奴隷を助けたはずが奴隷になったのでタスケテください!
11ー1 三英雄③
屈んで、倒れたポーロを抱き寄せる。
黒い霧は、もうどこにも見当たらない。
「大丈夫ですか」
「私は……。ジェイクを討ったのですか?」
「……、討ちました」
ポーロは泣きだす。
「ごめんなさい。俺もできれば討ちたくはありませんでした」
「済んでしまったことは、もはやどうにもなりません。
あなたは、自分の主義を貫いた。あの子女の為に」
なんて後味の悪い。
泣いている彼女をそっと抱きしめる。
「恨んでもらって構いません」
「三英雄も、あとはローランドだけ……」
「烈火の竜騎兵?」
ポーロが驚く。
「ええ、よくあだ名をご存知ですね」
すぐに次の言葉が言えない。
「…………、彼はここに来る途中で討ちました。追撃部隊の長でした」
ポーロが伏し目になる。
「アポテネスも近いうちに滅びるでしょう。
これが運命というモノ……、胸へ収めるにはあまりにも大きい」
ノアが、リーシェを抱えたままこちらへ走ってきた。
「おーい、アカヤ。右見て、左見て、上も見てごらんよ」
右、ゾンビたちがわんさか。
左、黒い霧がこんもりもっこり。
上、犬の顔した黒い霧が激怒の表情で浮かんでいた。
ウソだろ、本当に赤爆がきかないのか。
上空の顔が、ジェイクの声でしゃべりだす。
「どうあがこうが、貴様らはタナトスのしもべだ」
ポーロが立ち上がった。
「禁忌の炎でさえ、彼を討つことは叶わないのですね」
「なんだ、あのジェイクってヤツは」
「彼は、聖痕の所持者にして、タナトスの玩具」
聖痕って、リーシェにもあるアザだ。
「聖痕って、どんなシロモノなんですか」
ポーロは一瞬だけ目をつぶる。
「聖痕は、神と交信することが可能な証。それを持つ者は、神を『契約』か『屈服』のどちらかをさせることで、【神そのものを使役】します。
ジェイクは、国を守るためにタナトスと契約し、その代価として、自らの体を差し出したのです」
だから、死人・ジェイク。
タナトスの霧をいくら燃やそうとも、タナトス本体がいたら意味がない。
黒い霧が一か所に集まると、犬頭の巨人の姿へ変わる。
その手には、ハルバート(斧槍)が握られていた。
「ポーロ、その聖人(聖痕の所持者をさす)を渡せば、見逃してやろう」
「拒否します。人を実験の素材にするなど見過ごせません」
リーシェを見る。
やや血色の悪い彼女は、辛そうな顔をしていた。
「そこまでして、研究功績が欲しいのか」
「小僧が知る必要などない」
ポーロが俺を見る。
「ジェイクは、聖人を研究して、契約を解除したいのです。
もう、タナトスの玩具には耐えられないのでしょう」
「契約を解除したら、肉体が戻ってくるんですか?」
ポーロは、静かに目を閉じて、首を左右に振る。
「女は他人のプライベートを無神経にしゃべる。
おまえも、しもべだッアアア!」
——プロメテウスの炎剣、それを構える。
「忌まわしい英雄よ、もう苦しむな。俺が神さえ燃やしてやる」
明けたばかりの空は、黒い霧に覆われてゆく。
黒い霧は、もうどこにも見当たらない。
「大丈夫ですか」
「私は……。ジェイクを討ったのですか?」
「……、討ちました」
ポーロは泣きだす。
「ごめんなさい。俺もできれば討ちたくはありませんでした」
「済んでしまったことは、もはやどうにもなりません。
あなたは、自分の主義を貫いた。あの子女の為に」
なんて後味の悪い。
泣いている彼女をそっと抱きしめる。
「恨んでもらって構いません」
「三英雄も、あとはローランドだけ……」
「烈火の竜騎兵?」
ポーロが驚く。
「ええ、よくあだ名をご存知ですね」
すぐに次の言葉が言えない。
「…………、彼はここに来る途中で討ちました。追撃部隊の長でした」
ポーロが伏し目になる。
「アポテネスも近いうちに滅びるでしょう。
これが運命というモノ……、胸へ収めるにはあまりにも大きい」
ノアが、リーシェを抱えたままこちらへ走ってきた。
「おーい、アカヤ。右見て、左見て、上も見てごらんよ」
右、ゾンビたちがわんさか。
左、黒い霧がこんもりもっこり。
上、犬の顔した黒い霧が激怒の表情で浮かんでいた。
ウソだろ、本当に赤爆がきかないのか。
上空の顔が、ジェイクの声でしゃべりだす。
「どうあがこうが、貴様らはタナトスのしもべだ」
ポーロが立ち上がった。
「禁忌の炎でさえ、彼を討つことは叶わないのですね」
「なんだ、あのジェイクってヤツは」
「彼は、聖痕の所持者にして、タナトスの玩具」
聖痕って、リーシェにもあるアザだ。
「聖痕って、どんなシロモノなんですか」
ポーロは一瞬だけ目をつぶる。
「聖痕は、神と交信することが可能な証。それを持つ者は、神を『契約』か『屈服』のどちらかをさせることで、【神そのものを使役】します。
ジェイクは、国を守るためにタナトスと契約し、その代価として、自らの体を差し出したのです」
だから、死人・ジェイク。
タナトスの霧をいくら燃やそうとも、タナトス本体がいたら意味がない。
黒い霧が一か所に集まると、犬頭の巨人の姿へ変わる。
その手には、ハルバート(斧槍)が握られていた。
「ポーロ、その聖人(聖痕の所持者をさす)を渡せば、見逃してやろう」
「拒否します。人を実験の素材にするなど見過ごせません」
リーシェを見る。
やや血色の悪い彼女は、辛そうな顔をしていた。
「そこまでして、研究功績が欲しいのか」
「小僧が知る必要などない」
ポーロが俺を見る。
「ジェイクは、聖人を研究して、契約を解除したいのです。
もう、タナトスの玩具には耐えられないのでしょう」
「契約を解除したら、肉体が戻ってくるんですか?」
ポーロは、静かに目を閉じて、首を左右に振る。
「女は他人のプライベートを無神経にしゃべる。
おまえも、しもべだッアアア!」
——プロメテウスの炎剣、それを構える。
「忌まわしい英雄よ、もう苦しむな。俺が神さえ燃やしてやる」
明けたばかりの空は、黒い霧に覆われてゆく。
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