自称『整備士』の異世界生活

九九 零

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遅れましたが、誤字報告ありがとうございます!








「うっ…うぅん…ん…あれ…?ここは…どこだ…?」

ハリスが目を覚ましたのは1時間後だった。

どうやら寝ている間に怒りで熱くなった頭も冷えて…っと言うより、怒りを忘れている様子。

「起きたか」

「エル…か?俺、ここで何してたんだ?なんだか、顎がすげぇ痛いんだが…?」

「変な所で寝るからだ」

「そうか。そうだよな…」

誤魔化しておこうと思った言葉をいとも簡単に信じてしまった。ちょっと予想外で、どう反応したら良いのか…。

「あっ!そうだ!俺さ、さっき変な夢を見たんだよ!なんか、こう…あれ?どんな夢だったっけ?なんか、すげぇ腹の立つ夢だった気がするだけどな…?」

「そうか」

「っにしても、顎痛ぇな。寝違えたか?」

いや、俺が蹴った。とは言わないでおく。

ハリスの様子はなんの問題もなさそうなので、俺はさっさと一人で次の階層の様子を見に行く事にした。


●●●


夢を見た。それは、小さくも心温かい人達が住まう町が舞台だった。

貧しいながらも人々は幸せそうな笑みを浮かべて、彼等は余所者にでも優しく手を差し伸べてくれていた。

だが、唐突にその幸せは失われた。日に日に忽然と姿を消す町人。捜索願が出されるが、捜索を出た人達は戻って来ない。町人達に不安が募るが、日が経つにつれて知人。隣人。友人。恋人。親兄弟家族。いつのまにか消えてゆく。

日に日に町人達の顔から活気が失われ、不安や心配に苛まれ始める。それを見ているのが辛かった。

俺も隣の女の子が帰ってきてないと聞いていて心配に思っていた。その次の日、俺の家族が一斉に姿を消した。いや、俺の家族だけじゃない。隣の女の子の両親も、向かいに住んでるいつも優しいお爺さんとお婆さんも、居なくなった。

俺は探した。日が暮れて、また登って、また暮れて、また登って。何日経ったかも分からなくなっても探し続けた。

そして、ようやく見つけた時はーー皆、死んでいた。死んでいるのに、動いていた。その瞬間、俺の頭の中が真っ白に染まった。

家族を見つけたと言って喜びながら走ってゆく子供。が、その家族に悲鳴をあげながら食べられる。

嗤い声が聞こえる。この声に聞き覚えがある。視線を歩く死体達の奥へと向けると、高笑いをあげる町長がいた。
その手には、俺の隣の家に住んでいた女の子の生首が握られていた。

