自称『整備士』の異世界生活
41
ふぅ…。と、軽い溜息を吐いて席に着く男。
見た目的な特徴は、体は細く、顎にちょび髭があるのと、アリアンナと同じような綺麗な金色の髪を持っている所ぐらいだな。
「君の名前はエルと言ったね。古代エルフ語で別れの挨拶か…。随分と変わった名だ。アリアンナから話は聞いている」
「ああ」
話って何のことだ?
「なんでも、馬車を整備所まで持って行かずに、この場で整備できるのだとか。それは本当か?」
「ああ」
その話か。
そうだな。馬車ぐらいなら余裕だ。
直すだけならノコギリとトンカチさえあれば出来るだろう。
まぁ、壊れ具合にもよるけどな。
「それはすぐにでも出来るのか?」
「ああ」
出来ない事もない。やろうと思えば人は何だって出来るもんだ。
「………」
オッサンに見つめられても嬉しくもなんともない。っと言うか、ちょっと恥ずかしいからやめてほしい。
「はぁ…」
っと思ってたら、今度は溜息。
何なんだ?
まぁいいか。
「お代わり」
「はい」
執事が試作品の冷蔵庫からティーポットを出して、コップに注いでくれる。
それを一口。口の中に含めて、風味を愉しみながら飲み干す。
温かい紅茶も悪くないけど、やっぱ冷えた紅茶も美味いなっ。
「君はっ…はぁ…」
何やら心の中で葛藤でも覚えてるのか、オッサンが何か言い掛けて、またもや溜息を吐いた。
なにがしたいのか、サッパリ理解できない。
「ああ、確かに君の才能は認めよう。そこの冷ゾー庫とやらも、聞けば肉を長期間保存できるそうだな。それに加え、簡易スクロールや新たな魔道具を次々と開発したと聞く。確かに素晴らしい才能だ。だがな…お前に私の娘はやらんぞ!」
「………ん?」
え?待って。本当になんの話?
なんで突然そこでオッサンの娘が出てくるの?
「レイエル様は、アリアンナ様の父上でございます」
俺が混乱していると、執事が耳打ちして混乱の原因を解決する一言をくれた。
なるほど。目の前のオッサンはアリアンナの父親か。って事は、この屋敷の主人って事で、執事達の雇い主か。
で、どうしてここでアリアンナが出てくるの?
今の話にアリアンナは関係なくないか?
わけがわからん。
静寂に包まれた部屋に、コトリと。コップを机に置いた音が響く。
紅茶を飲み干してしまったので、俺が置いた。
まぁ、そんな事はどうでもいい。
アリアンナが出てくる話も、レイエルのオッサンが何か勘違いしてるだけだろう。
だから、そんなどうでもいい話は放っておいて、そろそろ本題に入ってもらいたい。いや、入らせてもらおう。
「馬車を見せろ」
「………」
急かすつもりで立ち上がりながらそう言うと、レイエルのオッサンが口を半開きにしてアホ面を晒した。
頬を一発引っ叩きたくなる顔だ。しないけど。
っと。馬車を見る前に一つ忘れ物をしていた。
振り返り、執事と目を合わせる。
「それ、やる」
試作品の冷蔵庫はもう要らないから、欲しがっていた執事にくれてやる。
あとは処分するにしろ、使うにしろ、別の何かに使うかは執事次第だ。
「い、良いのですか!?」
「ああ」
構造は覚えている。あとは細かい点の修正だけだ。暇な時にでも設計図でも描いて、考えれば良いだろう。
「ゴホンッ。申し訳ございません。少々取り乱してしまいました。ありがたい申し出なのですが、この様な高価な代物を戴くわけには…」
「そうか」
なら、また異空間倉庫で永久保管決定だな。
いや、そろそろ異空間倉庫を整理しなきゃならないって思ってた所だった。……少し勿体無い気もするけど、仕方ない。捨てるか。
取り敢えず、俺は魔法が使えない設定だから異空間倉庫の存在は秘密にしてるし、今はここに置かせておいてもらって後で回収するのが良いか。
「なるほど。アリアンナの言っていた事はこう言う事なのか…」
ふと背後からレイエルのオッサンの酷く疲れた様な溜息交じりの声が聞こえ、気になって振り返ってみればレイエルのオッサンが重い腰を持ち上げて立ち上がっていた。
「付いて来い」
「ああ」
ようやく馬車を見せてくれる気になってくれたようだ。
