鬼をてらう

精神年齢43歳のパピコくん

he is hearty

 「くそっ、これで動けなくて、何が、何が、ヒーローだ」
鬼増の体が急に軽くなった。
「動いた」
まるで、忍者のような足運びで間一髪、助ける事が出来た。後で分かった事だが
その時の鬼増の顔は、まるで鬼のような顔だったらしい。
「ぐあぁぁぁぁ」
人を助けるのには、リスクは付きものだ。鬼増は左肩を負傷してしまった…
しばらくして救急車が到着し、おばあさん、そして、鬼増は病院に搬送され、死線をさまようのだった。
 鬼増がいる病室では、心電図の音が「ピピッ、ピピッ」と鳴り響いている。あれから3日後、鬼増はまだ眠っている。隣には鬼増のお母さん、白鬼鬼子(びゃっき おにこ)が泣きながら座っている。扉が開き、ナースは驚いた。白鬼鬼子の顔が涙でびしょ濡れだったからだ。急いで
「はい、どうぞ」
と、ティッシュを渡した。いくら、いじめに気付いてくれなかったとしても、鬼増を愛する気持ちに変わりはない。鬼子は鬼増の母なのだ。溢れ出す涙を拭きながら、鬼子は言った。
「鬼増は助かりますか」
ナースは語りかけるように答える。
「彼は助かります。怪我をした理由、聞きました。おばあさんを助けるために、道路に出たと。長年ナースやってきたので分かります。彼は心が強い。心の強さがあれば、きっと助かると思います」
鬼子は涙を拭い、泣く事を止め、希望を持つ事にした。
「そうですね。じゃあ、目をつぶって祈りましょう」
その3秒後、鬼増は起きたが、目の前にある異様な光景に「うわっ」と驚く。すると、鬼子とナースは目をあけ、泣きながら笑顔でベッドに飛び込んだ。鬼増は2人に押し潰されそうになったため、「肩が酷くなる!」と訴えた。それを聞き、2人は我に返り、鬼増の上から離れた。
「ごめんね」「ごめんなさい」
と2人は同時に言う。鬼増は答える。
「いや~俺死んだかと思ったぜ。あ、そういえば夢で、お母さんが太る夢をみたんだ。いや~あれはすごかったぜ」
それを言った途端、お母さんが恐ろしい笑みを浮かべた。鬼増は鬼子がこの顔をする時、自分がどういう事になるかを知っていた。校長のズラの件と今回の件を含めて、露骨な表現は止めようと思う、鬼増であった。


(この物語はフィクションです)

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