奴隷を助けたはずが奴隷になったのでタスケテください!

金丸@一般ユーザー

3ー2 大衆食堂で食事をしよう

翌朝、くもひとつない晴れ。

店の片付けを手伝う条件で、アンナに朝食をおごってもらう。

テラスのある、木造の小さな大衆食堂に入った。

店内は掃除をしたばかりなのか、清潔感がある。

メニューを届けたとき、目にクマのある店長が、落ち着かない様子で俺たちを見つめる。

食堂には、俺たちのほかに誰もいない。

「私は、モーニングセットをお願いします」

「ランツツミー(卵包、オムライスに似た料理)」

「それと、モーニングセットをひとつ追加でお願いします」

店長がメモと確認を終えると、厨房へ入らずにどこかへ行ってしまう。

リーシェが魔石をポケットから取りだして、それで遊び始める。

「ウソ、もう一個持ってたの!」

「これ、そんなに価値があるのか」

「サイズで値段が変わるけど、基本的には高額で取引されてる。

 魔石は戦闘で使えば圧倒的なドーピングになるし、治療につかえば万能薬にもなる。

 まあ、副作用もあるんだけど」

「へえ、副作用?」

「薬と一緒でアレルギー。最悪、体に合わないと死んでしまう」

雨が降りだした。

店長がようやく戻ると、料理を始める。

「リーシェがよくさわってるけど大丈夫?」

アンナは頬杖ほおづえをついてリーシェを見つめる。

「へーき、へーき。体内に入らなきゃ効果はないし、誤飲ごいんしてもすぐ吐き出せば大丈夫」

ふと、床に砂がうっすらと積もっていることに気づく。

昨日の戦いの影響か?

「そういえば、このまえ。三丁目のビッツが魔石を使って魔法を習得したのよ。

そしたら、あいつくだらないことに、女にモテる魔法だ! とか言って、私に使ってみせたら、歩いてたオカマに命中して、追っかけられてやんの! そっから……

 ん……、砂?」

テーブルの上にまで、砂があった。

つまんでこすってみると、さらさらとした。

ふと、テラスの外を見ると、主婦らしき女性が洗濯ものを干していた。

「雨降りに洗濯物干したって意味ないじゃない、変なの」

別の砂にも触れると、確かに乾燥している。

「お客さん、料理できましたよ。

すみませんがお兄さん、受け取りにきてもらえますか」

店長はお盆に、ランツツミとモーニングセットをひとつ乗せていた。

俺がカウンターで受け取ったとき。

アンナの悲鳴が上がる。

リーシェとアンナが、大量の砂に包まれていた。

「助けて、アカヤ」

————プロメテウスの火矢を飛ばす。

直撃の寸前、砂が晴れると、ふたりの姿はどこにもない。

火矢が雨をつき抜けたとき。

そうしてできた「雨の穴」の先には、晴天があった。

この雨と砂は魔法か。

しかもすでに、水晶すいしょう玉の中にいる様に雨へ囚われてしまった。

店長へ目線を戻す。

彼は俺を包丁ほうちょうで刺そうとしていた。

————プロメテウスの炎剣————

包丁の突きを、その手を焼き切って防ぐ。

「ママワッ、クッソがああああ!」

店長はその場にのたうち回る。

雨はまだ止まない。

離れた場所の天井から、魔法の水がたきの様にもれてくる。

そして、短剣の形をした水がいくつもこちらへ飛ぶ。

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コメント

  • 姉川京

    読んでみましたが、とても良く出来ていて面白い作品だと思います!
    これからもお互い頑張りましょう!
    あともし宜しければ僕の作品もよろしくお願いします!

    0
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