エタニティオンライン
ボロ刀のユウ
────契約が成立し、時折オータムセキュリティに連絡を入れるということを約束したキュータは、アキとクオン、そしてフラメルに別れを告げ、フラメラーズホテルを出て行った。
その後、アキとクオンもクエストを受注するためにフラメルと別れた。
次に向かった場所はクエストの受注場所である『憩いの酒場』。ここでは運営側が頻繁に更新する公式クエスト、そしてプレイヤー自体が他プレイヤーへと依頼するヘルプクエストが集まっている。
アキとクオンが一際大きな憩いの酒場の扉を開けると、店内はいつも通り賑わっていた。プレイヤーとNPCがテーブル席やカウンター席などに座り混在している。
しかし二人は酒場の奥まで入らず、入り口のロビーに溜まっている多くのプレイヤーへと混ざった。
「メニュー」
アキとクオンは同時にメニュー画面を開き、憩いの酒場でのみ開くことの出来るクエスト受注画面へと進んだ。公式クエストとヘルプクエストが枠で分けられていた。ただのモンスター狩りをしたいだけなので二人は公式クエストから選ぶことにする。付箋のような形をしたアイコンの中に『キマイラ討伐』とクエスト名が書かれていた。それを上下にスライドさせながら選び取る。
「このキマイラで良いー?」
「今日の気分はキマイラなのか」
「飛んでるキマイラを殴り落とすのが気持ち良いんだよー! それじゃ、これに決定! メンバーは私とアキ、で完了っと」
エタニティオンラインに固定パーティという概念はない。クエストを受注する際は付近のプレイヤーやフレンドのプレイヤーを自動的に認識し、その中からオンライン状態のプレイヤーを手動で選択できる仕組みになっていた。申請の許可が得られたと同時に、そのクエスト限定のパーティが出来上がる。アキとクオンはクエストを受注するとすぐさま街中へと戻って行く。
アキはさりげなく街の中央にある時計塔の時計を確認した。
十時半。ログインしてからちょうど一時間。ようやくクエストまで来たか。お詫びに今回はクオンを主軸にして戦おう。
「ディザイアから東にある『躍然たる草原』の辺りだ。すぐに向かおう」
フィールド『躍然たる草原』へと足を運ぶ二人は、ディザイアとフィールドを隔てる東門へとやって来た。東門には元来門番などはいないはずであったが、そこには紺色の鎧を身にまとった多くのプレイヤーが集まっていた。
「天馬騎士団、今日も相変わらず頑張ってんねー」
「それが彼らの趣味だからな。仕方ない。……ん、あれは、ユウ?」
どこか見覚えのある顔を見つけた。黒縁のメガネを掛けている青年は、仲間の団員に武器である刀を取られていた。それを必死に返してもらおうとするも、三人の団員達に阻まれ、なかなか思うようにいっていないようだ。
アキは少しだけ眉をひそめながら、その集団へと早足で近づいていく。
「エタニティオンライン利用規約に『拠点設定の行える街、または村の中での暴行やいやがらせなど、他プレイヤーの迷惑になる行為は、アカウント停止、または五感減退の可能性がある』と書かれています。あなた方は自警団の役割を担う天馬騎士団であるにも関わらず、そんなことも知らないんですか? 今通報すれば、恐らく数日間の五感減退処分でしょう。さてどうしますか!」
大声で言い放ったアキはキッといやがらせをしている団員達を睨みつけた。目配せした団員達は地面に刀を捨て、その場から立ち去った。いやがらせを受けていたユウは刃が所々欠けた身長以上ある大きな刀を、大切そうに拾い上げて抱えた。
「ア、アキ、それにクオンも!」
「やほー!」
「またいじめられてたのか、ユウ」
二人はユウへと歩み寄った。ユウは健気に笑って見せたが、楽しげではないことをアキとクオンは知っていた。
「はは……。こんなボロ刀じゃ、いじめられても仕方ないや」
「ユウさぁ、それ一応アキのと同じ激レア武器なんでしょ? どうして市販の武器以下の攻撃力なの?」
「それは僕にもわからないよ。ただ、古びた大太刀としか書かれてないんだ。せっかく『竜狩りの秘宝』でドロップしたアイテムなのに……」
「なんか条件でもあるんじゃないのか。どこの攻略情報にも書かれてないから、見当もつかないけど」
三人は、そのただひたすらに大きな刀を見上げた。声色を変え、ユウがアキに話を振った。
「そういえば、二人はこれからクエストなんだね?」
「そうそう。キマイラでストレス発散したいんだとさ。クオンきってのリクエストでね」
横目でクオンを見つめるアキは半笑いした。クオンが頭を掻きながら、屈託なく笑う。アキとユウは、つくづくこの少女が、自分達より年上だとは思えなかった。しかし、外見は現実とほぼ同一であることは周知の事実である。
「最近仕事忙しくてさー。でもね、明日を凌げば、しばらくはお休み取れるんだー!」
クオンは両腕を振り切り、晴天の空へと大きく突き上げた。
「それは良かったね。僕らも明日で学校は終わり。明後日からは夏休みだよ」
「そっかー! じゃまた三人でクエスト回したいねぇ」
他愛もない会話をしてからユウと別れ、街の外へと出た。土の大地が広がる平地の先に薄っすらと草原が見える。これこそがアキ達の目指している『躍然たる草原』であった。辺りを見回すと遠方には山々や森が望める。
