自称『整備士』の異世界生活

九九 零

63

データが飛んだっ!?

ので、一週間…いや、二週間ほどお休みします…。

次の話数の中身が歯抜け状態になってしまい&前のデータ諸々全て無にきしてしまいました…。

本当に申し訳ありません…m(_ _)m

気合と根性でどうにか復旧を急ぎますので、暫くお待ち下さい…。

ごめんなさい…。









スライム。それは俺個人の見解としては不定形な物質を身に纏った魔法生物Xだ。
各色に合った属性を備え持ち、無限の渡る進化を遂げる超生物とも言える。

核である魔石が破壊されない限り、ほんの僅かでも体を構成する物質が残っていれば永遠と再生し続ける。スライムに目や口はなんてなく、例外を除いて基本的に音に反応して動く。

動きは鈍く、ゆっくりだ。しかし、戦闘状態に入ると素早く行動する個体もいれば、姿を隠して逃げ出す個体もいる。補足するなら、目や口を持っており好戦的なスライムも存在する。

そんなスライムを研究し始めると、まるで終わりが見えない。しかし、好奇心に突き動かされて、ついつい研究してしまう。

まっ、そんな事はさておき、俺は現在、そのスライムを使用して試作品の製作をしていた。

スライムには無限の可能性が存在し、進化する速度は他の魔物に比べて異常なほど早い。故に、この試作品を製作するにあたって一番最適だと感じた。

試作品の名前はノーネーム。略してNエヌ N(エヌ)。決して名前がないからとか、名前が思い付かなかったからノーネームなのではない。実態がないからノーネームなのだ。

使用したのはスライムの核である魔石から取り出したエーテルと、スライムの体の一部を混ぜたもの。それらをエーテル結晶で作った容れ物に入れて実験をしている。

スライムに同物質を与え続けると体が大きくなり続け、遂には勝手に分裂し、体積を減らそうとする。しかし、中には分裂せずに体内に押し留めさせる個体も存在する。
そして、その個体が得る能力は擬態。所謂、コピーだ。

取り込んだ生物の姿形を真似する能力を持つようになる。

それを利用して俺をもう一人作ろうと考えた訳だ。しかし、そこに意思や意識なんてありはしない。いや、正直に言えば、人形に意思や意識を持たせるのは至難を極める。
だから、ドッペルゲンガーなどではなく、俺の意思で動かす人形。言うなれば、アバターを作ってみた。

だけど、これまで138回試作品を作り出し、138回失敗している。
最後の大詰めで俺の血を混ぜた途端、ノーネームの実態なき体が何かに耐えきれなくなったように急激に体積を増やし始め、そして遂には風船が割れるように破裂するんだ。

今回で139回目の施行。

何が悪いのか。どうすれば正解なのか。なにをすれば最適と化すのか。試行錯誤を繰り返す。

ただ、何度も同じ事をするのもさすがに飽きてくるので、たまに息抜きや休憩を挟んだりはしている。

昨日だって1062台目のバイクの試作品を作っていたし、一昨日は冒険者として活動していた。今回も失敗したら魔物達に八つ当たりしに行く予定でいる。

そう急ぐ作業ではないし、ただ自分の手を増やしたいから。なんて単純な理由で作っているものだ。ゆっくりとやっていけばいいんだ。

なんて思いながら、事前に採取していた俺の血を一滴垂らしーー。

「………」

おっと?これは…成功か?

いつもなら血液を一滴垂らした途端に爆散するはずなのに、今回はそうならなかった。

俺の中で期待が膨らむ。

と、取り敢えず、物は試しにとノーネームに混ぜた俺の血に含まれているマナを媒介にして視界を繋げてみる。が、何も映らない。あ、それもそうか。眼球が無ければ物を見る事は出来ない。当たり前の事だ。だけど、俺は興奮の余りその当たり前の事をすっ飛ばして行動していた。

今度はまず眼球をイメージする。と、ポコンッとノーネームの体を構成する液体が泡立ち、眼球が形作られた。

良いぞ。良い感じだ。

瞼(まぶた)は必要ない。兎に角、今は目だ。視界をリンクさせて、ノーネームの見てる光景を俺が観れれば成功だ。

意識しろ。ノーネームと俺は繋がっている。謂わば、同一物。指を動かすのと同義のように、ノーネームは俺の体の一部だと捉えるんだ。

そうする事でーー見えたっ。

慣れ親しんだ汚い天井が見える。これは成功と捉えて良いはずだ!
前回と同じような配分と構築で行なっているから、どうして成功したかは正直のところ俺自身もよく分かっていないんだけど、でも、まぁ。結果良ければ全て良し。

