凡人勇者の異世界英雄譚Ⅱ 〜転移したら無敵になってました〜
Ep1/act.16 ヒーロー
しばらくすると、城から増援がぞろぞろと駆け寄ってきた。
しかし、手を出すこともなく俺とブロードの戦いを、ただ漠然と見入っていた。
エナ・アルフォアでさえも。
「ブロード、最後の切り札がそのナイフだったとはな。ちなみにさっきの魔法見抜いたぜ、みたいなのは大外れだ。悪いけど俺は魔法を使えない」
「そんな…魔法を使えないなんて聞いたこと…じゃあその力は…その身体はなんなんだ!」
流石のブロードも慌てずにはいられないようだ。
「俺も分かんねえ。ただ俺は、大賢者シルド・バンが育てた男だ。それだけ」
「まさか…あの大賢者の…」
「じゃあ実験3行ってみるか」
「・・・!」
さっきまでの余裕なブロードはどこかへ行ってしまったようだ。
俺はゆっくりと目を閉じて、ただ棒立ちにブロードと向かい合った。
「何してるんだ…ナメてるのか!」
ブロードが我を忘れて襲い掛かってくる。
目で追いつけないなら、
「捕まえたぞ」
勘だけで捉えられればそれでいい。
その瞬間、城からの増援から「うおお!」と声が漏れていた。
そのまま、ブロードの身体が壊れない程度、気を失う程度に掴んだ手でそのままのスピードで受け流して地面に叩きつけた。
ブロードは泡を吹いて気絶した。
「流石です!師匠!」
リオンが駆け寄ってきた。
「最後、何故捕まえられたんですか?」
「なんか、最近勘が強くなってる気がしてな。リオンに会った時も、尾行だって気付かないくらい察知してたろ?さっきも残像はいないって肌で分かったんだ。なんだろこれ、野生並みの勘ってやつかな」
リオンは夢中でメモを書いていた。
熱心なことで。
俺は城の連中にブロードを引き渡し、エナに会釈をして帰ることにした。
「それにしてもブロード・テイラーか。もっと違う出会い方ならまた違ったのかな。なんか勝ってもスッキリしねえや」
「あんな罪人の言うことです。真に受けたらダメですよ」
いつにも無くリオンが忠告してきた。
「真には受けねえけど。そういやリオンってなんでS級魔法騎士になったんだ?」
「……笑わないでくださいよ」
小っ恥ずかしそうに俯きながら呟いた。
「子供の頃、とあるライダー番組が好きだったんです。それに憧れて、ヒーローになりたいと思ったのが始まりでした」
俺は、いつも冷静でクールなリオンの口からそんな言葉が聞けると思わず、つい聞き入ってしまった。
「へー。かっけえな」
「いや、そんなことありませんよ」
「じゃあ俺もヒーローになろうかな」
「師匠ならなれますよ」
そう言って、俺はリオンを先に帰して再び城へと向かった。
なんだか、夢が出来た子供のようにはしゃいでいる自分がいた気がした。
「ブロード・テイラー。貴様が今日から住むのはここの檻だ。懲役30年。処刑を免れただけよかったと思うんだな」
ブロードは看守に簡単なお辞儀をして牢屋へと入った。
「それから」
看守は言いそびれたことを思い出したかのように話し始めた。
「シルド・ギルと言う奴から言伝だ。国王に頼んでお前の村へ多額の寄付金を要請したから心配すんな。だとよ。お前が処刑にならなかったのも彼のお陰だ。しっかりと罪を償えよ」
ブロードは少し俯いてニヤッと笑った。
「シルド・ギルくん。君の方が『いい奴』じゃないか。これからきっと、すんごいヒーローになるんだろうね」
しかし、手を出すこともなく俺とブロードの戦いを、ただ漠然と見入っていた。
エナ・アルフォアでさえも。
「ブロード、最後の切り札がそのナイフだったとはな。ちなみにさっきの魔法見抜いたぜ、みたいなのは大外れだ。悪いけど俺は魔法を使えない」
「そんな…魔法を使えないなんて聞いたこと…じゃあその力は…その身体はなんなんだ!」
流石のブロードも慌てずにはいられないようだ。
「俺も分かんねえ。ただ俺は、大賢者シルド・バンが育てた男だ。それだけ」
「まさか…あの大賢者の…」
「じゃあ実験3行ってみるか」
「・・・!」
さっきまでの余裕なブロードはどこかへ行ってしまったようだ。
俺はゆっくりと目を閉じて、ただ棒立ちにブロードと向かい合った。
「何してるんだ…ナメてるのか!」
ブロードが我を忘れて襲い掛かってくる。
目で追いつけないなら、
「捕まえたぞ」
勘だけで捉えられればそれでいい。
その瞬間、城からの増援から「うおお!」と声が漏れていた。
そのまま、ブロードの身体が壊れない程度、気を失う程度に掴んだ手でそのままのスピードで受け流して地面に叩きつけた。
ブロードは泡を吹いて気絶した。
「流石です!師匠!」
リオンが駆け寄ってきた。
「最後、何故捕まえられたんですか?」
「なんか、最近勘が強くなってる気がしてな。リオンに会った時も、尾行だって気付かないくらい察知してたろ?さっきも残像はいないって肌で分かったんだ。なんだろこれ、野生並みの勘ってやつかな」
リオンは夢中でメモを書いていた。
熱心なことで。
俺は城の連中にブロードを引き渡し、エナに会釈をして帰ることにした。
「それにしてもブロード・テイラーか。もっと違う出会い方ならまた違ったのかな。なんか勝ってもスッキリしねえや」
「あんな罪人の言うことです。真に受けたらダメですよ」
いつにも無くリオンが忠告してきた。
「真には受けねえけど。そういやリオンってなんでS級魔法騎士になったんだ?」
「……笑わないでくださいよ」
小っ恥ずかしそうに俯きながら呟いた。
「子供の頃、とあるライダー番組が好きだったんです。それに憧れて、ヒーローになりたいと思ったのが始まりでした」
俺は、いつも冷静でクールなリオンの口からそんな言葉が聞けると思わず、つい聞き入ってしまった。
「へー。かっけえな」
「いや、そんなことありませんよ」
「じゃあ俺もヒーローになろうかな」
「師匠ならなれますよ」
そう言って、俺はリオンを先に帰して再び城へと向かった。
なんだか、夢が出来た子供のようにはしゃいでいる自分がいた気がした。
「ブロード・テイラー。貴様が今日から住むのはここの檻だ。懲役30年。処刑を免れただけよかったと思うんだな」
ブロードは看守に簡単なお辞儀をして牢屋へと入った。
「それから」
看守は言いそびれたことを思い出したかのように話し始めた。
「シルド・ギルと言う奴から言伝だ。国王に頼んでお前の村へ多額の寄付金を要請したから心配すんな。だとよ。お前が処刑にならなかったのも彼のお陰だ。しっかりと罪を償えよ」
ブロードは少し俯いてニヤッと笑った。
「シルド・ギルくん。君の方が『いい奴』じゃないか。これからきっと、すんごいヒーローになるんだろうね」
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