【一話完結】ショートショートショート

野灰琉花

100年生きている


健康なままで、死ぬことのない奇病。 
俺は、この奇病のおかげで、もう100年は生きている。 
奇病にかかったと宣告された20歳の外見のままで。 

だが、中身は100歳を過ぎた老人だ。 
俺の病気を診ていた医者は、何十年も前に亡くなった。 
俺の奇病を聞きつけて、研究したいという医者はいくらでもいる。 
奇病を治すというよりは、『不老不死』の研究材料として。 
そんな医者達の研究材料になっても、俺には一円の得にもならない。
 俺の身体を、いじり回されるだけ。 
ある医者が、俺や家族の遺伝子を調べたことがある。 
しかし、俺の遺伝子の中には、不老不死の遺伝子は見つからなかった。

 学生時代からの友人は、みんな亡くなっている。 
結婚して子供もいたが、妻も子供も亡くなっていて。 
孫がいるが、今は見た目だけなら俺の方が孫に見える。 

この奇病のせいで、俺は孤独になった。 
生活のために働いてお金を稼ぎ続けて、病院では身体をいじり回される。 

100億円くらいの貯金があれば、働くストレスからは解放される。 
俺の奇病からすれば、解放されるのは『短い』期間かもしれないけれど。 

終わりがなく、いつまでも続くのかと思うと死にたくなるが、死ぬことすらできない奇病。 



この奇病が売れるならば、100億円くらいになるだろうか?

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