253
「SF」の人気作品
-
-
1,798
-
1.8万
-
-
1,274
-
1.2万
-
-
477
-
3,004
-
-
452
-
98
-
-
432
-
947
-
-
432
-
816
-
-
415
-
688
-
-
369
-
994
-
-
362
-
192
コメント