○○○
「これが件の馬車だ。半年前に買ったばかりなんだけど、数回使っただけで車輪が動かなくなってしまったんだ。聞いた話によると最新型らしいが、本当にできるのか?って、聴いてない…」
レイエルの話を聞き流しながらパパッと車体を確認してみると、原因はすぐに分かった。
右側後輪のシャフト部に石が挟まっていただけだ。
この馬車は板バネ…リーフサスペンションが採用されている為か、左右の車輪を一本の棒で繋ぐ車軸懸架式を採用している。
車輪間を繋ぐシャフトは剥き出しだしで、それを車体に連結させるよう留めておく為のU字型の支えに石が挟まっていたのだ。
故障の原因は石だが、元を辿れば構造が悪い。
馬車が動けば当然シャフトは回転するもので、シャフトは馬車の生命線と言っても過言ではない。
なのに、シャフトを保護するような筒のような物もなければ、板バネは常にシャフトに激突してる状態だし、U字型の支え内の隙間はかなり広く、おそらく段差などで跳ねて接触しただろう傷跡があちこちに見受けられる。
このまま石を取り除いた所で、少し走れば壊れてしまいそうなほどシャフトはボロボロになってしまっている。おそらく、じきに折れるだろう。
なんて不良品だ。
っと、これを造った奴の知能の低さに頭を抑えたくなる。
取り敢えず、石を回収して報告しておく。
「原因はこれだ。挟まっていた」
「本当か?後で確認するぞ?」
「ああ」
確認したければ幾らでもすればいい。
だが、その前に残りの報告もさせてもらう。
「あと、シャフトの寿命が近い。床板の釘が何本か抜けている。板バネの枚数が左右で違う。フレーム部が折れかけてーー」
「待て待て!そんなに一度に言われても私は専門家じゃないんだ!判るはずがないだろ?」
うぅむ…。
要するに、車両に関して何の知識もない客に対しての扱いをしろと。そう言う事なんだな。
うん、無理だ。
「作り直す。許可くれ」
「修理じゃないのか?」
「ああ。作り直す」
「…………」
断言してやると、レイエルがジッと俺の目を見つめてきた。
野郎に見つめられたって嬉しくない。…って、さっきも同じ事を思ったな。
「作り直してどうなる?」
「良くなる」
「良くなる、か…。期待しても良いのか?」
「ああ」
「そうか。それなら任せよう。もしそれが私の満足するものだったら相応の額を支払う事を約束する。だが、そうでなければ…分かっているな?」
「ああ」
分からん。けど、今よりはずっと良くなるのは間違いない。
乗り心地がどうなるかは知らないが、安全面。整備性。故障のしにくさは保証出来るようになるだろう。
「ここにセバスを呼んでおく。終わったらセバスに伝えろ」
「ああ」
なら、セバスとやらが来る前にさっさと必要な部品を創り出しておくか。
○○○
レイエルが立ち去り、十数分後に執事が紅茶の入ったティーポットとコップを持ってやってきた。
どうやらセバスってのはこの執事の事らしい。
で、今はセバスが持ってきてくれた紅茶を部品達を眺めながら堪能中だ。
必要な部品はセバスが来るまでに全部創ったと思うけれど、こうして一つ一つ確認しているんだ。
側から見ればサボってるようにしか見えないと思うけどな。
ザッと部品達を説明すると、今回使用するのはアルミ合金とアルミとスチールと鋼を少し。
本音を言えばカーボンを使用したい所だけど、残念ながら創れない。
馬車を牽く原動力が馬と言う事を考慮して、俺に出来る限界の軽量化を図るつもりだ。
イメージとしては、まず床板を二重底にする。そうする事で車体側の強度が上昇。
木製のフレームをアルミ合金に変更。板バネは左右で硬さを調整してから、板バネを纏めておく箇所を鋼に変更。剥き出しのシャフトには筒を与えて保護する。その際、その筒は板バネの鋼部に接合。
シャフトには芯に鋼を使い、外枠を木製のままにする。そして、シャフトの両端を加工して車輪の中心にピッタリとハマるようにする。
そして、最後はシャフトを車輪と連結させてっと。あ、あと、回転を補助するためにベアリングも必要だな。