町長は女の子の顔をウットリと眺めてから大きな口を開けて齧り付く。

歩く死体達も同様に、手当たり次第に町人達を捕まえては食べ始める。

夕焼けに染まる町は、真っ赤に染まりーー地獄だった。


●●●


顎を痛そうに摩るハリスは、歩き去るエルの背中を不思議そうな顔をして眺めていた。

なんで俺を心配してたんだ?と、考えながら。そうしていると、ふと隣から声を掛けられた。

「ハリス。だ、大丈夫?」

「おう?」

「さっき、なんか凄く怒ってたから…その…」

「俺、怒ってたのか?」

「お、覚えてないの…?」

大きく頷くハリス。さっきまで顔を真っ赤にして、拳が傷付く事も恐れずに暴言を吐きながら暴れていた面影なんてどこにもない。

「そ、そうなんだ。それなら…良かった」

きっと、エルさんがなんとかしてくれたんだろう。と、考えてホッと息を吐くサーファ。

エルは窮地に現れるようなヒーローのように考えるサーファにとって、顎に強烈な膝蹴りを打ち込んだだけのエルをかなり美化したように映していた。

「っと、なんだ、これ?」

立ち上がろうとして地面に手を着くと、手になにかが当たる感覚。手に取ってみれば一冊の本だった。

辞書かと思ってしまうほど分厚い本。何かの皮で作られた表紙に題名はなく、別段変わった点もない。
あるとすれば、高価で珍しい本がこんな所にあるのが不思議に思えた。

「本?」

「本だな」

二人して不思議そうな顔をして、ハリスはページを開いてみる。が、白紙だ。どれだけめくっても白紙で、最後の表紙裏のページに一言。

文字が書かれていた。

だが、二人は文字を読めない。二人の頭の上に先程よりも大きな疑問符が浮かぶ。

その後、この中で文字の読めるクロエに本を渡して文字を読んでもらい、この場にいる全員の頭の上に疑問符が湧いたのだった。


●●●


今回でダンジョンの階層を数えると、丁度十階層目。これまでの事を考え直すに、五階層毎で出現する魔物が変化し、五階層目はボス部屋兼休憩所がある。

そう考えると…ここから先もおそらくは五階層目にボス部屋があって、魔物も変化する。と、推測できるな。

「グルルル…」

十階層目から出現するのは狼型の魔物と今しがた判明した。
目の前にいるのは三匹。その内、二匹は飛び掛かって来たから蹴飛ばしたら動かなくなった。

おそらく死んだと考えられる。

最後の一匹はと言うとーー。

「キャウンッ!キャウンッ!」

踵を返し、泣き声をあげながら逃げて行った。

事前調査も終えた事だし、逃げた狼の追撃はせずに見送り、他の気配も全部無視してさっさと上の休憩所へと戻る事にする。


○○○


十階層目の休憩所と化したボス部屋に戻ると、そこで待つ四人が難しい顔をしながら本を読んでいた。

「あっ!丁度よかったわ!エル!これなんだけど、なんだか分かる?」

見せられたのは、先程まで四人が真剣に見つめていた本だった。

動物の皮を使った本なんて珍しい。ページを開けば…何も書かれていない。ペラペラとめくって、これで終わりかと思いながら最後のページを開くと、予想外な事に何か書かれていた。

でも、何か書かれているのか分からない。文字の勉強はしているけれど、さっぱり読めない。

「また間に合わなかった。だって。どう言う意味だと思う?」

「………」

"また"って事は、今回が初めてじゃないって事だ。"間に合わなかった"と言うのは約束か何かに遅れたと予測できる。

で、だから?どうしたって言うんだ?

「知らん」

謎解きなんぞに興味はない。さっさと次に行くぞ。そろそろ食料が心許なくなってきてるんだ。

踵を返して次の階層へ行ける階段のある場所へ向かおうとすると、背後から小さくクロエの声が聞こえた。

「相変わらず素っ気ないわね」

わざわざ相手するのも面倒でスルーした。


○○○


あれから二週間ぐらい。
現状、かなりピンチな状況に陥っていた。

まず、このダンジョンはどこまで続いているのか。既に50階層は来ている。なのに、まだ最下層には辿り着かない。さすがの俺もそろそろ不安になってきた。

ちなみに言うと、5階層でボス部屋。10階層でボス部屋だったのに、次は20階層でボス部屋。30階層でボス部屋。その次は50階層でボス部屋になっていた。おそらく、次は70階層目でボス部屋だ。