兎に角、成功したんだ。

余りの嬉しさに、その場で小さくガッツポーズを取る。それに合わせるようなタイミングで、ノーネームも容器から触手を伸ばしてウネウネと小躍りし始めた。

「ふっ」

まるで俺の心をそのまま反映させてるかのようなその光景を見て、思わず笑ってしまう。

さて、あとは、俺の体と全く同じものを形作るだけなんだけど…ふと思った。このノーネームのマナを全て回収したらどうなるんだろうって。

回収とは、言い換えれば吸収だ。ノーネームの体を構成するエーテルと俺のマナ。それらを全て回収すれば、どうなるか。とても気になった。

だけど、今はノーネームを使って俺のアバターを完成させるのが先決だ。そんなのは後ででも出来る。

さて、まず視界はリンクできた。次は身体を作らなければならない。

今世の俺自身の姿は水面反射で映った姿しか見た事がなくてイメージし辛いので、前世の俺をイメージする。

身長180cmぐらい。体重63kg。白髪混じり焦茶色の短髪。無駄な肉一つ付いていない痩せ細った体。目付きは鋭く、口元は張り付いて剥がれない薄ら笑み。日々の仕事によって出来た傷跡だらけの汚い手。右腕には仕事の最中で負った大きな火傷跡。右脚にはバイクで転倒した際に深々と切り裂いてしまった傷跡。

イメージした通りにノーネームが身体を作り変えて行く。そして、出来上がった。

こうして見ると、前世の俺は謎の近寄り難い雰囲気が醸し出されるかなりの悪人面をしていたのだと強制的に再認識させられる。そして同時に懐かしさも込み上げてくる。

軽く俺が手を挙げれば、ノーネームも合わせて手を挙げる。

俺の意識がリンクしている証拠だ。

しかし、俺がその場で腕立てをして、ノーネームにはスクワットをさせようとしてみても上手くはいかない。思考を分離させて考えないと、上手くノーネームを動かせれない。

これには少しばかり特訓が必要だ。

でも、今はまだこのままでもいい。ノーネームは第二の俺だ。これからはメカニックとして会社のトップに立ち、冒険者として動く。

俺とメカニックは他社から見れば赤の他人として扱ってもらわなければならない。故の緊急措置だ。

自由に動かせれるようになるのは、おいおいやっていけばいいだろう。

そう思った時だった。

少し目眩がしてベッドに手を付いた。マナを使いすぎた時に起きる感覚に似ている。

でも、何かおかしい。

考えなくたって分かる。なにせ、俺はマナをほとんど消費していないんだから。
俺の中にある体内マナはほとんど減っていない。対面に立つノーネームは立ったまま微動だにしないし、大気中のマナに変化があったわけでもない。

なのに、目眩が酷くなる。

「なん、だ…これ…」

手を付いて立っている事すら辛くなってきて、ベッドを背にズルズルと床に座り込む。

ノーネームとのリンクを維持できなくなり、視界端に映るノーネームの身体が端から溶け出す。

徐々に平衡感覚を失い、自分がどこを見ているのか分からなくなってきた。そして、俺はーー意識を手放した。

…意識を手放す寸前に見えたノーネームは、どこか笑っているように見えたのは…目眩の所為か…?


○○○


コンコンと扉をノックする音が鳴り、返事を返さずに放っておくとドアノブが回されて扉が開けられた。

「失礼します、エル様。……あれ?いない…?裏の倉庫かな?」

首を傾げて思い付いた事を呟きながら部屋から出て行くハクァーラ。

パタンッと扉が閉められ、立ち去って行く足音が聞こえてくる。

「……行ったか」

今、この状態を誰かに見られる訳にはいかない。だから俺は隠れて気配を隠していた。

「はぁ…」

思わず溜息が溢れる。

自分の右手を視界に収めると、指先がドロリと溶け、溶けて液体と化したものが床にシミを作る。だけど、手に視線を戻せば指先は元に戻っている。

どういう状況かと問われれば、返答に困る。

身体が安定しないと言えば良いのか。それとも、今の身体を維持できていないと言えば良いのか。もしくは、体調が悪いと言えば良いのか…。

目を覚ましたのは、少し前。作業が完了したのが真夜中であり、今は朝。その間に見つかっていないと言う事は、一晩寝て過ごしたと捉えれる。それは良い。
問題なのは、この後だ。どうやら俺は…ノーネームと融合してしまったようだ。