ベアリングが必要って事は、粘度のある液体も…。いや、いっそのことドラムブレーキを採用してみるか…?だが、ブレーキの材質はまだ実験段階で実用化には遠く及ばない。……一応候補には入れておこう。
よし、これで完璧だな。
さて、始めるか。
●●●
エル。……エル、か。
その名前は嫌ってほど聞かされている。
二月前に"神の祝福"を受けて帰ってきたアリアンナが上機嫌に口にしていた名前だ。
古代エルフ語で『さようなら』や『またな』と言う意味を持った別れの挨拶。
奇抜な名前である反面、今や無視できない名前でもある。
王家の剣であるベルモンド家と冒険者ギルドの後ろ盾を持ち、簡易スクロールを生み出した鬼才児だと貴族達の間で密かに噂になっている人物だ。
その人物が珍しい黒髪黒目の少年だともな。
件のエルたる人物に実際に会ってみれば、ああ。確かに鬼才児だと納得した。
エルの名を娘から聴かされた日からずっと、エルたる人物はおこがましくも私の娘を誑かそうとしているのだと思って警戒していたが、それはとんだ勘違いだったようだ。
なにせ、あのエルを名乗る少年はアリアンナの名を出しても何の反応も返さなかったのだから。
それどころか、貴族である私に対して『早く馬車を見せろ』ときた。
これには怒りや嫉妬など軽く通り越して、もう呆れしか出てこなかった。
この時の私はさも滑稽な顔をしていただろう。
だが、そんな遣り取りで彼の本質を知る事ができた。余りにも単純で、大胆で、分かりやすい人間性を。
そう。それは…。
「自由、だな…」
窓から見えるエル少年の後ろ姿。馬車置き場の前で、地面に木の板を敷いてそこに座り込み、のんびりとセバスの淹れた紅茶を飲んでいる。
まるで馬車の修理なんてする気がないかのような態度だ。
だが、口出しする気にはならない。いや。彼について考えていたらキリがなさすぎるんだ。あらゆる面で常識が通じず、彼について考えていると持病の頭痛が酷くなってしまいそうな気がする。
ふと目に入った彼の側に山積みにされた金属の塊。
いつ。どうやって。どうしたら、あれほどの量の鉄の塊をものの数分で用意出来るのか…ああ、もう考えたくもない。
彼から視線を外して廊下の先を見やると、先程までの私と同じような形でアリアンナが開け放たれた窓からエル少年を熱のこもった瞳で見つめていた。
どうして私の娘があのような変わった少年に惚れてしまったのか…。
ああ、頭が痛い…。
●●●
「完成だ」
作業時間12h。夜通しの作業で、俺の満足する馬車が出来上がった。
考えていた物よりも上手く出来たと自画自賛したくなる。
当初の予定では、前後のシャフトにカバー付けたり、剛性を強くしたり、板バネの反発力を左右で合わせるだけのつもりだった。
が、想像以上の重量になりそうだったので、色々と変更してみた。
まず、前輪を独立懸架式にしてみた。
独立懸架式って言うのは、車輪が左右で別個に動く車輪の事だ。
タイミング良く執事のセバスが席を外したので、その間に色々と資材を作り変えた。
まず、シャフトを全て鋼鉄に変更。板バネも木製からバネ用の鋼へと変更。まだ実験段階の物だから壊れる可能性はあるが、まぁ、これが試作品一号機と言う事で。
後輪には思い付きと即興で作ってみたマナで動く動力を車体下部に取り付けてみて、それによってシャフトを回転。シャフトと繋がる車輪が回転する仕組みだ。
名称は…補助走行装置だな。うん。
ただ、これはあくまでも馬一頭で引くと仮定して考えた物であって、走行補助の役割しかない。これで自走させる事は出来なくもないが、余りしない方がいい。
補助走行装置内部の歯車(ギア)が壊れる可能性があるからな。
そうして完成したのが試作品一号機である、この馬車だ。これを造っている最中に色々な閃きがあって俺は満足している。
これで愛車作りにまた一歩近づけたと思ってるからな。
「エル様。質問をしても構いませんでしょうか?」
「ああ」
「では…。ゴホンッ。これは馬車なのですか?」
「ああ」
どこからどう見たって馬車だろ?
