奴隷を助けたはずが奴隷になったのでタスケテください!

金丸@一般ユーザー

20 封印の体②

病室の窓を吹き飛ばして、黒い女神がこちらへ来た。

それは、繊維せんいをあんだだけの簡素かんそな和風の着物を着ている。

————プロメテウスの炎剣、反射的にそれでアテナへ切りかかる。

「——アイギスの盾」

アテナが等身大の盾を魔法で作り、攻撃を防ぐ。

俺は炎剣を振り下ろして、小さな爆発を起こす。

爆風によって、病室の一面とアテナを外へ飛ばした。

エヴァリューシュが腰を抜かしているのが見えた。

「ゲルヴァシャに連絡をして、ラヴィとノアを守れ!」

「命令をやめて下さい、ここは賢者である私の指示に」

俺は彼女の言葉を最後まで聞かない。

外へ出て、アテナへ駆けてゆく。

さらに、着地したばかりのそれへ追撃する。

————赤爆の焔太刀ほむらだち———

刃渡り1メートルほどの日本刀とプロメテウスの炎剣、それらの二刀流で切りかかる。

俺の連続攻撃は、盾によって全てさばかれてしまう。

しかし、赤爆の焔太刀の斬撃痕ざんげきこんがその表面についた。

アテナの視線を感じる。

「アイギスの盾になぜ消されぬ。——ヘパイストスの槍」

振り下ろされた槍を二刀で受けとめる。

次に、払いの攻撃が来たので、一刀でそれを受ける。

そして、自由なもう一刀でその口を突く。

攻撃をかわしたアテナが、距離を少しとり、槍を地面に立てる。

俺は刀を構えたままスキをうかがう。

赤爆の焔太刀が陽炎かげろうをまとっている。

アテナが衣服を口に当てて、乾いた笑い声をもらす。

「なぜアイギスがその魔法を消せぬか、おおよそ察しがついた」

戦場に探偵はいらない。

距離を詰めて、炎剣で突く。

アテナが、また盾でこちらの攻撃を防いだ。

俺は剣を全て手放す。

輪廻りんねの果てより来し、ホモ・デウスよ。

 全知全能の神から、プロメテウスの火——【神法しんぽう】を授かったな」

盾をひきはがして、アテナの顔を殴り抜く。

「だから、どうした」

ひるんでいるアテナの胸ぐらをつかみ、もう一発なぐる。

「暴力的でなんと激しい」

————赤爆の短剣、それで切りつける。

アテナは、俺の素手をつかむと、素早くひねる。

俺は歯を食いしばって耐えようとしたが、短剣を手から離してしまう。

そして、アテナがシールドバッシュをうつ。

飛び降り自殺をしたかと思うほどの痛みが、体の正面に走る。

左に、銀の装飾をほどこされた槍が見えた。

俺はそれに腹部をなぎ払われてしまう。

「わろし」

そう言ったアテナが、病室の方向へころものスソを引きずりながら進む。

アレを追いかけなくては……、息が肺へゆき渡らない。

「いやあああァアアア!」

エヴァリューシュの悲鳴と魔法を激しく撃つ音が、聞こえ始めた。

俺は、病室へどうにかたどりつく。

アテナが、床に倒れているエヴァリューシュへアイギスの盾を向けていた。

「あがくでない、事柄は帳簿を整理するように進むだけだ——メデューサの眼」

大きな目が盾の中心に現れる。

いくつもの小さなヘビが、そこから生え始めた。

「いや、死にたくないのッ、怖いのイヤなの、助けてッ!」

そう言った彼女が、床を手で押して、後ろへ移動してゆく。

「ホモ・デウス、永遠のいとまなど与えぬ。

 依り代よ   しろとして、刹那さえ一柱に尽くしたまえ」

アイギスの盾が、閃光弾のように発光した。

反射的に目を閉じてしまう。

「助けて、お父さんッ、お父さんああああゝゝゝゝアアアアアン!」

俺は目をゆっくりと開ける。

エヴァリューシュとラヴィが、石のような状態になっていた。

ノアはまだ無事だが、次の標的になるだろう。

————プロメテウスの炎剣、それでアテナへ切りかかる。

俺の炎剣が、盾によって弾き飛ばされてしまう。

やはり、赤爆でなければ、ダメージを与えることすら難しい。

「ホモ・デウス、委縮いしゅくなどせずに、かの火を使え」

アテナが三日月の目や口で笑いながらそう言った。

俺はノアを少しだけ見る。

「ホモ・デウス——「神の紛いまが者」は、誰ひとりとして身のたけをわきまえぬ。しょせん、自らは原子や魔法素粒子の集まりのはんちゅうにもかかわらず、存在するもの全てを生活や戦に利用しようと試みてやまない。

 岩塩二袋ほどの重さが詰まった脳を理性と称しつつ地動説を認めているが、カガクの発展により天動説へ移行できると信じている。

 まさに、社会とは狂気の集合体だ」

人間には限界があり、それに気づかないまま物事を判断してゆく、と言いたいのか。

「しゃがめ!」

ゲルヴァシャ八世の声が聞こえた。

俺はその場にかがむ。

直後、ごう雷の音がなる。

閃光がアテナを打ち抜く。

病室の廊下の奥に、ゲルヴァシャ八世と数人がいるのが見える。

「話しこんでしまったようだ」

そう言った無傷のアテナが、ラヴィとエヴァリューシュをかつぐ。

ふたりと一柱は、黒い霧に包まれると、霧散した。

ゲルヴァシャ八世がこちらへきた。

「ラヴィ! エヴァ!」

部屋にふたりはいない。

「アテナは、彼女たちを連れてどこかへ行きました。

 ノアは眼中にない様子でした」

彼は、自らのまゆをつまむ。

「アイツはなにか言っていなかったかしら?」

戦闘中に何か言ってたな。

「依り代として……、尽くせ。そう言ってた気がします」

彼はまゆをつまむのをやめて、何かに気づいたような顔をする。

「依り代……。まさか、三処女神を復活させるつもりではないの」

三柱になったら、誰も手がつけられない。

月と太陽、どちらかの神殿に行ったのだろう。

「ラヴィストレイスは負傷していました、先に契約するように思います」

「なら、私は月の神殿へゆきますわ。

 護衛つけますので、アカヤさんは、太陽の神殿へ行ってもらいますわ。そこで社の中にある御神体を守ってください」

俺は、護衛の人の案内で太陽の神殿へ向かう。

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