告ったら魔王城に連れていかれました。

ff

-守。


確かに私は魔王だ。
だが、人間の生活に慣れる為に力にロックをかけている。
そのため、身体能力は普通の女の子と同じくらいだ。
力を出そうと思っても出せないのだ。

その日、私は押し付けられた委員会の仕事を済ませていた。彼はというと別の委員会であったので、帰る時間がずれてしまった。

私は先に帰ることにした。
ところでこの世界の科学とやらは恐ろしい。
もう少し発展させれば、魔法なんかよりもっと強力なものになる。
その科学によって作られた乗り物がある。
自動車というものだ。
私は道の角を曲がった。その時私は暴走した自動車が自分の方に向かっていることに気づいて居なかった。
曲がった方向の道はちょうど見通しが悪く、完全なる死角だったのだ。

力を抑えていなければ避けられただろう。
しかし今の私の体は人間だ。
自分で避けるのは無理だった。

今の私が使える魔法は転移魔法だけ。
私が転移魔法に掛けておいた設定には、
"両思いに慣れる人が見つかった時に、
 相手とともに自分の世界に戻れる"
というものがある。
しかしその他にももう1つある。
"命の危険を察知した時に自動的に
 元の世界に戻される"
というものだ。

転移魔法は使用される際、
眩いほどの光を発する。
辺りが明るくなりはじめた。
きっと2つ目の条件が発動したのだろう。

-まだだ。まだ彼と時を過ごしたい。
    それなのにここで終わってしまうのか。
    何故だ。何故こうも上手くいかない。
    彼も私と一緒に居てはくれないのか。

自動車のブレーキ音が聞こえる。




気が付いたら光は止んでいた。
-ああ、戻ってきたのか。
私はゆっくりと目を開ける。
しかしそこにはひっくり返った自動車があった。
そして、私の頭を覆うようにして目の前で寝転がっていたのはあの子だった。
私の顔は彼の広い胸に押さえつけられていた。
嗅ぎなれた匂いがする。
小さい頃から変わらない柔軟剤の匂いだ。

-落ち着く。
    それなのに体がバクバクいっている。
    そうか。これが人に惚れるというものか。

-初めて誰かに守られた瞬間だった。

その後彼はムクっと起き上がって、
きょとんとしていた私を見た。
そしてこう言った。

「菜南ちゃんが無事で良かった……。
    本当に…良かった……………。」

彼の表情は興味深いものだった。
彼は、笑っていたが泣いてもいた。
彼の瞳はまっすぐに私を見つめていた。
その彼の表情に私は吸い込まれていった。

これが、私の求めるものだと悟った。

コメント

  • 某口リコンの人@さかなし

    面白かったよ~
    がんばー

    1
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