戦闘にサーファも加わり、ハリスも戦闘技術と力を付けてきた。アリアンナなんて戦う度に強くなっていき、クロエの助太刀なんて必要がなくなってしまうほどだった。

が、それでも、そんな呑気にダンジョン攻略なんてやってられない。

その理由は、食糧。まだ誰にも言ってないんだけど、正直ヤバイ。もう底を尽きかけている。
水ならまだまだあるけど、食糧がない。

コッソリ買い出しに行こうにも、まさかの転移魔法が何かに阻まれて使えなかったのも問題だ。何度も何度も色んな方法を試してみたけれど、外に出る事は出来なかった。

こうなると、かなりマズイ。いざとなったら転移で逃げれば良いと思って歓楽的に考えていたあの時の俺をぶん殴りたくなる。

「今よっ!アリア!」

クロエが敵の足を魔法で止めて叫ぶと、アリアンナが高く跳び上がりーー。

「分かってます!ハアアアッ!!」

ーー敵の脳天を貫いた。遅れて、ズシィィィンッと地面が揺れる。

「やったわね!」

「はい!やりました!」

「うおっしゃあぁぁっ!勝ったぁああっ!」

「や、やりましたっ!」

激戦の末に倒したボス。オークエンペラー。勝利を喜び合う四人を遠目に眺めながら、俺は今後の事を考える。

どうする。どうすればいい。なにが最善で、どう行動すれば最適になる。

焦っていないと言えば嘘になる。正直、背中の冷や汗が止まらない。

「やりました!やりましたよ!エルさん!」

「あ、ああ」

オークエンペラー。と、その取り巻きのオークジェネラルやオーク達を全て倒したアリアンナ達は大喜びだ。

オークとは豚が二足歩行しているような姿をした魔物で、オークジェネラルはその二倍の巨躯のデカブツ。オークエンペラーは頭に冠が載った普通のオークに似た存在のようだ。

オーク以外は初見になるけれど、俺の個人的な意見から言わせてもらうと、全て同じように見える。

「良くやったな」

でも、一応労っておく。

俺のワガママでアリアンナ達に戦わせてるわけだし、労りの心を持ってアリアンナの頭を撫でる。

「えへへ〜」

褒められ慣れてないのか、照れてるのを隠そうともしない笑みを見せるアリアンナ。

っにしても、本当にアリアンナの成長速度は驚くほど速いな。今はまだ俺の足元にも及ばないけれど、ハリスとタイマンすれば間違いなく勝利を収めれる力と技術を持ってるはずだ。

撫でながらそんな事を考えていると、ハッとしたアリアンナは慌てて早口でまくし立ててきた。

「あっ!そ、その、ドロップ品を回収してきますっ!」

そう言うなり、急ぎ足でサーファを連れて魔物を倒した後に残るドロップ品を回収しに向かった。

ついさっき倒したばかりのオークエンペラーの死体はまだ残ってるから、きっと初めに倒した奴から順に集めるんだろう。

アリアンナとサーファの遠ざかる背中を座って眺めていると、ふと視界に影が射した。

「ねぇ、あの子…」

あぁ、クロエか。突然どうしたんだ?

「……アンタ、もしかして、何も不思議に思ってないわけ?」

「?」

不思議?このダンジョンの事なら不思議だと思っているけど、アリアンナは関係ないよな。

どう言う事?

「はぁ…。鈍感なのか、あの事にも気付かないほどバカなのか…。良い?あの子の成長速度は異常よ。普通にレベルが上がっただけだったとしても短期間であんなに強くならないわ」

普通に物覚えが良いだけだろ。

「ここまで言っても分からないの?あの子を鑑定したら称号に"勇者の卵"ってあったのよ。これで分かるでしょ?」

いや全く。

「はぁ…」

なんでダメな奴を見るような感じの溜息ばっかり吐くんだよ。

「勇者の卵って事は、将来は勇者になるってことよ。ステータスの上がり方も異常だし…もしかしなくても、あのステータスだったらハリスに余裕で勝てるわね」

「ステータス?」

「ステータスはステータスよ。『能力値』って言えば分かるでしょ?」

………あ。

日本語を途中で挟むなよ。ちょっと言葉の意味を考えてしまったじゃないか。

「レベル15前後でステータスが軒並み100越えは異常よ。ハリスはレベル30で一番高いステータスで50ぐらいなのよ?」

数値にすると、うん。分かりやすいな。

要するに、ハリスの半分もレベルが足りてないのに、ハリスの二倍以上のステータスを持ってるって事だよな。

初めからそう言ってくれたら分かりやすかったのに。

……ん?え、じゃあ、俺のステータスも見てもらったら、俺がどれだけ強くなってるか分かるのか?え、すげぇ気になる。

「俺はどうだ?」

「前に言ったでしょ。アンタは見れないのよ」

………。

「どうしてアンタが落ち込むのよ。まぁいいわ。今はアンタに懐いてるみたいだから良いとは思うけど、あの調子でレベルが上がる毎にステータスが上がるのならいつか絶対に抜かれるわ。それで、あの子の敵にでもなれば最悪の結果になるわ」

忠告か。でも、心配はない。俺はそこまで予測はして、対策も打ってある。

「問題ない」

そう、アリアンナに関してはなにも問題はない。

いざとなれば、彼女の体内に残したままの俺のマナで殺してしまえばいいだけの話なんだからな。

ちなみに言っておくけれど、クロエにも同じ事をしてるからな?