「私には戦車のようにしか見えないのですが…ハッ!失言失礼致しました」
「ああ」
チャリオット…戦車か…。
この世界にも戦車があるんだな。魔法世界の戦車か…気になるな。是非とも一度見てみたい。
「次の質問ですが、これは何頭で牽く馬車でしょう?」
「一頭のつもりだ」
「たった一頭で…これを…?」
「ああ」
補助走行装置があるから問題はないはずだ。
ただ、注意点としては過度な使用と稼働させ続けるのはダメだ。…ってのは、後で依頼主であるレイエルに直接言った方がいいか。
「最後に、質問ではないのですが、エル様。完成したのでしたら、そろそろ食事を摂ってお休みになられて下さい。一睡もせずに働き詰めではありませんか」
「………ああ」
そう言えば、そうだったな。
「レイエル様には私からご説明しておきます。こちらへどうぞ。まずは食堂へ案内します」
「ああ」
うん、今頃になって腹が減ってきたな。
飯食ったら、少し体を動かしてから寝るか。
っと。その前に、セバスが俺の代わりに報告してくれるんだったら、使い方と注意点だけ話しておかなきゃな。
●●●
執務室で仕事をしていると、セバスから完成したと報告が上がった。
だが、まだ昨日の今日だ。整備場に出しても、そんなに早く終わった事なんて一度もない。
だと言うのに…。
「あ、有り得ない…」
ああ。私は遂に頭痛だけでなく、目まで悪くなってしまったようだ。
「旦那様。エル様はお休みになられましたので、私が代わりに説明を受けています。説明していきますので、気になる点があれば仰って下さい」
「あ、ああ…。これ、…馬車、なのか?」
「はい。エル様は馬車と仰ってました。それに、一頭牽きだとも」
「これが一頭牽きだとっ!?どう考えても無理があるだろう!?」
鋼鉄の車輪。鋼鉄の車体。全て鋼鉄に包まれた馬車だ。
こんな鉄の塊をたった一頭で牽くだと?私を謀るのも大概に…。
「お父様。こちらにいらしたのですね。先程…あら?これは…?あ、エルさんがお造りになったのですね」
「あ、ああ。アリアンナか。そうだ。エル少年に修理を頼んだものだ。しかし、まさかこんな物になるとは…」
思ってもいなかった。
見た目は立派だが、見るからに重量物だ。こんな物をどうしろと言うんだ。
「ふふっ。お父様はまだエルさんの凄さを分かっていないようですね」
「む?」
私だって、あの少年が普通の子供ではない事ぐらい知っているつもりだ。
これ程の物を一晩で作り上げてしまう才覚。手際の良さ。確かに鬼才と呼ばれるだけはある。
だが、それだけだ。
造った後の事は何も考えていないではないか。馬車は動いてこそ意味がある。だと言うのに、動かない物を造られても困るだけだ。
「セバスは分かりましたよね?」
「はい。しかとこの目、この耳でお伺いさせて頂きました。アリアンナ様の仰る通り素晴らしいお人でございましたよ」
だと言うのに、二人はエル少年を肯定している。否定しているのは私だけだ。
私には二人がどうしてそこまでエル少年に惹かれるのか理解できない。
「旦那様。エル様を疑う前にこちらをご覧になってください」
そう言ってセバスが私を案内した先は、馬車の室内だった。
「………」
私は室内を見せられて、開いた口が塞がらなくなった。
この馬車は本来、来賓を迎えに行かせる為のものだった。だから、元は趣向を凝らしたものだった。
だと言うのに…これはどう言う事だっ!?
なにもっ!ないっ!
椅子も!窓も!
何もないではないかっ!!
