幼馴染を追って異世界へ 〜3億課金した最強アカウント × 【超重力属性】を使って〜
22話 兄妹
ーーおかしい
俺は召喚されたスケルトンの所に戻ると、20体のスケルトンにもう1体マグリがいた。
殻が破壊されたのでてっきり回復するまで待つのかと思いきやもう治っていた、それだけじゃなく大きさもさらに一回り大きくなっていた。
そんなにすぐ砕かれた殻を再生するなど課金アイテムを使う以外不可能だし、さらに言えば大きさまで変わってるとなると……考えられるスキル、魔法が……
と色々考えているとマグリが口を開く。
「どれもハズレだ……私は本体ではない、100体の分裂体の1体にすぎん。本体は未だ睡眠中だ」
マグリの声は女性の声質に変わっていた。
なるほど、だからこんなにあっさり倒せたのか……ん?ということは
「これから100体どんどん強く、殻は硬く、そして大きくなっていくからな。まぁせいぜい頑張れ」
まぁそう来るよな、1日で壊せた嬉しさを返して欲しいものだ。
「行きますかな」
俺はスキルをいつでも発動できるよう準備し、構える。15体のスケルトンは今まで通りだが、追加された5体は人型ではなかった。
スケルトンワイバーン、竜種のスケルトン5体今度は上空からの攻撃が矢だけではなくなるわけか……
本当に辛すぎーー
**
あれからもう一戦して今は夜ご飯を食べるため焚き火の用意と、ご飯の準備をしていた。
正直あのハマグリを焼いて食べたい所だが、これは心の奥底にしまっておくことにした。
シロネが料理、俺が焚き火の火の管理をしている。やっぱりこういう野営は俺は結構好きだ、もっと人がいたらもっと楽しいんだろうなぁと考えつつぼーっと火を見ていた。
さっきまでいたマグリは砂の中に戻って今はいない。
「ご飯出来たのじゃー」
俺は火にかけてあった鍋を持ち、シロネの方に向かう。簡易的に作った机の上には色々な果物、この辺りでしか生えていないグリューワイという楕円形深緑であまり食欲はわかない色をしているが美味しいらしいやつらしい。
俺が持っている鍋にはリ・ストランテから持ってきてある食材を使ったスープが入っている。砂漠の夜は寒いのでこういうのは本当ありがたい。
そして火を囲いシロネと一緒にご飯を食べている。だが、いつもならシロネの方から色々喋りかけてくることが多いのだが今日は黙々とご飯を食べている。
俺何か怒らせるようなことしたかなぁと思いつつご飯をゆったり時間をかけ食べていた。
すると、先にご飯を食べ終わったシロネがこちらをじっと見つめてくる。
俺はそれを見てたじろぐ、照れ隠しのためスープをすすって誤魔化しなんとか平静を保とうとするが無理っぽい。
「えーっと……欲しいならあげるけど……」
俺はそっとスープを差し出す。 するとシロネは慌てて訂正する。
「ち、違うのじゃーーそうではないもうお腹いっぱいだから大丈夫じゃ」
シロネは両手の人差し指を合わせうつむきながらもじもじしていた。そしてこちらをもう一度見据えて言った。
「昨日はすまんかったわしのせいでアキトにあんな怪我を」
俺は何事かと思っていたがそんなどうでもいいことを……いや、シロネの中では自分のせいでというのでどっか心の片隅に引っかかっていた部分もあったのだろう。
ま、確かにあの時あんなことを言っていなければここまで怪我することもなかっただろう。ただ……
「誰でも失敗はある。そこから学べばいいし成長できる、それに友達だろの一言で済むらしいぞ」
どっかで聞いた陽キャ辞典に載っていたような……
「こほん。ともかくだ俺は気にしていないし、いい特訓になった、ありがとう……それだけは伝えておく」
俺はすぐ目をそらしてしまう。いやぁ我ながらかなり恥ずかしいことを言ってしまったぞいつかまたこの日の事を思い出して悶えるんだろうなぁ。
「ありがとう………そうじゃなこれからもよろしくお願いしますじゃ!!」
そう言ってシロネはこれまでにない笑顔を浮かべる。ようやく壁を取っ払えたようだ。
