ナーガルキャッツライフ

オンスタイン

7話 ビジネスデート

カラス男を捕まえた翌日、特に依頼もないため監視所は暇だった。そんな中リッカさんは突然、俺と二人きりで買い物に行きたいと言い出した
「嫌だと言ったら?」
「これは仕事やヨナちゃん」
そう言えば付いてくると思ってるのだろうか
「大体、なんで二人なんだ?」
そう言って俺はジジの方を見た。ソファーに腰掛けてゲームに夢中になっている
「あれを邪魔するのは可哀想やと思わへんか?」
リッカさんが顔をニターとさせて言った
「それにヨナちゃんどうせ今日はどっこも行かへんのやろ?」
確かに特に外に用事はないが…
「それともジジちゃんと離れたくないんか〜?」
「それは断じてない」
どうやらこれ以上、駄々をこねると色々と誤解されそうだ
「分かったよ。行けばいんだろ?」
そう返事するとリッカさんはとても嬉しそうな顔になった
「よっしゃ!決まりやね!」
リッカさんは立ち上がると無理やり俺の腕を引っ張って玄関へと向かった
「ジジちゃーん、ヨナちゃん借りてくわなー」
ジジはコクリと頷いた。借りるってなんだよ…
支部を出ると俺とリッカさんはデパートへ向かった

「ヨナちゃんなんか欲しいもんあるん?」
デパートに着くなりリッカさんがそう聞いてきた
そんなものはただ一つ
「自由な時間」
そう答えるとリッカさんは大笑いして言った
「ヨナちゃんそれ嫌味かいな?」
もちろんだ
すぐ、首を縦に振った

デパートに入ると、リッカさんは三階の洋服屋さんに向かった
これは「ねえー?これとこれどっちがいいかな〜?」とか聞かれるパターンではないのだろうか。もしそうなら今すぐ回れ右をして帰りたい
「安心し、服くらい自分で決めるがな」
リッカさんが俺の心情を察したかのように言った。とりあえず助かった…
洋服屋に着くとリッカさんは服を選びだした。俺は特に出番はないので後ろをついて行くことにした
途中、親子連れのナーガルを見かけた。子供が嬉しそうに服を選んでいる
そういえばジジはいつも同じ服を着ているがファッションに興味はないのだろうか?
というかあいつの服をいつも手洗いしている俺の気持ちも考えて服は毎日変えて欲しい…
そんな事を思いながらもリッカさんに付いていると服を選び終えたようだった
「ひとまず、試着やな。ヨナちゃんこっちや」
俺は頷きリッカさんと試着室へ向かった
「ごめんやけど、ちと待っといてな」
頷くとリッカさんは試着室へと入っていった
暇なのでぼーっとしていると突然、ある疑問が浮かび上がった
「そう言えばリッカさん、ナーガルって動物から人間になるとき服どうなってんだ?」
普通に考えて動物の姿では人の服は着れないので人間の姿に戻るとき服がどうなっているのかが気になった
すると、リッカさんが少し間を置いて言った
「知りたいか?」
リッカさんの言葉に妙な緊張感がして、答えにくい
「ま、まあどういう原理か気になるしな…」
そう答えた瞬間、試着室から急に腕を掴まれて強引に引きづりこまれた

