奴隷を助けたはずが奴隷になったのでタスケテください!

金丸@一般ユーザー

7ー1 身体検査

太陽が沈み始める。

換金を終えて、出入管理所へ向かっていた。

桃色の女の子には、俺から離れる気配がない。

「逃げたりしないから、そっちも宿に戻ってくれ」

「そうやって、僕のことを置き去りにするつもりでしょ。

 行路を越えるまでは、絶対に離れないから」

背負っているリーシェが落ちそうになった。

彼女を背負い直すと、寝息が聞こえてくる。

「宿にまで押しかけて来るのか」

女の子はそっぽを向く。

「旅費の節約がてら、宿代をおごらせようとしてもムダだぞ」

「ケチ、魔石でたんまり稼いだクセに」

女の子は口をとがらせながらそう言った。

「砂漠を越える準備をしたら、手元にいくらも残らないさ」

「ふーん。そういえば、名前聞いてなかったね。僕はノア」

「俺はアカヤ、背中で寝てるのがリーシェ」

「アックンって呼ぼうか?」

ノアが、かるく笑いながらそう言った。

リーシェのイビキが鳴る。

「あらま、お姫様が怒ってる」

「頼むからリーシェの前で、教育上不適切な嗜好しこうをカミングアウトするなよ」

「えー、じゃあ……、アカヤにはいいんだね?」

やれやれ、春はとうに過ぎたというのに。

ほどなくして、出入管理所へたどり着いた。

受付で手続きを行う。

「特別許可証、ありがとうございました」

男はニヤニヤとしながら受け取る。

「それでは、入都にあたり、身体及び所持品の検査をしますので、こちらへお願いします」

なんで今さら検査するんだよ、意味ないだろ。

「もう都に入ったんですが」

「規則ですので、ご協力のほど、よろしくお願いします」

リーシェを女性の係員へ渡し、持ち物を全て出す。

両手を上げて身体検査を受けてゆく。

ニヤつく係員が俺のマントの内ポケットへ手を入れた。

「ん、なんだ、コレはァ?」

彼はそこから小さな梱包こんぽうを取り出す。

「旅人さん、なんですかコレは?」

「知りませんけど」

突然、彼は高圧的な口調で大声を出す。

「知らねえじゃねえよッ、オマエのポケットから出てきたんだろうが!」

リーシェの検査をしていた女性係員も、同様の梱包を掲げる。

「コッチにもありました、中身を検査します」

「ちょっと、待ってください、そんな物は知りませんって!」

「とぼけてんじゃねえぞ、自分の口でこれは何か言ってみろ」

「俺のモノじゃないです、何かの間違いだ」

さきほどの女性係員が、武装した警備部隊をつれて戻ってきた。

数人の警備員は、大きなトカゲの様なモンスターに乗って空中にいる。

「検査結果が出ました、陽性です。

 この国に持ち込みが禁止されている粉末と断定されました」

「ハイハイ、逮捕、逮捕ォ!」
「おとなしくしろ、オラァ!」
「動くんじゃねえぞ、ふたりとも現行犯ダア!」

リーシェが拘束されてしまう。

————プロメテウスの炎剣————

「茶番はそこまでにしとけよ」

炎剣を構える。

何かが地面に強くぶつかる音がした。

「アカヤ、意外とトラブルメーカだね」

ノアが、警備員のひとりを地面へ大根の様に埋めていた。

「対人は得意そうだな」

ノアが口角を引いて、手を握りしめる。

「モチ! 一騎当千だよっ」

空中にいる騎兵のひとりが、降りてくる。

「委細、思うところはあるだろうが、抵抗はやめて欲しい」

「納得する要素がどこにある」

30代ほどの男性騎兵は、リーシェへ目を動かす。

「君は、底が見えないほど強い。

 しかし、人質を取られたあげく、誰かを守りながら戦うのは苦手だろう」

「人質には、生きているから価値がある」

騎兵はかるく笑う。

「聞きかじったセリフを言うのは止めておけ。

あの子の死んだ世界で生きてゆく苦痛と、わずかな所持品のどちらが大事だ?」

俺は炎剣を消す。

「少しの間、ろうに入るだけだ。食事も出るから安心してくれ」

一方、ノアは警備員をテンポよく地面に埋めていた。

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