「はぁ…アンタに話した私がバカだったわ。兎に角、忠告はしたからね」

「ああ」

「ホントに分かってるのか…」

そう言いながら離れて行くクロエ。と、入れ替わりになるようにハリスがテンション高めで駆けてきた。

「エル!なぁ!エル!ちょっとこれ見てくれよ!」

今度はなんだ?

ハリスが持ってきたのは、オークジェネラルが使っていたハルバードと呼ばれる槍と斧を合体させたような武器。

俺の元へ来るなり、踵を返して誰もいない方向に向かってハルバードを振るってみせた。すると、地面に刃が刺さった途端、前方方向へと向かって炎の柱が立った。
横から見れば壁にしか見えないような豪炎が50mにも渡って天高く燃え上がり、数秒ほどで霧散する。

「な!?な!?凄いだろ!?」

「ああ」

確かに凄い。なにが凄いって、ハリスはマナを全く消費せず、武器の持つマナと周囲のマナを混ぜ合わせて魔法を発現させたのが凄い。

調子に乗ってハルバードを振り回すハリス。それに伴い、ハルバードの刃が通った軌跡を辿るように炎が吐き出され、前方へと放射される。

ところが、どこかのタイミングでクロエの元まで炎が届いてしまったようで、怒ったクロエの手によって粛清。ついでに言うと、ハルバードは氷漬けにされてしまった。

折角の研究材料が…。

「ああ…俺のエクスカリバーが…」

名前付けてたんかよ。しかも、名前負けしてるし。

エクスカリバーと言えば、アーサー王が持っていたとされる勝利を約束する剣だ。このハルバードと似ても似つかない。

さて。こんなバカは放っておいて、今の内に食材でも調達するか。

ダンジョンの魔物は時間が経つとダンジョンに吸収されて消える。だから、その前に回収しておこう。


○○○


50階層目から70階層目は洞窟ではなく、街中の路地をイメージした風景だった。そこで出現するのは魔物ではなく、機械人形。謂わば、ロボット。

見事なぐらい精巧な作りで、一見すれば人と見間違うほど。それこそ、主にアリアンナやハリスが勘違いしてそのロボットに話し掛けに行くぐらい。
他にも、犬や猫。また、鳥などの動物型のロボットもいて、かなり楽しいロボットアトラクションになっていた。

勿論、ダンジョンに居るという事は出現するロボット達も敵であり、俺達を見るなり見境なく襲い掛かってくる。
見た目こそは人間のような姿形で当初は戸惑っていたアリアンナ達だったけど、一体倒してしまえばどうって事はない。

ただ、ハリス達には荷が重かったようで、クロエが本気を出してようやく一体倒せる、と言った具合だ。
二体同時や三体同時に現れた際には、クロエが二体を受け持ち、一体をハリス達で受け持つ形になっていた。

ちなみに言っておくけれど、その間、俺はただ暇潰しして遊んでたわけじゃない。ちゃんと後方の安全地帯でロボットを解体して弱点を調べてた。

クロエが倒した人型のロボットを詳しく解体して調べてみると、中身は人と同じようにイメージされた構造になっていて、それでいて無駄の一つもない。それこそ、完成されたロボットとでも言えよう代物。

研究材料として幾つか持ち帰る事にした。

そんなこんなで、ボス部屋のボスは俺が丁寧に傷を付けないように倒して、一件落着。

「って!おかしいでしょ!?私達の戦闘を観てたわよねっ!?私苦戦してたよねっ!?ねぇっ!?おかしいでしょ!こんな風に一撃で倒せるのなら、初めっからアンタが戦えば良かったじゃないのよっ!!」

うん、怒られた。

いや、でもさ、一つだけ言い訳をさせて欲しい。一撃で倒せたのは事前に多数のロボットを解体して仕組みを理解して弱点を知ったからだ。
それに、そもそも俺とクロエとは鍛える点が違う。クロエは魔法主体に鍛えてるのに対して、俺は肉体が主体になっているんだ。

って、これだと二つか。

「ねぇ!?聴いてるの!?」

「ああ」

半分ほど聞いてなかった。
えーっと…ついさっきの件で俺が戦ったら一瞬で終わったのに、どうしてこれまで手を出さなかったか、だったよな?