中に入るとすでに着替え終わったリッカさんがいた
「どうや?似合ってるか?」
黒いシャツの上に白いパーカー、下はスカートか
「ちょっと寒そうだが、まあ似合ってるんじゃないか…?」
そう答えると、リッカさんは嬉しそうに言った
「ナーガルの服について知りたいんやな?」
「あ、ああ」
リッカさんは頷いた後、説明を始めた
「人の姿になった時に着とる服、あれは毛皮みたいなもんやな。動物になろうと脱げへん」
よく分からない原理だな…
「でも、さすがにそれ脱いだり別の服着とったりしたら人の姿になった時、脱げたまんまやけどね」
なるほど、ジジが毎日同じ服をきているのは違う服を着ると動物から人に戻ったときに脱げてしまうからか…
「試しに見してあげるわ」
そう言うと、リッカさんはウサギになりそれと同時にさっき着ていた服が脱げてしまった
「お、おい!リッカさんどうすんだよこれ!」
次、人になると間違いなくあの人は全裸になる
俺は急いで試着室から出ようとした
だが、不意に後ろから抱きつかれた
「ざんねーん、下着は着たままなんや〜」
どうやらいつの間にか人に戻っていたようだ。それはいいとして俺の背中にリッカさんの胸が押し付けられてしまっている…
「ず、随分とご都合主義なんだな…」
するとリッカさんは耳元でささやいてきた
「へ〜そんなら今からウチが裸になったろか?」
予期せぬ一言に思わずドキッとしてしまった
「い、いやー風邪ひくぜ?リッカさん…」
今にも頭が沸騰しそうだった
「ははは!ほんま可愛ええな〜ヨナちゃんは」
するとようやくリッカさんは離れてくれた
服を拾い上げリッカさんは試着室を出ようとした
「ほな、さっさとこれ買うて遊ぶでー!ヨナちゃん」
「はいはい、分かりましたよー」
反抗するのも面倒なので大人しく従った

服を買った後は、ゲーセンで遊んだりクレープを食べたりと色々した
色々としんどかったが支部でゴロゴロするよりはまだマシだったと思う

午後4時を過ぎた頃ようやく帰ろうという話になった
デパートを出るともう日が落ちかけていた
「リッカさん、今日の夕飯はどうするんだ?まさか、またインスタントか?」
さすがに2日連続でインスタントなので飽きてきた
「せやなーたまには食べに行くのもええなージジちゃんも入社したばっかりやしなー」
面倒くさがりのリッカさんがこんな事を言うとは珍しい…さぞかし機嫌がいいのだろう
しばらく歩いていると、ナーガルの子供が道端で倒れていた。いや寝ていたと言う方が正しい
当然、道行く人達はそれを避けるようにして歩いていた
「さすがにあれは邪魔だよな…」
俺は起こすために子供に駆け寄った
見たところ、女の子で歳もジジと近そうだ。猫耳がついているところを見ると猫のナーガルか
「おーい、猫娘ー起きろー」
そう声をかけると猫娘は目をぱちぱちさせながら目を覚ました
「…お兄ちゃん、人間?」
聞きなれない質問に少し戸惑ってしまった
「あ、ああ人間だ。お前こんなとこで寝てたら邪魔に…」
そう言いかけた途端、猫娘はいきなり抱きついてきた
「あはは!嬉しいなー人間で話しかけてくれたのはお兄ちゃんだけだよー!」
「ちょっ!こんなとこで抱きついたら誤解される…!」
半ば強引に猫娘を引き離す
「ふふっお兄ちゃん面白いね!」
すると、猫娘は横の横断歩道に走り出した
「また、会えるといいね!お兄ちゃん!」
猫娘はそう言い残して走り去っていった
「ナーガルにも変人はいるんだなー」
後ろで見ていたリッカさんに向かってそう言った
「ウチが変人や、言いたいんか?」
まったくその通りです
「別に…ほら早く帰んねえとジジが寂しがるかもしれねえぞ?」
まあ、おそらくそんな事はありえないが…

しばらくしてようやく支部についた
中に入りジジを確認しに行った
「寝てる…」
さすがにこんな長時間ゲームやるわけないか…
「…ヨナ?」
こちらの存在に気づいたジジが目を覚ました
「ああ、遅くなって悪かったな…それより喜べジジ夕飯は…」
そう言いかけた途端、リッカさんが勢いよく部屋に飛び込んできた
「二人とも!今日は焼肉じゃーい!」
リッカさんのあまりの上機嫌ぶりにジジが首をかしげていた
「なにかいい事でもあったの?」
「さあな、新しい服、買えたから喜んでるんじゃないか?」
なにわともあれ、今日も休日とはいえない忙しさだった…
まあでも、焼肉いけたから良しとしよう

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