主役の勇者が最終的に死ぬ運命なんて嫌だ

花波真珠

#11 暁の城と裏切り①


俺は門番に話しかけることにした。

「あの、俺たち怪しいものじゃないんです。旅をしてきた勇者なんです」

「ゆ、勇者様でございましたかぁっ!?大変失礼致しました。お入りください」


なんだかよく分からなかったが、道を開けてもらい、城門をくぐった。

中はたくさんの店と家が並び、一番奥には立派で美しい城が建っていた。
人が多く歩いていて話し声や笑い声が飛び交う。
最初の町とは比べ物にならないくらいに賑やかだった。
 

目立つのは、人のうえに表示されているクエストマークだ。
店の上にはコインのマークが表示されてある。
最初の町には店が2、3件しかなかったが、見渡す限り20件を超えている。

「ハルト、この町でコインを集めて強力な武器や装備を手に入れんか?そろそろその古臭い服装はよくないじゃろう」

いや、そろそろっていうかだいぶ前からこの服早く着替えたいんだけど…。

勇者っていうんだったら、カッコいい鎧とか兜とかつけられたらいいのに。
でもどうせ高い値が付いてるだろ。

「ナシュリー、さっきから大丈夫か?気分が悪いなら休憩する?」
「あ、いや、大丈夫ダ…。ハルトは優しいナ」

「え、あありがとう」


人に優しいなんて言われたことがなかったから、なんだか変な感じがした。
会社では失敗続きで、上司のムカついたような顔しか見たことがなかった。

ううん…なんだか知らないが、この世界に来てから、悩まされてばかりだ。

だって、俺がいるこの世界は良くできすぎてる。ゲームっぽくない気がしてきたんだ…。


「お前たちが勇者か。」

気づかなかったが、目の前に白い長めのヒゲが生えていて、ちっちゃい王冠をつけて堂々と立つおじいさんがいた。
雰囲気的に…王様なのか……?

ヤナはピクリとも動かず、ナシュリーもフェラルフも警戒態勢になっている。


「お前たちが勇者というのは誠か。そうであれば、王の私から依頼がある」

やっぱり王様だったのか。
っていうか、今来たばっかりだったのにいきなり依頼って、なんだか忙しい王様だな。

「はい、な、なんですか?」


「私は、向こうに見える城に住んでおる。だがなぁ、困ったことに、兵士の中に裏切り者がおるようなのだ。そいつが対抗している町からのスパイだとか、色々言われてるんだがな。とにかく、そいつを見つけ出してほしい」

何故それを勇者に頼むのかは分からないが、その依頼をこなせば、高額な強い武器や防具を1つ貰えるらしい。

俺はヤナの方に視界をずらした。
ヤナは目を閉じてこくっと1回頷いた。
「ハルトが自分で決めていいよ」と言われたような気がした。

「じゃあ、引き受けます」

「本当か!?いやぁ、よかった。このままだと、町の発展に関わるからなあ」


フェラルフは、安心したのか肩をおろして、静かに息を吐いた。
ナシュリーは緊張感のある表情で、ピクリとも動かず立っている。






「チッ、勇者だとよ。どうする」
「大丈夫だろ。どうせ裏切り者は1人だと思い込んでる」

「今のうちに、城に忍び込んで大金をあっちの町に運ぼうぜ」

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