奴隷を助けたはずが奴隷になったのでタスケテください!

金丸@一般ユーザー

14ー1 砂漠の行路③

日焼けと脱水症状に耐えながら砂漠を進む。

体感で数時間は歩いたころ。

遠くに、野営所が見えた。

また密漁者たちか?

20代前半くらいの女性がそこにいる。

彼女は、ショッピングにでも行くような服を着ている。

「……、密漁者にしては違和感がある」

ノアが目をすぼめる。

「密漁者に雇われた傭兵ようへいとは、思えない」

魔石を腰に巻いたローブから取り出す。

「水をゆずってもらえるだろうか」

野営所へたどりつく。

日焼けで全身が痛い。

さきほどの女性へ声をかける。

「すみません、水をゆずってもらえませんか」

「え、水? いやああああ、変態いいいいいいい!」

由緒ゆいしょあるローマスタイルが侮辱ぶじょくを受けた。

ノアが、俺の前に立つ。

「彼は戦闘で服を失っただけです、失礼でしょ」

「……、そう。水は補給係のリッグに尋ねてください」

補給係、組織的な構成だ。

「この野営所は、どういった目的の?」

「行路をふさいでいる魔物の討伐。

 私たちは政府から正式に依頼を受けた部隊」

俺は、お礼を言ってリッグを探そうとした。

彼女がリーシェを見るなり青ざめる。

「治療するからおろして」

そして、診察を行う。

「熱中症と軽い栄養失調? 衰弱すいじゃくが見られる」

「リーシェちゃん、なにか薬を飲まされたらしいんだ」

「何のために?」

ノアが視線を外しながら指でほほをかく。

「さあ、そこまでは分かりかねるよ。

 ただ、逃げられないように薬を飲まされたって聞いた」

女性はショルダーバッグからいくつかの薬品を取り出す。

「対処療法はしておくけど、アポテネスについたら医者へ行ってね」

「アポテネスはもうない、吹き飛んだ」

「どーして、すぐにウソだと分かることを言う」

「何かの爆発が起きて、街は残ってない。だから、空身で砂漠を越えてる」

「もしかして、今朝の大地震はそのせいかな。

 大陸中央側、変態からすると出口の方には、まだアポテネスがある」

俺たちは、指名手配されているだろうな。

彼女は、冷却ジェルシートのようなものをリーシェにはる。

そして、こちらに手を差し出す。

「薬品代、4009ルド。四千ちょうどでいい」

「支払うけど、水もサービスしてもらえませんか」

「はあ? さっさと払え」

俺は魔石を渡す。

彼女は、その大きさに驚く。

「支払いに使えるものが、それしか残ってないんです」

「ふーん、おつりをもらえないと水を飲めないってワケね。

 ま、いいわ。このサイズの魔石をもらえるなら」

俺たちは野営所のテントへ入る。

眼鏡をかけている男性が、事務仕事をしていた。

「リッグさーん、お水くださいな」

「アンジェリカ、いくら傭兵だからってわがままは……。

 その人たちは誰?」

「知らない、行き倒れじゃない?

 この人たちに水を飲ませて」

「傭兵じゃないならダメダメ! これは討伐の予算で準備した水だ」

うたがいの目でアンジェリカを見る。

彼女は少しムッとしたような表情になった。

「うるさいなあ、分かってるからッ」

彼女はリッグの手を握る。

「ねえ、コレでもダメ……かなあ?」

俺には手の中を見えない。

おそらく、彼女は金を握りこませたのだろう。

リッグが、ニヤつく。

「しょうがないな。ほら、ソコの飲んじゃって」

リッグが蛇口の付いたタルを指さす。

また、使い捨てのコップを魔法で作る。

「リーシェ、水は飲めそうか?」

リーシェは一度だけ目を開くと、力なく首を縦にふる。

俺はリーシェへ水を飲ませた。

「アカヤ、ありがとう」

「ごめんな、街までもう少しかかりそうだ」

ノアへ、水を注いだコップを渡す。

「ありがとう、アカヤ」

彼女のノドが鳴る。

「あー、生きかえるぅー!」

リッグが「うるせえな」とつぶやく。

俺も水を飲む。

水はぬるいし、消毒薬の匂いと味だ。

それでも、コップが口から離れない!

ノドがスポンジのように水を吸い込んで、さらに欲しがるッ!

「うーわっ、危ないお薬を楽しんでるみたい」

引いているような表情のアンジェリカがそう言ったとき。

リッグの目が大きくなるのが見えた。

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