奴隷を助けたはずが奴隷になったのでタスケテください!

金丸@一般ユーザー

4ー3 イアペトスの砂

メイドの案内で、街外れにある木造の倉庫に着いた。

入り口では、見張りの男がふたりいた。

「あの……、もういいですよね?」

————プロメテウスの炎剣。

「もう痛いは、いあやだあ……」

赤爆の火弦を解除する。

メイドは泣きながら笑顔になりその場にへたりこむ。

「なんだおめえ、オオッ!」
「エリー、組織を裏切ったな!」

プロメテウスでふたりを刻む。

物音に気づいたのか、男たちが倉庫から出てくる。

全員、切り伏せた。

灰すら燃えてゆく。

倉庫の中に入る。

リーシェとアンナが、ナワで柱に縛られていた。

ふたりとも気絶しているようだ。

砂じんが、室内にただよう。

「まさか、裏切り者が出てしまうとはな」

砂が集まると、両足のない男が空中に現れる。

「ジルダプタさん、違うの! これには理由があって」

「いのち惜しさに、情報をもらしたのだろう」

無数の砂が倉庫を囲む。

ジルダプタは、自らの姿を2メートルほどの砂の大男へ変える。

「オイルランプが似合いそうだ」

「若者のこわとざは知らないな」

プロメテウスで切りかかる。

彼は、砂のこぼれる右手を上げる。

「死神——イアペトスの砂」

砂が炎剣にまとわりつくと、炎を吸収した。

そして、俺の手へ迫る。

肌に触れる寸前でかわした。

触れた右そでが、溶ける様にして砂に吸収されてしまう。

間髪入れずに、他の砂がやりの形で飛んでくる。

俺はそれをさけてゆく。

エリーも、わめきながら床でおどりつつそれをかわす。

「どこを見ている」

ジルダプタが、砂の槍で刺突しとつを始める。

プロメテウスの炎剣で初撃を弾く。

すぐに炎は吸収されてしまった。

砂には、残り火が見える。

その応酬おうしゅうが何度か続く。

ジルダプタは攻撃を止めて、距離を取った。

「らちがあかんな」

彼は両手首を体の正面で合わす。

足を何かに掴まれた、注意力散漫さんまんか!

顔面を崩壊させたエリーが、「たしゅけてください」と言って、俺の足をつかんでいた。

地面が一瞬で砂に変わる。

「いあやだああああああああああ!
 死にたくないのおおおおおお!」

「——イアペトスのアリ地獄」

赤爆の火弦を天井に溶接してぶら下がる。

砂槍さそうが俺たちを襲う。

また、彼自身も砂槍で仕掛けてくる。

火弦の長さを縮めて上へ移動し、それらをかわす。

メイドへ左手を伸ばす。

「ありがとう」

俺の手を握った彼女を、魔法で倉庫の外までブン投げる。

彼女は、地面に顔をこすりながら着地した。

天井をけって、魔法でとび、俺も倉庫の外へ出る。

「何かにつかまっていてくれ」

泣いていた駄メイドが、俺へ背後から強く抱き着く。

「うっとうしい」

「ここが一番安全なの!

 痛いのはもうイヤなの!」

砂たちが夜空をおおう。

やみ

その中をコウモリの様にうごめく砂たち。

やがて、月を一口で食べてしまえそうなほどの、大きな砂の顔が俺たちへ落ちてくる。

————赤爆の火皮ひひ

赤黒い火が、皮の様に伸びて急須きゅうす(お茶を入れる陶器)の形になる。

————赤爆の磁砂じさ————

青い火粉を火皮の中にたんまりと詰める。

そして、大量の赤い火粉を空中へ散布した。

砂の顔へ、それらは全て吸収される。

「正極と負極よ、引かれ合え」

赤く発光した砂たちが、急須へ吸い込まれてゆく。

「さっきの赤い粉は……、磁極か!」

砂の吸引される衝撃で、周囲の木々や小屋が吹き飛んでゆく。

「オマエは、操れる砂の量に限度がある」

「何を根拠こんきょに」

無限むげんあやつれるなら、誘拐ゆうかいしながら戦えたよなあ?」

全ての砂が急須に収まる。

突然、両足のない男が空中から落ちてきた。

「やれやれ、金策きんさくの方が手ごわいな」

泣いている駄メイドが、俺の服で涙と鼻水とヨダレと土をふいた。

「あの、ほんとうにっ、ありがとう、ございますっ」

ジルダプタが、ふところから魔石を取り出す。

「アッシュ! グレイシー!

 俺が無念を必ず晴らすッ」

黒い光が彼を包んだ。

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