経緯や原因は不明。兎に角、俺はノーネームと融合し、ノーネームの能力を全て得てしまった。

元の身体に戻るのは容易い。だけど、それを維持できない。歩く事も出来なければ、声を出す事すら出来ない。
何かを考えた途端、身体は形を保てなくなって崩壊し不定形な水溜りと化す。

取り敢えず、不定形な形のまま、俺の着ていた服をベッドの下に必死に押し込んだ後、机の上に雑多に置かれた紙とペンを床に落とし、ブザイクな字で書き置きを残す。

『僅か、旅、出る』

と。


○○○


家を出てから数日が経過した。俺は村の近くの森で、どうしてこうなったのか…と、日夜考えている。

原因が分からなければ、解決法を見つけられないからだ。

周囲から見れば、今の俺は好戦的なスライムと同じ形をしているだろう。周りの音が聞こえず、匂いすら感じられない。だけど、目は見えるから、這いずるように地面を移動して安全地帯に成り得る場所を転々と移動し続けている。

今この状態で魔物に襲われるのは非常に不味い。なにせ、今は攻撃や防御が全く出来ない状況だからだ。腕がなく、足もなければ、物を扱う手すら存在しない。俺に残されたのは攻撃手段は魔法が使える事だけだ。

身体は一時的に作れるとは言え、作った途端に崩れてしまう。しかも、時間が経つにつれて身体を維持するのが苦に感じるようになってきている。

今や、元の身体に戻す事すら困難だ。

ズルズルと身体を引き摺って安全地帯認定した木陰へと入り、もう何度目か分からないほど繰り返している事をする。

体の中へと意識を集中させる。

何度調べても俺の体内マナに変化はなく、おかしな点は見当たらない。
どうしてこうなったのか、と考えても答えは一向に出てこなくて困り果ててしまう。

今日も今日とて、元の身体に戻そうと頑張ってみる。だけど…もう、腕を一本作るだけで限界みたいだ。

分からない。分からなさすぎる。

俺が作った物だとは言え、全く予見していなかった事態だ。予想なんてしていなければ、対応策なんて建ててもいない。

困った。本当に困った…。


○○○


「それで、僕の元に来たの?」

触手を伸ばして縦に頷くように動かす。

もう元の身体の一部すら戻せなくなってしまって、人に頼るしかなかった。
だけど、母ちゃんだと俺をスライムだと思って倒しそうだし、父ちゃんも同じだ。

ハクァーラは…おそらく話せば分かってはくれると思うけれど、声が出せない時点で会話が可能だとは思えない。

だから、コイツに頼った。俺よりもこの世界の事について知識量が豊富で、元日本人で、人生経験も豊富そうなーー桐乃絵に。

意思の疎通は文字だ。身体を変形させて、日本語で文字を書く。それしか出来ない。

「って言われても、僕は専門家じゃないから詳しい事までは分からないよ?」

それでも構わない。兎に角今は元の身体に戻れればそれで良いから。

ジックリと俺を観察する桐乃絵。横から見て、上から見て、正面から見て「うーん…」と難しそうな顔をして声を上げる。

「そうだね…。これは、どう説明すればいいんだろう…?えーっとね…君の中にある魂が、何か歪な形をした魂と合わさってるって言えばいいのかな?なんて言うか…混ざり合って、よく分からない事になってるね」

よく分からないって…。

「たぶん、以前、僕がエル君に飲ませた聖水が原因だと思う。前にも話したと思うけど、あれは使用者の魂をこの世界に適応させるようにするものなんだ」

アレか…。やっぱり、あんな胡散臭い物を飲んだのが間違いだったようだ。

元の身体に戻ったら絶対に桐乃絵に一発キツイのをお見舞いしてやる。

「でも、それがどう言う訳か外部から何かの影響を受けたみたいで変質してしまってるね。見た所…スライムかな?それも、沢山。もしかしてだけど、スライムの魔石を食べたりした?って、さすがにそんな事はしないよね。魔石は魔物の体内から取り出すと凄く硬くなるし、そんなの普通は食べようとはいないよね」

