奴隷を助けたはずが奴隷になったのでタスケテください!

金丸@一般ユーザー

22ー1 封印の体④

俺は賢者たちの案内で太陽の神殿に移動した。

入口の丸柱には、あかりがともっていない。

また、そこには女神をしたであろう石像が三つある。

「アテナは月の神殿へ先に行ったようだ」

バンダナでロングヘアーをまとめた男性賢者がそう言った。

俺たちは、大理石でつくられた神殿へ入る。

ショルダーバッグを肩にかけている彼が、手をかざす。

魔法の火が通路に現れてゆく。

「罠は設置してあります?」

「ありません。神殿内には、石材やクモの巣があるばかりです。盗人さえ来ません」

通路を抜けると、やや広い空間が見えてきた。

「『御神体』はここですか」

「まだ先です。御神体は、処女宮という神殿の中央にある部屋に安置されています」

クモの巣を手で払いながら奥へ進む。

「そういえば、入口に像が三つもありました。

 ここには、三柱も封印されているようですね」

「いえ、この神殿には一柱しか封印されていません。アルテミスは、時間帯によってその本質を変えるのです。

 太陽が輝けば、森の神・アルテミス。月が登れば、やまいの神・ヘカテ。そして、太陽と月が同時にある時は、盛衰せいすいの神・セレナ」

大きめの部屋にたどり着いた。

彼が魔法で照明を作りだす。

赤いレンガが、部屋の両脇に規則正しくびっしりと置かれた場所だ。

その奥には、大理石の寝台があった。

彼が寝台を押す。

小さな赤いレンガが、その下にあるくぼみに収まっていた。

「これが御神体……、ただのレンガに見えちゃいますね」

「よそ者にはそうでしょう」

彼は怒っているように、なぜか見えた。

「それでは封印の魔法をかけますので、皆さん、よろしくお願いします」

賢者たちが魔法を次々と発動する。

モノクロの球体があのレンガを包む。

彼が御神体をショルダーバッグへしまった。

「終わりました、ご協力ありがとうございます。引き続き、月の神殿へゆき、ゲルヴァシャ八世と合流します」

賢者たちが話しながら処女宮から出始める。

「いよいよ、あの三処女神とご対面だぜ」

「みょうにうれしそうね。アンタって、いっつも危険なことで興奮してる」

「おい、非常時におしゃべりは止めろ、不謹慎ふきんしんだぞ」

「課長、まさか怖いんですか?」

「冗談もたいがいにしろ、俺が怖いのはカミさんだけだよ」

彼らは談笑しながら通路を歩いていった。

俺とロン毛の賢者が、同時にため息をつく。

「——炉よりこぼれし雛火よ」

俺は立ち止まる。

歩いてきた通路からラヴィの声を聞いた気がした。

「どうしました?」

ロン毛の賢者がそう言ったとき。

紫の炎が通路からあふれてゆく。

「うわあわっわわあわっわあアアアッ!」

「火がッ、燃え、熱ッ、紫キイイのおおおおお」

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ!」

燃え盛る賢者たちが、叫びながらこちらへ走り込んできた。

「接敵を周囲に伝達し、別命なく迎撃開始」

無傷の賢者たちが、それにオウと答え、魔法を撃つ準備を始める。

「オフェンスは俺が行きます、スキをみてゲルヴァシャさんと合流してください」

「一人では無理だ、私も戦おう」

————プロメテウスの炎剣————

ご冗談を。一人でなければ、俺は本気で戦えない。

「御神体の死守が最優先です」

素足で歩く音が、通路からいくつか聞こえる。

提灯のような紫の火が、通路にぽつんと現れた。

「いぬけッ——アポロンの矢」

ひとりの賢者が、黄色く光る矢を手から放つ。

その矢が、提灯ちょうちんのような紫の火へ刺さり、静かに燃えてゆく。

「やっ……、…………、った?」

「ヤってねえッ!」

俺はそう叫んで、炎剣を振りおろす。

爆発が起こり、神殿のほとんどを吹き飛ばした。

ロン毛の賢者が魔法で照明の数を増やす。

160センチ前後に思える、女性の姿がふたつ現れる。

それは、ラヴィとアテナだった。

「二柱なのか……、大賢者はご存命だろうか」

単純に間に合わなかったのなら、すぐにでも太陽の神殿へ来るさ。

ラヴィが、開いた手で口をおおって笑う。

「あの失性者しっせいしゃ(ジェンダーレス)はこないよ。

 下半身、生焼けジュージューだから、いまごろ母親に泣きついてるんじゃない」

俺は炎剣を構えて、走り出す。

「——炉よりこぼれし溶鉱ようこうよ」

現れた紫の火が、刃渡り一メートルほどの両刃剣の形へ変わる。

彼女は一気に俺との距離を詰めて、「せーのッ」と言い、それを振り下ろす。

ふたつの炎剣が、火花を散らして、部屋の中央で衝突した。

その余波で、神殿の床や壁がくずれていく。

「うわー、近くで見ると、この男ブッサ」

ツバぜり合いの中、俺は両手で炎剣をけんめいに押す。

「余裕だな、裏切りのラヴィストレイス」

ラヴィがくすくすと笑う。

「ウチは、三処女神が一柱、怨恨えんこんのヘスティア。その聖人は、もう死んだも同然!

 それと——、ブサイクが話しけんじゃねえ!」

ヘスティアが、ツバぜり合いを簡単にくずして、斬撃を連続で放つ。

俺は防御することをしいられた。

「とろいし、のろいし、どんくさいんだよ!」

俺はヘスティアから何発ものパンチをもらった。

脳が揺れたのか、立っていられない。

俺は頭を素足で踏みつけられてしまった。

「汚い顔でかわいそう……、せめて消毒してあげる、豚がなめて食べやすいようにねッ!」

「やめろオオオッ!」

ヘスティアが俺の頭から足を離して、手の平を上へ向ける。

「——炉よりこぼれし雛火よ」

白い手から、紫の火がしたたり始めるのが見えた。

ほほが焼けてゆくのを感じる。

「おや? おやおやあ? このホモ・デウスは、ザコのクセに叫ばないね。

 えらいえらい……、ごほうびをあげなきゃ!」

キョトンとしたような表情のヘスティアが、紫の火に包まれたノコギリのような武器を魔法で作る。

「陸揚げしたお魚さんの解体ショー、いっくよー!」

ヘスティアが、武器を上げながら笑顔でそう言った。

俺は体をどうにか動かして、その場から離れる。

ノコギリのような武器が俺の背中を削り切った。

痛みのあまりに、地面でくねくねとしてしまう。

「ゆくぞッ、ゆくぞッ——ヘパイストスの剣」

ロン毛の賢者が片刃の剣でヘスティアへ切りかかる。

ヘスティアが彼をにらむ。

「なんだっ、体がッ」

彼はその場に立ちどまったまま動かない。

「ホモ・デウスさあ、ヤる気ある?

 そんな、エブりんの本にでてくるような小さなモノで……。

 エブりん? ……、あああああああ!」

突然、ヘスティアが頭を押さえて苦しみ始めたように見えた。

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