日常は崩れさり少年はあの日を想う

雨月和海@アイコン描いて

前回のあらすじ。

「「こいつをぶっ飛ばすッ!!!」」

最終決戦ファイナルラウンド開始スタートオン


「ふっ!」

「イヤアアアッ!」

『ぐおっ!?やるようにナったじゃねえかっ!!』

 同時に懐に入り、両脇腹を脚で振り抜く。そしてヤギ人間のカウンターを距離をとって回避。これこそhit and away、相手のスキを突いて的確にダメージを与えていく。

『うぉらぁっ!!』

「っ!?─────おらぁ!!」

『ぐぁっ!?』

 一発喰らえば終わり。こちらがハンバーグになってしまうだろう。相手の拳を無理やり体を左に捻ることで避け、その勢いを殺さず相手の横っ面につま先で回転蹴りをかます。

「痛っ...くない!?」

「え!?マジ!?」

 鋼鉄化していたヤギ人間の皮膚は頬の部分と関節部は柔らかくなっているらしく、蹴りが勢い殺さずそのまま通る。

「これなら」

「行けるっ!!」

 2人で走り込み、息を合わせてヤギ人間の膝裏に回転蹴りを入れる。
 が、

『そこまでオレもヤワじゃねぇぇぇッ!!!』

 ヤギ人間がいきなり膝を曲げ、そのままバク宙をかます。予想とは違う動きをして思わず立ち止まる僕らのはるか頭上を越え、背後に立たれる。

「まずい、日向!!」

「っ!?─────ぐぼぇっっっ!!!???」

 振り向いた日向の腹部にヤギ人間の拳がめり込む。日向はそのままの勢いで吹き飛び、電柱を2、3本叩き折ると鉄塔を歪ませて止まった。
 日向の顔に生気はない。気を失ったどころか、生きているかすら分からない。多少丈夫な僕の体とは違い、日向は普通の女のコだ、死んでいてもおかしくはない。

『お?こんなんでシんじまうのかあ!?つまんねえぞおい!』

「こ、こんなんで...だって...!?」

 こいつは、まだ全力を出し切ってない...というのか!?ありえない。普通ならばありえない、が。
 この世の理不尽を集めたようなこいつなら...っ

「ず、随分と余裕じゃないか...っ!?」

 さあどうしようか、と考え始めた時、あることに気がついた。
 先程までのヤギ人間と今のヤギ人間。どう見ても違うところが一部ある。それは...

「赤い、瞳...!?」

 表現するなら暴走状態(バーサク)。ゲームなどではボスモンスターが死にかけの時にステータスがアップするという、最後の正念場。

「つまり、体力は残り少ない...ということ、だよな」

 軽く後ろを振り返り、倒れる日向を視界に入れる。


──────お前の分も、必ず。


『あとは、おマエだけだな...コロしてコロしツくすッ!!!』

「うるせえよ。死ぬのはてめえだヤギ野郎」

 息を整え、腰を落として構える。
 独学で編み出した、格闘術。いろんな格闘術の本とかを見て、素人なりに考えた僕の力。

「ふぅ────」

 風を感じて、動く。

『イくぞオオオオオオッ!!!』

「っくらッ!」

 雄叫びとは異なり、かなり体にひきつけてコンパクトに打ち出された拳と、空気を切り裂く手刀が交差する。
 しかし、相手は鋼鉄の皮膚。打ち負けることは必至─────っ!?

ガギンッ!!

