奴隷を助けたはずが奴隷になったのでタスケテください!
27ー3 蔑如のアルテミス③
「そこまでです、ホモ・デウス。
大人しく殺されれば、人質たちの命は保障しましょう」
シカを模した怪物、アクタイオンがアンジェリカの首をくわえていた。
意識を失っているのか、彼女は脱力した状態のままだ。
「俺の炎は狙ったものだけを燃やす、人質は無意味だ」
「それはどうでしょう? これを見てもまだ、その考えは変わりません?」
アクタイオンが、くわえている彼女の首を離す。
そして、地面に横たわる彼女の上衣のスソを口でめくってゆく。
半透明な金属の鎖が、彼女の腹にいくつも巻きついていた。
さきほどは口で隠れていて見えなかったが、彼女の首にも同じ鎖がある。
「お前の歪んだ趣味に、付き合ってやるつもりはない」
「これは呪いですよ、ホモ・デウス。
このアクタイオンが死ねば、鎖はひとりでに彼女を絞め殺すでしょう」
「やれやれ、その鎖から焼くだけだ」
右手を彼女へつきだす。
「なんと視野がせまい。少しばかりさえ、周囲へ注意を払うこともできないとは」
赤く発光する鎖が、生き残っている人々の首を絞めていた。
「安心しなさい。生かさぬように……、殺さぬように。
悲鳴が聞こえないことに、違和感はなかったようですね。
抵抗すれば、こちらから即座に絞め殺して差し上げましょうか」
ブナのような木が大量に生えてゆく。
「なんと恐ろしい力、アルテミス様がお戻りになられたようです」
ゲルヴァシャの大地は深い森へ変わった。
黒い霧がアクタイオンの隣へ現れ、エヴァリューシュの姿になった。
アルテミスが周囲へ目をやった後、ツバを吐く。
「ぶざまにもほどがあるだろ。オレ様の奴隷にもかかわらず、情けねえな」
アクタイオンが頭をたれた。
「返す言葉がございません。オリオン、ニュンペー、ヘリオス。曲がりなりにも神でございますので、この度の失態はアルテミス様のご名誉に深い深い傷を」
金属の鎖がアルテミスの足元に生えた。
「アクタイオン。眠っている間に、脳がホモ・デウス程度にまで退化したのか?」
「アルテミス様、お話の筋が見え難くございます……」
アルテミスがその鎖を引き抜く。
突然に現れた半透明な鎖が、アクタイオンを拘束した。
「いったい何をッ。力を制限されては、能力が維持できません!」
アンジェリカや人質に巻きついていた鎖が一瞬で消えた。
「黙れ、この狩人の恥さらしがッ!」
アルテミスがアクタイオンの首を片手でもぐ。
「なぜでございますッ、よく尽くしたではごいざませんか!
どんな時も、どんな代償を払ってでも、この身と力を捧げてきたではないですか!」
「人質は、追い詰められたホモ・デウスの所業だ。追い詰めて狩る立場である、狩人の取るべき行動ではない!
それにオレ様の力を持ってすれば、封印の魔法を扱える賢者の殲滅など造作もないこと。そこの赤爆を使うホモ・デウスとて例外にはならんッ。
アクタイオン、貴様がしたのは、オレ様の力を過小評価させたことに等しい!」
「目的を達成できれば、手段などに拘泥する必要はございませぬ。
尊厳、矜持、道徳、名誉……、そんなものはホモ・デウスどもが好む、便所の落書きで語られる装飾語に過ぎない」
「自らの考えひとつさえ貫けないから、貴様は奴隷なんだッ!」
アルテミスがアクタイオンの頭部を握り潰す。
いくつかの肉片が周囲へ飛び散った。
呪いから解放された人々が騒ぎだす。
その中にいた看護師の男性が、呼吸をしていない負傷者たちの手当を始めた。
彼が、負傷者の首へ緑色に光る手をかざす。
森がその光を吸収した。
「どうして、魔法がつかえないんだッ!」
この森は魔法を吸い取って、無効化してしまうようだ。
黒い外衣と和服のような紺染めの上衣、アルテミスがそれらを脱ぐ。
「オレ様とやろうって根性は褒めてやる。が、無謀だ」
アルテミスの体が黒く染まると、明るい紺の流線がそこへ入った。
俺は焔鎌の刃部を二回ノックする。
「赤爆に燃やせないものはない、あきらめろ」
「この森では、俺が全てを決定する」
アンジェリカが腹部を押さえながら起き上がった。
「イヤ、こないでッ。
割れろ——ハデスの氷圧ッ!」
大量の氷がアルテミスの隣で発生した。
それらは細かく分解されて、森に吸われていった。
「ホモ・デウスのメス、オレ様が何をつかさどるか忘れたのか」
俺は焔鎌でアルテミスの胴を断つ。
森が光ると、その体が修復されてゆく。
「オレ様の命は、このカリュ大陸にある全ての植物が元になっている」
「植物がある限り、不死だというの?」
アンジェリカが俺を盾にしながらそう言った。