そんなの簡単だ。貴重な研究材料を出来るだけ無傷で手に入れたかったからだ。いや、それはボス戦での話か。クロエが聴いてるのはきっと、ここまでの戦闘についてだろう。

どうして…か。

「ほら!やっぱり聴いてないっ!」

いや半分は聴いてたぞ。

「弱点を調べていた」

話すよりも実物を見せた方が早いだろう。そう思って、先程回収したボスロボットを取り出す。

重装甲を着込んだ人型の誰かに似せたような雰囲気を受けるロボット。人工知能もあるのか、自身で最適な行動を思考して動いていた優れた作品だ。

見事としか言いようがない。

独学だから。なんて言い訳を抜きにしても、これは途轍もなく凄い代物だ。内部構成など俺なんかじゃ到底作れそうにない。

だけど面白い発見もある。ちょちょいと軽く解体してみれば、それは露出される。

「ここが弱点だ」

まず、首にある伝達用繊維の数々とマナ配管。ロボット達に食事は不要であるため、首の内部は全て配管や繊維で埋め尽くされている。弱点は首裏に隠されている全身の神経や筋肉に繋がる繊維だ。
この接続を切ってしまえば、ただの動かない思考だけをするロボットになる。

他に弱点に成り得る箇所は、胸部。おおよそ、人間の心臓がある位置に存在するエーテル。これは人の手を加えられ一部だけ結晶化させられていて、それを護るように外殻に硬質な鉄のような物質を使用されている。俺が普段使っているエーテル缶の強化版のようなものだ。

「ここも弱点になる。だが、勧めはしない」

ここからも配管が伸びているが、これは切ってはいけない。内部にエーテルの原液が流れているため、もし配管を切断しようものなら、たちまちマナ爆発が起きてロボット本体が一つの爆弾と化す。だけど、確実に破壊が目的であれば最大の弱点に成り得るだろう。

見事としか言いようのない構造。無駄の一つもなく、明らかに戦闘向きではない。

そう。戦闘向きじゃないんだ。これはまるで、人に似せた存在。謂わば、何者かが人肌を欲して作り上げたかのような感じがする。

「弱点って…もしかして、ここに来るまで残骸を集めてたのって、それを調べるため…?」

「ああ」

それ以外になにがあるって言うんだ。

お前らが呑気に休憩したり食事したり寝たりしてる間を利用して、俺はロボットの内部構造を調べに調べ尽くした。

お陰で今はかなり空腹だ。

「ふ、ふんっ!それならそうと早く言ってよねっ!」

さっきまでの怒りはどこに行ったのか。自分の間違いに気が付いたクロエは恥ずかしさに頬を赤らめてソッポを向き、足早に歩き去ってしまった。

そんなクロエは放っておき、ボスロボットの内部構造をより詳しく調べる。

このボスロボットも、ボス部屋に辿り着くまでに出会ったロボット達も構造はほとんど変わらない。違う点は、武装しているか、していないかだ。

人工皮膚。体温。呼吸。心拍。瞳の動きや顔の動き。全身の筋肉に至るまで。人間に似せて作られた代物で、かと思えば、人よりも何倍も頑丈で魔法に対する抵抗も持つ皮下組織…要するに、脂肪。

その脂肪はエーテルから漏れ出したマナを蓄える機能を持ち、内外から与えられたマナを外部に漏らさず体内に張り巡らされた血管を模して造られた管を通って心臓部へと帰す役割を持っている。
簡単に言ってしまえば、ロボットの皮下組織はマナを吸収する。ロボットの体内で発生するマナも、敵から与えられる魔法攻撃も、このダンジョン内部に立ち込める濃厚なマナも、全て吸収する。

素晴らしい省エネ設計だ。

特に傷を負った部分からしか吸収しない点が凄い。皮下組織が露見した箇所から与えられたマナは吸収するが、その他は皮膚が吸収を阻害してマナを吸収し過ぎないようにしている。
しかも、最大容量を超えたマナは欠損部分の再生に回しているときた。

調べれば調べるほど眼を見張るような発見ばかりあって、なかなか楽しく、時間も忘れて没頭してしまった。







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コメント

  • トラ

    更新お疲れ様です!
    誤字報告です
    捜索願が出されるが、捜索を出た人達は戻ってこない
       ⬇️
    捜索願が出されるが、捜索に出た人達は戻ってこない

    次も楽しみにしてます!

    1
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