WORLD END-終焉の鐘の音-

成瀬瑛理

第5章―死と恐怖―31

 オーチスは目の前でそのことを言われると、椅子に座ったまま抗議した。しかし、ジュノーは真っ直ぐオーチスを見て答えた。

「あれは間違いなくオーチスじゃった。わしは耳はわるいが、目はそんなに悪くはないぞ。オーチス、お前は昨日は持ち場を離れてあの塔に一体何しに行ったんじゃ?」

 ジュノーがそのことを言うと、オーチスは顔を青ざめながら戦慄が走った。

「嘘だ! それは私じゃない! 私じゃない! 何故、誰も私を信じてくれないんだ……!?」

 オーチスは必死で訴えると、肩から力が抜けたように半ば放心状態になった。ケイバーは呆れた顔で黙って笑った。そして、これ以上の質問は聞いても意味がないとクロビスは判断すると隣にいたケイバーに一言命令した。彼に命令されるとケイバーは、ジュノーに持ち場に戻ってもいいと指示を出したのだった。老人の看守は用件が済むと、足早に出口へ向かって行った。そして、扉の前でうしろを振り返るとジュノーは不意に彼らに尋ねた。

「……オーチスはどうなる?」

 ジュノーが不意にそのことを尋ねた。ケイバーは隣でクロビスの顔色をチラリと伺った。彼は何も言わずに黙ったままだった。ケイバーは自分の頭を片手でかきながら、あやふやな顔で答えた。

「さあな?」 

 年老いた看守はケイバーのその言葉に何も聞き返さず「そうか」と言って部屋を出て行った。老人の看守が部屋から去って行くと、ギュータスが戻ってきた。

「おい、クロビス見つけたぜ! やっぱりコイツは黒だ、間違えねえ!」 

 ギュータスがそう言って慌ただしく部屋に戻って来ると、彼は聞き返した。

「……ほう。何処にあった?」

「ベッドの脇の隅に落ちてたぜ、それも隠すようにな!」

 彼の報告にクロビスは目を細めた。

「それはつまり、やはりコイツが黒というわけか――?」

 そう話した途端、彼は鋭い目つきをさせた。

「飛んだ茶番をしてくれたなオーチス。お前にはツクヅク呆れてしまうぞ」

 クロビスはそう言って鋭い目つきで彼を睨み付けたのだった。そこにいた全員の視線が一斉に彼に向けられた。オーチスは椅子の上で何故だと必死に訴えたのだった。それはまさに彼にとっては、悪夢のような状況だった。そんな彼に救いの手を差し伸べるものは誰もいなかった。絶望と怒りと恐怖が、彼の中を一気に襲った。それは荒波の如く押し寄せる、激しい感情だった。

「はやく紙を渡せ……!」

 クロビスはギュータスから紙切れを受け取ると、さっそく中を確認した。

「ダモクレスの岬……!? ふふっ……あはははは……! あーっはっははははっ! ついに証拠を見つけたぞ! やはりお前は黒だったか! これを目の前にしてまだ私に言い訳をする気か!? なんて浅はかで愚かな奴なんだお前は! 滑稽すぎて言葉を失うぞ!」

 クロビスはそう言い放つと大きな声で高笑いを上げたのだった。

「WORLD END-終焉の鐘の音- 」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く