大人しく殺されれば、人質たちの命は保障しましょう」
シカを模した怪物、アクタイオンがアンジェリカの首をくわえていた。
意識を失っているのか、彼女は脱力した状態のままだ。
「俺の炎は狙ったものだけを燃やす、人質は無意味だ」
「それはどうでしょう? これを見てもまだ、その考えは変わりません?」
アクタイオンが、くわえている彼女の首を離す。
そして、地面に横たわる彼女の上衣のスソを口でめくってゆく。
半透明な金属の鎖が、彼女の腹にいくつも巻きついていた。
さきほどは口で隠れていて見えなかったが、彼女の首にも同じ鎖がある。
「お前の歪んだ趣味に、付き合ってやるつもりはない」
「これは呪いですよ、ホモ・デウス。
このアクタイオンが死ねば、鎖はひとりでに彼女を絞め殺すでしょう」
「やれやれ、その鎖から焼くだけだ」
右手を彼女へつきだす。
「なんと視野がせまい。少しばかりさえ、周囲へ注意を払うこともできないとは」
赤く発光する鎖が、生き残っている人々の首を絞めていた。
「安心しなさい。生かさぬように……、殺さぬように。
悲鳴が聞こえないことに、違和感はなかったようですね。
抵抗すれば、こちらから即座に絞め殺して差し上げましょうか」
ブナのような木が大量に生えてゆく。
「なんと恐ろしい力、アルテミス様がお戻りになられたようです」
ゲルヴァシャの大地は深い森へ変わった。
黒い霧がアクタイオンの隣へ現れ、エヴァリューシュの姿になった。
アルテミスが周囲へ目をやった後、ツバを吐く。
「ぶざまにもほどがあるだろ。オレ様の奴隷にもかかわらず、情けねえな」
アクタイオンが頭をたれた。
「返す言葉がございません。オリオン、ニュンペー、ヘリオス。曲がりなりにも神でございますので、この度の失態はアルテミス様のご名誉に深い深い傷を」
金属の鎖がアルテミスの足元に生えた。
「アクタイオン。眠っている間に、脳がホモ・デウス程度にまで退化したのか?」
「アルテミス様、お話の筋が見え難くございます……」
アルテミスがその鎖を引き抜く。
突然に現れた半透明な鎖が、アクタイオンを拘束した。
「いったい何をッ。力を制限されては、能力が維持できません!」
アンジェリカや人質に巻きついていた鎖が一瞬で消えた。
「黙れ、この狩人の恥さらしがッ!」
アルテミスがアクタイオンの首を片手でもぐ。
「なぜでございますッ、よく尽くしたではごいざませんか!
どんな時も、どんな代償を払ってでも、この身と力を捧げてきたではないですか!」
「人質は、追い詰められたホモ・デウスの所業だ。追い詰めて狩る立場である、狩人の取るべき行動ではない!
それにオレ様の力を持ってすれば、封印の魔法を扱える賢者の殲滅など造作もないこと。そこの赤爆を使うホモ・デウスとて例外にはならんッ。
アクタイオン、貴様がしたのは、オレ様の力を過小評価させたことに等しい!」
「目的を達成できれば、手段などに拘泥する必要はございませぬ。
尊厳、矜持、道徳、名誉……、そんなものはホモ・デウスどもが好む、便所の落書きで語られる装飾語に過ぎない」
「自らの考えひとつさえ貫けないから、貴様は奴隷なんだッ!」
アルテミスがアクタイオンの頭部を握り潰す。
いくつかの肉片が周囲へ飛び散った。
呪いから解放された人々が騒ぎだす。
その中にいた看護師の男性が、呼吸をしていない負傷者たちの手当を始めた。
彼が、負傷者の首へ緑色に光る手をかざす。
森がその光を吸収した。
「どうして、魔法がつかえないんだッ!」
この森は魔法を吸い取って、無効化してしまうようだ。
黒い外衣と和服のような紺染めの上衣、アルテミスがそれらを脱ぐ。
「オレ様とやろうって根性は褒めてやる。が、無謀だ」
アルテミスの体が黒く染まると、明るい紺の流線がそこへ入った。
俺は焔鎌の刃部を二回ノックする。
「赤爆に燃やせないものはない、あきらめろ」
「この森では、俺が全てを決定する」
アンジェリカが腹部を押さえながら起き上がった。
「イヤ、こないでッ。
割れろ——ハデスの氷圧ッ!」
大量の氷がアルテミスの隣で発生した。
それらは細かく分解されて、森に吸われていった。
「ホモ・デウスのメス、オレ様が何をつかさどるか忘れたのか」
俺は焔鎌でアルテミスの胴を断つ。
森が光ると、その体が修復されてゆく。
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アンジェリカが俺を盾にしながらそう言った。
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