ナーガルキャッツライフ

オンスタイン

6話 カラス退治

騒がしい夜が終わり、朝となった。今日からジジと一緒に仕事をする事になる
周りを見るとジジもリッカさんも気持ちよさそうに寝息をたてていた。昨日はあの後、トランプをしたりゲームをしたりと夜遅くまで起きていたため、あまり疲れがなかった
とりあえず、二人を起こそうと声をかける
「二人ともー起きろー」
かなり熟睡しているのか全く起きる気配がない
面倒くさくなってきたので最終手段を使うことにした
俺はまずジジの布団を勢いよくひっぺ剥がした
「…布団泥棒…寒いから返して…」
「もう朝だ、さっさと起きて準備しろよ」
そう言うとジジは眠そうにしながら起き上がり洗面台へと向かった
それを見送ったあとすかさずリッカさんの布団もひっぺ剥がした
するとリッカさんはだらしなくへそを出したまま寝ていた
「きゃーお巡りさーんここに布団泥棒が〜」
リッカさんも同様、眠そうにしながら洗面台へと向かった
「朝っぱらから泥棒扱いかよまったく…」
俺はため息をつきながら2人を追った

朝食を終えた後、リッカさんは俺とジジに仕事についての説明を始めた
「今回は万引きとはちゃうけど、似たようなもんや。カラスのナーガルがひったくりとかコンビニ強盗とかで暴れとるらしいわ」
するとジジが口を挟んだ
「コンビニ強盗?武器でも持ってるってこと?」
ジジの発言にうなずいたリッカさんが説明を続けた
「その通りや。今回のナーガルは刃物やら銃やら持っとる可能性が高い。二人とも今まで以上に気いつけなあかん」
リッカさんは珍しく真剣な顔で言った
「分かってるよ。死なないように努力するさ」
俺は冗談のつもりで言ったのだがリッカさんはすごく悲しい顔をしていた
「冗談だよ。あんたに俺とジジの死体処理をさせる気はない」
今度は笑ってそう答えた
するとリッカさんは安心した顔をして説明を続けた
「犯人の目撃証言が多いんはこの辺りや」
リッカさんが地図を広げて指差す
アーケードストリート周辺。ジジが万引きしたスーパーからそう遠くない場所だった
「張り込みなら早い方がいい。出るぞジジ」
ジジはうなづくと俺についてきた
支部を出ようとするとジジがリッカさんの方に振り向いた
「リッカ、帰ったらまたゲームしてもいいかしら?」
ジジがそう聞くとリッカさんは満面の笑顔で言った
「ええよ!ウチが徹底的にレクチャーしたるさかいな!」
ジジはその返事を聞くと少し微笑んで支部を出た。そして俺も続くように支部を後にした

現場に向かう途中でジジがコンビニに寄りたいと言い出した
外で待っていると伝えるとジジはコンビニに入っていった
すると、しばらくしてジジがあんパンと牛乳を抱えて出てきた
そしてジジはこちらを見たあと恥ずかしそうに歩き出した

現場のアーケードストリートに着いた俺たちはまず辺りを見回した
「正直、目の前でひったくってくれたりすれば楽なんだがなー」
そうすれば犯人探しの手間が省けるからだ。だがもちろんそんな都合よくはいかない…はずだった
「きゃー!ひったくりー!」
横を見ると黒いレインコートの男が女性のカバンをひったくっていった
「運がいいわねヨナ」
ジジがあんパンを食べながら言ってきた
「おいジジ」
「…?」
ジジがあんパンをくわえたままこちらを見た
「走れー!!」
俺はジジの手を掴んだままレインコートの男を追った
「張り込みって言ったのに話が違うわヨナ」
「その手間かけなかくて済んだんだよ!」
ジジはようやくあんパンを食べ終わると俺に牛乳の入った袋を渡してきた
「落とさないでよ」
そう言うとジジは猫になり俺の倍以上の速さで男を追いかけた
「最初からそれやってくれよ…」
ジジはあっという間に男に追いつき飛びかかるのと同時に人間に戻った
男はジジに飛びつかれそのまま倒れた
「ジジ!そいつおさえとけ!カラスになって飛ばれたりしたらおしまいだ!」
ジジはうなずくと男の両腕を背中におさえつけようとした
だが、男はジジの手を振りほどきポケットナイフを取り出した
「なっ!!」
ジジは抵抗する間もなく拘束され、首にナイフを突きつけられた
「ジジっ!」
「動くと猫の首が飛ぶぜ?人間」
駆け寄ろうとした俺は慌てて足を止めた
「へっガキが正義の味方ごっこしてんじゃねえよ…」
男はジジを拘束したまま後ろに下がろうとしていた
俺はすぐさまポケットから銃をとりだして男に向けた
「動くとあんたの命も保証しない」
そう言うと男は分かりやすく動揺した。まあこれエアーガンなんだけどな…
「ア、アホかお前...俺は猫の命握ってんだぞ!」
「まあな、そいつがただの人間なら俺だってこんなリスク侵さねえよ」
そして、俺はジジに目で合図を送った
すると、ジジは猫の姿になり男の腕からするりと抜け出した
俺は男が呆気にとられているすきに一気に距離を詰めた
「ちっ近付くなー!」
男はナイフを振りかざそうとしたが後ろから人間に戻ったジジに足を引っかけられた
俺はバランスを失いよろけた男の顔面に遠慮なく肘打ちを食らわせた
「がはっ!」
男は地面に倒れそのまま気を失った
「ヨナ、こいつは連れて帰るの?」
「いや、さすがにナイフ振りかざすやつはリッカさんでもどうにも出来ない」
俺はポケットからスマホを取り出しリッカさんに電話をかけた
「じゃあ、こいつどうするの?」
「もちろん、本部に引き渡すさ」
数コール鳴ったあと、ようやくリッカさんが電話にでた
「リッカさん、カラス捕まえたから本部に回収するよう言ってくれ」
「やっぱり刃物とか持ってたんか!?」
思わず耳からスマホを放してしまうほどの大声だった
どうやら、かなり心配してくれているらしい
「ああ、俺もジジも無傷だよ。今から支部に戻る」
そ言って俺は通話を切った
「一応、こいつ縛っとくか。ジジ、手伝ってくれ」
「ここに放置するの?」
「本当なら支部に連れ帰るが面倒くさいんでな」
俺はジジにロープを渡しカラス男の足をグルグル巻きにさせた。そして俺も男の上半身をグルグル巻きにした
「これじゃまるでミイラね」
ジジがクスリと笑って言った
「本部が回収にくるまでここに放置だからな。これくらいはしとかないとな」
そして俺とジジは支部に帰ろうと歩き始めた
「早く帰ってやろう。心配性な部長様のためにな」
そう言うとジジは笑ってうなずいた

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