冗談めかしたように「ハハッ」と笑う桐乃絵。だけど、俺は笑えなかった。

心当たりがありすぎるんだ。

ノーネームが完成した時の事を思い返してみると、桐乃絵が述べた事に似たような事をしている。

ノーネームに使用した材料は何か。それはスライムの身体の一部とスライムの魔石の内部に含まれたエーテル液だ。
エーテル液の内部にはスライムのマナが残っていた。そこに俺は自分のマナで上書きして使用した。

それでイケると。大丈夫だと思っていたから。

ノーネームと俺を接続するにはマナで繋ぐ必要があった。勿論、接続には俺のマナを使用する。ノーネームを操作するのも俺自身で、俺は意識下でノーネームを自分の体の一部だと捉えていた。そうしなければノーネームを操作できないから。

だけど、それが間違いだったんだ。

接続し、自分の体と認識する。それは、マナを循環させるという事。要するに、食べたと言うよりも、無意識にスライムのマナを取り込み、オマケに桐乃絵の言う所の魂までも一緒に取り込んでしまったと言う訳だ。

そう考えると…こうなってしまったのは桐乃絵の所為でも、スライムの所為でもなく、全て自業自得…か…。

「どうしたの?」

思考に没頭していて動かなかった俺を心配してくれる桐乃絵の声が上から降ってきた。

気不味くて、桐乃絵の顔を直視できない。プルプルと無い顔を振るって感情を誤魔化す。

思考を切り替えよう。そもそもの原因が俺自身にあり、俺が引き起こした問題だ。
そして、どうしてこうなったかも理解した。

それなら話は簡単だ。

桐乃絵に『待て』と伝えて、自身の内側に意識を向ける。何を探すか。そんなのは決まっている。俺をこの体に変えた原因と、それに連なる原因であるスライムの魂だ。

それらを認知するには、マナに頼ってばかりじゃいけない。より深い深淵を覗かなければならない。

一度心を鎮めて考えてみよう。魂とは一体なんなのかを…。

……。

………。

…………。

うん。分からない。どれだけ探しても魂のような物は見当たらなかった。

だけど、代案は思い付いた。

体を構築する物質を変換してやれば良い。今の現状は、体を構築する物質が溶け出して形を成していない状態。故に、体を再構築してやれば良いと思い至った。

俺はそこまで人体に詳しいわけではないけれど、そこはマナの力に頼るしかない。
マナは思った事や念じた事を叶えてくれる不思議物質だ。それに、知識が足りなければ、不足分をマナが肩代わりしてくれる。

知恵がなくとも、知識がなくとも、全てに可能性を生み出してくれるマナに感謝の念を抱く。

そうと決まれば早速実行だ。

体の構造は理解しているつもりだ。内臓の位置から役割まである程度把握している。そして、血管は全身を巡り巡って心臓に帰る。

ああ、理解しているとも。

あとは適当にちょちょいとやってやればーー。

「え、うそ。なにそれっ。ちょっ!そんな事をしたら君の魂が…あ!ああっ!ちょっと!何して!エル君!ダメ!ダメだよっ!不味いって!ああっ!!」

ーー出来た。

「ふむ」

「えぇ…」

満足の行く出来だ。桐乃絵が驚きと困惑を混ぜ合わせたような器用な顔をしているが、関係ない。

兎に角、元に戻れた。

数歩歩き回り、跳ねてみて、ついでにバク宙。問題はなさそうだ。

「無茶しないでよ…」

「そうか?」

無茶をした覚えはない。強いて言うなら、身体を構成している最中に魂のような存在を確認できたぐらいだ。

何かが崩壊していた。俺の中の何かはソレは崩壊してはいけないと喚いていた。だから、俺はそれを近くにあったその何かで補填してやった。おそらく、その何かは魂だったんだろう。

「君の魂が壊れるかと思ってハラハラしたんだよ?」

しかし、腑に落ちない点もある。俺の魂が崩壊しかけていたのを、他の魂で補ったのならば、今この思考をしている俺は俺なのか…?