「旦那様。お怒りはこちらをご覧になってからでも遅くありませんよ」
セバスがそう言いながら壁際にあった凹みを横へとスライドさせると、外の景色が一望できる窓へと一変した。
次に、元々座席があった場所の壁にある取っ手を引っ張ると、脚が生え、座席が壁から迫り出してきた。
その上部の壁の取っ手を引けば、物を入れておける戸棚まで出てくる。
「………」
一体、これは…。
「エル様は、こちらを木窓と呼んでおりました。そして、こちらは折畳みソファ。こちらは荷物置きだそうです」
そして、と続け。
「こちらにある隠しボタンを押すと、室内の温度を調節できるそうです」
開いた口が塞がらない。
当初抱いた怒りではなく、驚愕によって。
「ホッホッホ。この発想は眼を見張るものがありますね。ですが、驚くのはまだお早い」
そう言いつつ、今度は御者席に案内された。
「こちらを見ていて下さいませ」
セバスが足元を指し示す。
足場に隠れて見え辛いが、なにやら一部の足場が突き出しているのが確認できた。
全部で2本あるようだ。
そこを両足で踏むと、キュイィィィンッと聴いたこともない音が馬車から聞こえてきた。
「旦那様。少し動かしますので、こちらへ乗って下さいませ」
言われて、セバスの隣に乗り込む。
「では…」
セバスが右側の足場を優しく踏み込むと、ゆっくりとだが、馬車が前へと進んだ…進んだんだ。
馬も繋いでいないのに…。
「…………」
セバスが今までにないほど嬉しそうな顔をしている。
「どうでしょう?こちらがエル様がお造りになった試作品一号機と呼ばれた馬車でございます」
シサクヒンイチゴウキ…?試作品…一号機…。試作品…だと…?
「………」
ああ、私はエル少年に抱いていた勘違いを訂正しなければいけないようだ。
これで、試作品…か。
まったく…本物の天才じゃないか…。
「私は…夢でも見てるのか…?」
●●●
眠い。凄く眠い。俺は、今、物凄く眠たいんだ。
「ーーでねっ!お姉ちゃん魔法は使えないけど、この前買った魔道具のおかげで学院に通えるようになったのっ!それにそれにっ!これはまだお姉ちゃんのに秘密なんだけど、ミリアね、お姉ちゃんの入学祝いにコッソリ最近噂の魔道具を買ってあげたのっ!見て見て!」
あ、うん。
で、ミリアだっけ?君、誰?俺の知り合い…なのか…?
欠落した記憶の時の知り合い…なのか…?
うーん…。
「どうっ!?ねぇ!これ!凄いよねっ!凄いよねっ!?市場で偶然売ってたの!良いでしょ〜っ」
「ああ」
見せびらかされてもな…。
ただの魔石が嵌め込まれた指輪にしか見えない。ミリアが付けたらブカブカだ。
自動調整機能も付いてないなんて、きっと安物なんだな。
「むぅ〜。エルお兄ちゃん反応薄〜い」
「ああ」
俺はお前とは初対面みたいなもんなんだぞ?どう反応しろと?
それに付け加えるなら、今、俺は凄く眠たいんだ。
「それならさっ!これならどう?じゃじゃーんっ!エルお兄ちゃんが今日来るって聞いたから、買って来たのっ!」
「……あ、ああ。…?」
なんだこれ?
箒の先端か?
まるで痛んだ髪みたいな…。
「カツラって言うんだって!こう、頭に乗せて…どう?」
白髪なんて子供にはまだ早いだろうに。
しかも、ミリアの髪は綺麗な金髪で長いから、カツラが目立って浮いて見える。
「似合わない」
「グハッ…」
あ。撃沈した。
っと思ったら、すぐに立ち直った。
「別に良いもんっ!どうせこれはエルお兄ちゃんに挙げるつもりだったんだからっ!はいっ!」
そうヤケクソ気味に言ってカツラを押し付けて来た。
マジで要らないんだけど。
「それじゃあ、市場に行こっ!エルお兄ちゃん!」
頼むから寝させてくれぇぇ…。
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コメント
トラ
更新お疲れ様です!
バイクとかの詳しい部品のことは正直よく分からないですが一つ一つ詳しく説明してくださっているので素人でもなんとなく分かりますし読んでて楽しいです。
今回や今までみたいに解説付きなら専門用語出てきてもなんとかなるので気にしないで楽しく書いてください
次も楽しみにしてます!