奴隷を助けたはずが奴隷になったのでタスケテください!

金丸@一般ユーザー

16ー2 砂漠の行路⑦

砂漠を進むこと数日、北側のアポテネスへ着いた。

太陽がさんさんとしている。

都市出入管理所、白い石で作られた建物が見える。

その手前では、数体の飛竜と警備部隊がいた。

移動の途中、未使用の衣服や携行食料を分けてもらった。

本来ならば、それらは政府へ返納へんのうされる物品だ。

しかし、俺を含めた傭兵たちは、野営所が襲われたことにして、それらを横領おうりょうした。

俺の背中にいるリーシェは、まだ不調なのか辛そうな声を出す。

彼女は成人男性用のローブを着て、フードを深くかぶっている。

ひとりの役人が、都市出入管理所からこちらへ来る。

「ご苦労様です、討伐部隊の責任者はいらっしゃいますか」

グーゴが前に出た。

ふたりは都市出入管理所へと入った。

おそらく、入国と討伐依頼に関する事務手続きをしているのだろう。

グーゴが戻った。

「取りに来い」

彼は、持っている紙の束から、傭兵たちへ一枚の証書を配る。

「都市内の金融機関で報酬を受けとれ」

傭兵たちは、警備部隊に簡単な身体検査を受けた後、入都してゆく。

いよいよ、俺の番になった。

「ご苦労様です、許可証をお願いします」

警備員がそう言った。

ここはウソで乗り越えるしかない。

「魔物の襲撃で燃えました」

「討伐依頼書や保険証も?」

「荷物ごと燃えたので、何も持っていません」

彼は、「ふーん」と言いながら俺の服装を見た。

上下が不ぞろいの服装と、フードを被った人を背負っているように見えただろう。

「名前は?」

本名はいえないな、名前を借りよう。

「ジャック・デップ」

警備員が、書類を取り出して、名前を確認する。

そして、ペンでその書類へ何か書いた。

「ちなみに、その子供は?」

「子供って、誰のことです?」

彼は、まゆをひそめる。

「子供を背負っているでしょう、何を言ってるんだ」

「失礼なヤツだな、彼女はれっきとした大人だ。

 大きなローブをなぜ着ているのか、わからないのか。討伐中に負傷して、体がほとんどないんだ」

彼はため息を少しもらす。

「じゃ、身分証を」

「エリア・サティス(リーシェ)は荷物を持っていない。

 俺と同じで、襲撃の際に亡失ぼうしつしたと見たら分かるだろ!

 話をきいてないのか、それとも話を理解できないのか?」

彼は、少しストレスを感じた表情をした。

俺はその胸ぐらをつかんで叫ぶ。

「俺たちが傭兵くずれの底辺だからって見下してんじゃねえぞ!

 テメエらの為に、はした金で命をはってやったらこの扱いか。

 警備員は、つっ立って、マニュアルそらんじるだけで、楽だな、オイ!

 ぼけーっと仕事してんじゃねえよッ!」

他の警備員が集まりだす。

「もう通してやれ、戦闘と死人で気が立っているんだろう」

階級の高そうな警備員がそう言った。

「しかし、客観的な何かで身分を確認しないまま通すのは……」

「名前は確認して問題なかったんだろう?」

警備員が書類へふたたび目を通す。

「エリア・サティス……。ふたりとも、名前は確かにあります」

「なら、いい。戦闘になれば許可証なんて大事にしてられないよ」

階級の高そうな警備員がこちらを見る。

「彼、仕事熱心なものでつい完璧主義になっちゃうんです。

 どうぞお進みください、アポテネスの為にありがとうございました」

ワイロ大好き役人ばかりの国じゃなかったんだな。

心がよけいに痛む。

俺は、白い石でつくられた門をくぐってゆく。

後ろのほうが騒がしい。

「ちょっと、乱暴しないでよ、僕も傭兵なんだって!」

ノアが警備員に囲まれながらそう言った。

「ウソをつくな。ノアという名前は、依頼者のリストにはどこにもない」

…………、彼女は、亡くなった傭兵の名前を知らない。

たまたま、俺は名前を覚えていただけだ。

「おい、不法入都者だ、追えッ、捕まえろ!」

警備員の声が聞こえた。

おそるおそる、振り返る。

「アカヤ、僕のこと見捨てる気!?」

警備員たちを地面に埋めたノアが、そう叫びながら走ってきていた。

たしか、行路を抜けるまで護衛するという約束だ。

「約束は守った、なごり惜しいが、さようならだ」

俺はそそくさと走り出す。

誰かが俺の肩をつかむ。

俺は後ろを見る。

そこには、ベタ目のノアがいた。

自己強化魔法を使って追いかけてきたのか。

「一緒に牢屋へ入ろうよ、ねえ?」

空へ目を向ける。

「太陽が綺麗ですね」

「僕のこと見ろよ」

その手が強い力で俺の肩をにぎる。

「ノアさん……、ランニングがしたいです」

「うんうん、一緒に走ろうね!」

俺たちは都市の外へ向けて走りだす。

彼女からはどうやっても逃げれない、そう思えてしまう。

背中のリーシェが少し動いた気がした。

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