そんな事を考え始めると、途端に手先からドロドロと体が溶け始めた。

「ねぇ、聞いて…って、ちょっとエル君!身体!身体が!」

どうやらこの手の思考はダメなようだ。そして同時に答えにも至った。俺は俺であって俺ではない。

「へっ!?戻った!?も、もうっ!驚かさないでよっ!」

要するに、俺の魂はツギハギだらけで不完全だと言う事だ。

そうすると…魂とは身体を構成する一つの物質であって、この体を維持しようとするのが魂という事になる。では、俺が補填に使った魂は…スライムか?だとすると、納得が行く。

「それにしても…」

ふと、俺を注視する桐乃絵が目の端に入って気になった。
そう言えば、さっきから何か騒いでたな。考え事をしていて何も聞いていなかった。出来れば、もう一度言って欲しいところだ。

「そのステータスは少し不味いかもしれないね。僕以外の誰かに見られたら、最悪、討伐されるかもしれないよ?」

ステータス…?ああ、能力値のことか。

「どうなっている?」

「どうって…自覚がないんだね」

そう言って呆れたように苦笑いを浮かべる桐乃絵。

「種族名がキメラになってる。あっ、キメラって言うのは魔物同士を混ぜ合わせた複合生物の事だよ。複合生物って…分かるかな?」

「ああ」

知っている。
複合。それは二つ以上のものを合わせて一つに纏めた言葉だ。生物は言わずもがな。
その二つを繋げれば、二つ以上の生物を混ぜ合わせた生命体と言う事だ。

…え?マジ?

「魂を無理矢理繋ぎ合わせるなんて無謀にも程があるよ。魂が砕け散ったら、死ぬよりも悲惨な事になるんだよ?僕はこれでも長く生きてるんだけど、君みたいな事をした人は見たことないよ。ほんと…」

やれやれと首をすくめる桐乃絵。

どうやら俺はこの世界で誰も試していない事を行った第一人者になれたようだ。
ちょっと嬉しい反面、今更になって失敗していたらどうなっていたかと考えて不安に苛まれる。

「取り敢えず、これを身に着けておくと良いよ」

そう言ってチェーンタイプのブレスレットを渡された。見た目こそは普通だけど、不思議なブレスレットだ。チェーンの一つ一つに魔法を押し込んでいるかのように見える。

「ステータス偽装の魔法が付与されているから、それで隠せる筈だよ。使い方はそれを握り締めて、自分の変えたいステータスをイメージすれば出来るから」

……なるほど。使い方と構造を理解した。

チェーンの一つ一つに含まれた魔法は、一つでは意味がなく、全てが繋がってようやく形になる。でも、それではまだ未完成だ。
そこに思念を載せて自身のマナを結合させてやると、ようやく完成となる。

体と魔道具。それが合わさってこその完成形。これはまた面白い発想だ。

要するに…こうすれば動く筈だ。

「魔道具の遠隔操作って…もう何でもアリだね…」

どこに驚く要素があったのか理解できない。遠隔操作したのではなく、ただマナで操作しただけだぞ?

「まぁ…そうだね。うん。こんな事で驚いてたらキリがないよね。えーっと、なんだっけ…。あ、そうそう。ステータスだね。見る限り、今の状態で大丈夫だと思うよ」

……ん?設定した覚えはないぞ?まだ起動しただけだ。

「あと、まだ予備はあるけど極力壊さないでね?僕じゃ作れないし、数にも限りがあるからさ。出来れば、身体強化とかも控えて欲しいかな?君の魔力は異常なほど強力だからね」

「ああ。分かった」

俺のマナは強力なのか…。ところで、どの部分が強力なんだ?濃度か?量か?圧縮率か?それとも、他にもまだ何かあるのか…?

……まぁいい。

「色々と助かった。礼を言う」

「ううん。別にいいよ。君と僕の仲でしょ?」

それは…どんな仲なんだ?

「さってと。エル君の問題も解決したし…」

俺に背を向けてからググッと背伸びをすると、クルッと首だけを動かして振り返り言った。

「お茶にしない?」

「ああ」

問題も解決したし帰ろうとしてたけど、一時保留。

お茶か。大歓迎だ。





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