その後、アキとクオンもクエストを受注するためにフラメルと別れた。
次に向かった場所はクエストの受注場所である『憩いの酒場』。ここでは運営側が頻繁に更新する公式クエスト、そしてプレイヤー自体が他プレイヤーへと依頼するヘルプクエストが集まっている。
アキとクオンが一際大きな憩いの酒場の扉を開けると、店内はいつも通り賑わっていた。プレイヤーとNPCがテーブル席やカウンター席などに座り混在している。
しかし二人は酒場の奥まで入らず、入り口のロビーに溜まっている多くのプレイヤーへと混ざった。
「メニュー」
アキとクオンは同時にメニュー画面を開き、憩いの酒場でのみ開くことの出来るクエスト受注画面へと進んだ。公式クエストとヘルプクエストが枠で分けられていた。ただのモンスター狩りをしたいだけなので二人は公式クエストから選ぶことにする。付箋のような形をしたアイコンの中に『キマイラ討伐』とクエスト名が書かれていた。それを上下にスライドさせながら選び取る。
「このキマイラで良いー?」
「今日の気分はキマイラなのか」
「飛んでるキマイラを殴り落とすのが気持ち良いんだよー! それじゃ、これに決定! メンバーは私とアキ、で完了っと」
エタニティオンラインに固定パーティという概念はない。クエストを受注する際は付近のプレイヤーやフレンドのプレイヤーを自動的に認識し、その中からオンライン状態のプレイヤーを手動で選択できる仕組みになっていた。申請の許可が得られたと同時に、そのクエスト限定のパーティが出来上がる。アキとクオンはクエストを受注するとすぐさま街中へと戻って行く。
アキはさりげなく街の中央にある時計塔の時計を確認した。
十時半。ログインしてからちょうど一時間。ようやくクエストまで来たか。お詫びに今回はクオンを主軸にして戦おう。
「ディザイアから東にある『躍然たる草原』の辺りだ。すぐに向かおう」
フィールド『躍然たる草原』へと足を運ぶ二人は、ディザイアとフィールドを隔てる東門へとやって来た。東門には元来門番などはいないはずであったが、そこには紺色の鎧を身にまとった多くのプレイヤーが集まっていた。
「天馬騎士団、今日も相変わらず頑張ってんねー」
「それが彼らの趣味だからな。仕方ない。……ん、あれは、ユウ?」
どこか見覚えのある顔を見つけた。黒縁のメガネを掛けている青年は、仲間の団員に武器である刀を取られていた。それを必死に返してもらおうとするも、三人の団員達に阻まれ、なかなか思うようにいっていないようだ。
アキは少しだけ眉をひそめながら、その集団へと早足で近づいていく。
「エタニティオンライン利用規約に『拠点設定の行える街、または村の中での暴行やいやがらせなど、他プレイヤーの迷惑になる行為は、アカウント停止、または五感減退の可能性がある』と書かれています。あなた方は自警団の役割を担う天馬騎士団であるにも関わらず、そんなことも知らないんですか? 今通報すれば、恐らく数日間の五感減退処分でしょう。さてどうしますか!」
大声で言い放ったアキはキッといやがらせをしている団員達を睨みつけた。目配せした団員達は地面に刀を捨て、その場から立ち去った。いやがらせを受けていたユウは刃が所々欠けた身長以上ある大きな刀を、大切そうに拾い上げて抱えた。
「ア、アキ、それにクオンも!」
「やほー!」
「またいじめられてたのか、ユウ」
二人はユウへと歩み寄った。ユウは健気に笑って見せたが、楽しげではないことをアキとクオンは知っていた。
「はは……。こんなボロ刀じゃ、いじめられても仕方ないや」
「ユウさぁ、それ一応アキのと同じ激レア武器なんでしょ? どうして市販の武器以下の攻撃力なの?」
「それは僕にもわからないよ。ただ、古びた大太刀としか書かれてないんだ。せっかく『竜狩りの秘宝』でドロップしたアイテムなのに……」
「なんか条件でもあるんじゃないのか。どこの攻略情報にも書かれてないから、見当もつかないけど」
三人は、そのただひたすらに大きな刀を見上げた。声色を変え、ユウがアキに話を振った。
「そういえば、二人はこれからクエストなんだね?」
「そうそう。キマイラでストレス発散したいんだとさ。クオンきってのリクエストでね」
横目でクオンを見つめるアキは半笑いした。クオンが頭を掻きながら、屈託なく笑う。アキとユウは、つくづくこの少女が、自分達より年上だとは思えなかった。しかし、外見は現実とほぼ同一であることは周知の事実である。
「最近仕事忙しくてさー。でもね、明日を凌げば、しばらくはお休み取れるんだー!」
クオンは両腕を振り切り、晴天の空へと大きく突き上げた。
「それは良かったね。僕らも明日で学校は終わり。明後日からは夏休みだよ」
「そっかー! じゃまた三人でクエスト回したいねぇ」
他愛もない会話をしてからユウと別れ、街の外へと出た。土の大地が広がる平地の先に薄っすらと草原が見える。これこそがアキ達の目指している『躍然たる草原』であった。辺りを見回すと遠方には山々や森が望める。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
159
-
-
141
-
-
55
-
-
310
-
-
1978
-
-
439
-
-
4
-
-
24251
-
-
1168
コメント