『ぬおっ!?』

「っ!?」

 打ち合えたことに驚きを隠せない僕と、思わぬ衝撃によろけるヤギ人間。何が起きているかわからないが...これはチャンスだ。

「...おらっ!」

『っ!?うぉらぁっ!!』

 今度はたまたまなんかじゃない。しっかり打ち合う。拳と手刀がぶつかり合う。刀同士がぶつかり合うように火花を散らす。

「これほんとに徒手格闘かよっ!?」

『うらららァァァッ!!!』

 ヤギ人間の猛烈なラッシュ。腕を交差させてブロックするが、僕よりも高い身長からのラッシュは体に響く。

「あ痛たたたたたた」

『うららららららら───っ!?イテえ!?』

「...?だんだん痛くなくなってきたような...」

 体がこいつの皮膚に慣れてきたのだろうか。それはそれで嫌なのだが...しかし。これならば決められるかもしれない。

「ふっ!」

『ぬあっ!?』

 交差をラッシュ無視で解(ほど)き、ヤギ人間の腹に蹴りを入れる。ヤギ人間は解かれた衝撃と蹴りで後ろへ吹っ飛ぶ。
 そして、

「てめえは僕がぶっ飛ばす!!」

 体幹を基点に大きく引き絞った僕を仰ぐヤギ人間は叫んだ。

『ちっ...くっそがァァァァァッ!!!』

 地を蹴り、全体重を載せたつま先蹴り(トゥーキック)はヤギ人間の腹部に突き刺さり、地に穴を穿った。

「───じゃあな、ヤギ野郎。ゆっくり眠れ」

『て、めぇ...』

 呻き声を上げ、ヤギ人間は口を開かなくなる。それは、つまり僕達の勝利を意味しているわけであり、

「...あっ、日向!!」

 ボクは壁にめり込んだままだった日向を引きずり出して救急車を呼ぶのだった。

#
「...いやあ、生きてたのが不思議だよお兄ちゃん」

「全くもって同じ意見ですとも」

 特にお前腹にでっけえ青あざ出来てただろ、と言外に伝えると「ほんとになんで私生きてられたんだろうね」と苦笑していた日向は、あのあと治療室に運ばれてつい先程こちらの普通病棟に移ってきたところであった。

「てか、あのヤギ人間って日向の知り合いじゃないのか?リ...リなんとかって確か」

 「あーうん。あれは多分反逆者(リベリオン)だと思うよ。ってかあれは種類というかなんというか...まあ、頭がヤギでコンクリを食べる知り合いはいないかな」

 歌を歌う半人半魚ならいるけど...と不穏なことをこぼした日向はこちらに向き直ると、頭を下げた。

「お兄ちゃん、私を助けてくれて本当にありがとう」

「な、なんだよ改まって...妹を守るのはまあ、兄の仕事...だと思うし」

「断言しないところやっぱヘタレてるよね」

「ひでえわこの愚妹!」

 日向が笑うのを横目に、僕は改めて尋ねた。

「で、そのり...リベリオン?ってのは一体何者なんだ?間違いなく常人ではないだろう」

「まあ、そうなんだけど...」

 笑うのをやめると、日向はうーんうーん、と悩む素振りをすると、いきなり真剣な顔になってこちらを見つめてきた。

「...お兄ちゃん」

「な、なんだ?」

「ここまで来たらもう、知らなくていいよ...じゃ済まないんだけど。これから話すことは他言無用。それどころかこれを知らされる事自体がイレギュラーだと思ってほしい」

「お、おう」

 久しぶりの長文...と現実逃避を軽く始めたくなるような真剣さに気圧されながらも、僕も日向を見つめる。

「心の準備はいい?」

「...おし。どんとこいや」

日向はどんとこいという単語が面白かったのか、クスリと笑うと口を開いた。

「奴らの名は反逆者(リベリオン)。私たちとは違う、星の力を持ちし者」

「...星の、力...?」

「そして奴らは、私たち人類の───敵だよ」

 人類の敵。
 あのヤギ人間マンが。
 
「人類の...敵!?」

 瞬間、僕と日向の周りに知らない人間が現れた。白いスーツ、白基調のゴスロリなどなど。パッと見6人くらいいるだろうか。

「誰だ!?」

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。この人達は味方」

「み、味方ぁ?」

 懐かしい友人に会うように日向は笑うと、スーツの男から渡された帽子をかぶって笑顔で言った。

「ようこそ、世界の裏側へ。ようこそ、協会(ギルド)へ」

to be continued...

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