俺は友達との壁ついて空気清浄機のフィルターだと考えている、壁が多い=フィルターが多いので空気は綺麗になるな、そりゃ友達とのつ気合いもよほど綺麗なんだろうな。個性を殺し人に気に入られようとしされる関係だ、そしてフィルターが少ない場合これは空気は洗浄出来ないからそりゃ汚い、だが俺はこっちの方が本当の友達に近いと思っている。
まぁあくまでこれは俺が一人で思っているだけだ、そして今俺がフィルターを介さない相手の二人目が出来たってわけだ。
さぁて明日から本格的に始まるんだ、今日は早く寝ようーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ただいまぁ〜」
俺は泊まっている宿屋の部屋で誰かが返事をしてくれるわけでもないのに言ってしまう。
借金をしていたやつはぶっ倒したし、これで不安要素は消えた……これで入学試験まで心置きなく特訓できる。
暗い部屋に火魔法で明かりを灯す。すると暖かなオレンジ色の光が辺りを照らす。
  そして、そこに本来居るはずのない人がベットの上で仁王立ちをして腕を組んで待ち構えており、俺は死後硬直のように全身が固まり息を呑む。
「お帰りお兄ちゃん」
  そう……そこにいたのは俺の妹ナナミだ。
「びっくりさせるなよナナミ。泥棒かと思って危うく魔法を放つとこだったぞ」
ナナミはその事を聞いてるのかいないのかずっと顔をムスッと頬を膨らませ顔を赤くしている。
どうやら怒っているらしい。
こういう時は大抵まずは謝らないといけないのが兄妹(俺だけの)ルール。
「すまんナナミ。勝手に家を飛び出して街に行ったのは謝るから」
そう、俺は現在家出中だ。多分それを追いかけてきたのだろう……
「本当に心配したんだからねお兄ちゃん!急に家を出て行くなんて」
「魔導学園の入学試験なんて絶対無理だよお兄ちゃん考え直して」
なぜ家でしてきたか、そうだ俺は魔導学園へ入りたいのだ、魔導学園に平民が入ることはほとんど無いしかも入学後出来たとしても平民用クラスが用意されていて貴族の子供達と一緒の扱いはされない。
一応実力主義を謳っているが表向きだけだ、中ではひどいいじめや中には命まで落とした生徒までいると噂されてるくらいだ。
学園後は家の跡取り以外のやつは冒険者になったり国に仕えたりする。平民は基本農業や宿屋など家をつぐもしくは街に出向いて働き口を見つけるしか無い。
皇国かどっかに平民で国家最強の剣士がいると噂で聞いたことはあるがどうせデマ情報だ。
だが、俺はどうしても行きたいのだ。だからああやって闇業者からお金を借りては業者のやつらを蹴散らしてお金を貯めてきたんだ。汚い金だと言われようが知ったこっちゃないこっちは必死なのだ。
「アギトお兄様が行ったからですか?」
やはり俺の妹は勘がすごいらしい。誰に似たんだか……
「ああ、そうだ俺は兄貴を越すために学園にどうしても入りたいんだ!」
俺の兄貴は学園に俺たちの村の中で唯一受かった人だ、そりゃ村中受かった時は大騒ぎになったさ、村の人からもお金をかき集めて受けるんだ当たり前だろう。
だが、兄貴は入ってそうそう学園をサボるようになり貴族の人に喧嘩を売ったりといい噂は聞かない、要するにヤンキーだ。
俺の外見であまり人のことを言えないが、流石に頭にきた。兄さんは村の中で一番魔法もうまかったし実力はあった、それに言葉はきつかったが優しい一面も持っていたんだ。
なのに、村の人の思いを踏みにじりだらだらと学園生活をしている兄貴に俺は一発殴りに行く、そして兄貴を越したことを証明してやるんだ。
「はぁ〜」
ナナミはため息をつき、こちらをたまにしか見せない真剣な眼差しでこちらを見る。
「わかりました。お母さんからは連れ戻してこいと言われていたんだけどね私がなんとか言っといてあげる。他にも言いたいことは山ほどあるけどお兄ちゃん」
「はい……」
「やるなら絶対卒業して兄弟二人で村に戻ってきてください」
試験の合否ではなく卒業か……
こみ上げる気持ちを押さえ込みもう一度覚悟という名の帯を締め直す。
「当たり前だ!!」
俺は自分に言い聞かせるよう言い放った。
「あ、あとお兄ちゃんの合格を見届けるまではこっちにいるからよろしくね♪」
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