告ったら魔王城に連れていかれました。

ff

異世界初バトル! - オモチャとの戦闘


バトルの場所はいつも僕が訓練をしていた、
魔王城の中庭にすると決まった。

ルールは至って簡単。
片方が戦闘不能になるか、降参したら決着。
破壊行為、命を奪うこと以外は、
なんでもしていいらしい。

審判は、魔道戦闘員長のイン・テリさんだ。
審判と観客は中庭の見える2階のテラスに居る。
2階なら安全だしね。
念の為、菜南ちゃんが結界を張っているが。

勝負の景品だが、僕が勝てば、
オモチャドラゴンは菜南ちゃんを諦め、
僕の戦闘員としての立場も認めるらしい。
対する僕は、菜南ちゃんとの別れを迫られた。

菜南ちゃんと話すと、実力的には圧倒的に
僕が勝っていることを教えられたため、
勝負は受けることにした。


-菜南ちゃんがかかっている。本気でいくか。




お互い戦闘の初期位置につく。
オモチャの戦闘スタイルは、
力任せな近距離戦闘らしい。
武器は大剣。大振りな動きが必要なので、
攻めるならその間だろう。

近距離戦になれば、僕も空間切断を安心して
使えるので、そのまま切るのもアリだろう。

[イン・テリ:用意は出来ましたか?
    範囲は中庭内の全域。
    相手の命を奪うことと、
    あらゆるものの破壊行為以外の反則はなし。
    どちらかが戦闘不能になるか、
    降参するまでは戦闘を続行します。
    反則行為、戦闘不能状態の審判は、
    私の指示に従って下さい。
    審判の私が発言した場合は、
    すぐに行動を止めるように。]

〔準備完了だ。
    さっさとぶっ飛ばさせろ。〕

「こちらも準備完了です。
    よろしくお願いします。」

[では、用意……始めっ!]

〔ぬうぅぉぉおお!
    魔王様ぁああっ!〕

オモチャが馬鹿みたいに剣を振り上げて、
高速で突進してくる。

-隙がありまくりじゃないか。

僕は自分の前に空間接続を発動し、
もう片方の接続をオモチャの足に設定した。

相手は物理特化型なので、
今回は魔法銃を選択した。
炎魔法の結晶を銃に詰め込んで銃を構え、
パァンッ!……と撃つ。
魔法の弾丸は、オモチャの足を吹き飛ばした。

機動力を失った彼は状況を飲み込めない様子で
その場にとどまる。

〔あぁ、え?
    私の……足、は……どこだ?〕

彼が後方を見ると、そこには自分の足が
血だらけで転がっているではないか。

事実上は戦闘不能状態だが、
意識ははっきりとあるので、
まだ続行されているのだろう。
それに彼はまだもがいている。

〔貴様ぁ…貴様ぁぁぁああ!
    よくも、私の足をぉ……!〕

剣を振りかぶって、片足で立ち向かってくる。

これ以上怪我けがをさせたら可哀想だ。
致命傷は与えずに戦闘不能にする方法……


そんな時、1本の野草が視界に入った。
ルナウルのお茶に入っていた葉っぱだ。
"この草は毒草で、麻痺効果があるんですが、
 しっかりと毒素を処理すれば、
 おいしいお茶っ葉になるんですよ"
いつかそう言っていたのを思い出す。

この毒素を短剣に付与して、肌を切れば……

僕は毒草を摘んで、
短剣に怪しい紫の液体を塗り付けた。

もがくオモチャの腕に短剣を突き刺す。


-15秒後くらいであろうか。
オモチャがピタリと動きを止めた。

[……?戦闘中止。
    ユウ様、何かなされましたか?]

「毒素を短剣に付与して麻痺させました。
    戦闘不能になっているはずですが?」

[戦闘不能を確認します。
    ……戦闘不能を確認しました。
    確かに麻痺がかかった状態です。
    よって、勝者!ユウ・ホンゴウ!]

まわりから拍手や口笛が飛んでくる。

「ありがとうございます!」

ニコッとみんなに笑いかける。
菜南ちゃんは戦闘が終わったと同時に、
中庭に降りてきた。

『ナイスプレー!』

こうしてクレーマーオモチャの討伐は終了した。

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