主役の勇者が最終的に死ぬ運命なんて嫌だ
#14 暁の城と裏切り④
「よかった…………。」
一気に肩の荷が下りた。
ヤナが無事で、傷つかなくて
本当に良かった………。
「ハルト、わしは、魔法を使えてたかの。わしの魔法は、役に立ったかの…」
俺は何度も頷いた。
ナシュリーも、フェラルフも頷いていた。
俺たちは、それ以上何も言わず、王のもとへ向かった。
「おぉ!勇者よ、裏切り者を倒すとはなかなかの腕前だ。さて、約束の褒美をやろう」
手招きされて、向かった先は町の裏門の前だった。
「さぁ、これが魔法のコート。暑いかもしれぬが、これを着れば魔法の攻撃を受けづらくなる。こっちは魔法剣スロージュン。勇者が手にしている魔法剣の短剣と似たような感じだ」
俺はコートを羽織って、剣を左側にしまった。右側についてる短剣より長く、なにより凄くカッコいい。
「あと、300Gだ。」
俺の手に、コインが30枚じゃらじゃら音を立てて乗っかった。
小さい小袋にコインを入れて、城を出た。
「ヤナ、少し食べ物を買っていかないか?」
「…あぁ、そうじゃな」
ヤナは優しく微笑んだ。
「ハルト、私たちアッチの店を見てクル」
「じゃ、また後でなハルト様ぁっ!」
ナシュリーとフェラルフは楽しそうに走っていった。
「なぁヤナ。俺、ちゃんと勇者っぽくできてるか?」
俺は歩きながら行った。
本当のゲームの主人公はきっと、こんなこと言わないだろうなと思いながら。
「何を言っておるのじゃ?ハルトはとっくに正真正銘の勇者じゃよ」
「……まぁそう言うと思ったよ」
ヤナは首を傾げたまま、ゆっくりゆっくり歩き続けた。
「まだ俺になにも話してくれないのか?」
「な、なんの話をしておるんじゃ。ハルト…?」
俺は大きく息を吸って、吐いた。
そしてヤナの目線に合わせるために、その場にしゃがんだ。
「知ってるんだろ?俺が現実世界からゲームの中に入ってしまった人間だ、って」
ヤナは口を開けたまま、じっとしていた。
もし「なんのこと?」なんて言われて、俺の単なる勘違いなら恥をかく言い方だが、この反応はなにか思うことがあるらしい。
「ヤナ。なぁヤナ聞いてる?」
「……嫌だ」
「んあ?」
「私が今その話題について口に出せば、私はこの世界から消えてしまう…。ゲームに潰されてしまうから……」
涙をぽろぽろ流しながら、微かに震えた声で話すヤナは、別人のように思えた。
いつもの声も、いつもの口調も、無くなっていた。
「ヤナ、お願いだから、話してくれよ」
「ハルトのばかぁっ!!話したら私が消えてしまうと言っただろう!?もう知らない……」
「勝手にすれば良いじゃろう」
ヤナは寂しげな背中を俺に向けて、どこかに走って行った。
わけがわからなかったが、ヤナを悲しませてしまったのは確かだ。
「あーあ。か弱いお嬢さんを泣かせるなんてなにしてらっしゃるんですかぁー?」
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