鬼をてらう

精神年齢43歳のパピコくん

動かない足

 はるか昔、人間は特殊能力を持っていた。彼らは内乱によって全滅し、現在は普通の人間が暮らしている。

 朝8時、主人公白鬼鬼増の自宅。中学生の鬼増は、ご飯とお味噌汁を口の中に掻き混んだ。
「カナダの研究者、、ジャック・バリーさんが大昔の人間は、特殊能力を持っていたという事を発見しました。ジャック・バリーさんによると、今の人間には、特殊能力はないが、大昔の人間は持っており、内乱により絶滅したと考えられるそうです」
そんなニュースには目もくれず、鬼増はバッグを片手に走っていった。早速、信号に引っかかる。
「くっそー、あと10分くらいか。また校長に反省文を書かされる」
少し前に、校長のズラがずれている事を本人に言ったため、30枚の用紙に反省文を書くことになった鬼増。校長に目を付けられたので、遅刻も許されない。
「理不尽だ!」と、その場で叫んだ。
ふと、道路を見ると、おばあさんがうずくまっている。
「まずい!」
鬼増はおばあさんがどういう状態なのか、すぐ分かった。案の定、車がくる。汗が滝のように流れ、地面に落ちた。地球の重力が重く感じる。心臓の鼓動がひしひしと伝わってきた。
「動かない、動きたいはずなのに」
体は無情にも重くなってゆく。
「このやろう、何で、何で動かないんだ。お母さんの巨体じゃあるまいし」
僕は、僕がなりたかったものは、そんなものなのか。
 さかのぼること、8年前。体が小さいから、という理由でクラスのみんなは、僕をいじめた。僕と仲が良かった友達も、いじめられる事を嫌って、見て見ぬふりをしていた。人は集団の中に入ると、理性が働かなくなる。故にこういう事も沢山起こるのだ。
「お前はクズなんだよ!」
と罵声を浴びせられ、とても苦しかった。先生や親にも話したが、みんな信じてくれない。いじめに立ち向かう余裕もなく、日々を苦しく過ごしていた。でもそんな時、一人だけ助けてくれる人がいた。彼は決まってこう言う。
「お前ら自分の心に聞いてみろ。どんな声が聞こえてくる。いじめをして楽しいか
その楽しいという気持ちは、お前の本能だ。人間は元来、いじめに快感を感じると、前に本で読んだ事がある。でも、その本能に抗おうとしないのか?人を傷つけて快感を感じる自分を、狂ってると思わないのか?」
と。僕は憧れた、人を助けるヒーローに。僕の人生が変わった瞬間だった。


(この物語は、フィクションです)

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