日常は崩れさり少年はあの日を想う
陸
 日向は立ち尽くしていた。
 自分があまりにも無力だったことに気付かされた。
──────ああ、私はなんて無力なんだろう。私なら彼を守れると思ったのに。
 甚だしいほどの思い上がり。自分には力がある。だから自分なら彼女が果たせなかった使命を果たすことが出来る、と思っていた。信じていた。
「なあ、日向」
「な、なに、お兄ちゃん」
 彼は息も絶え絶えの中、私に言った。
「────────よく、頑張ったね」
 涙がこみ上げてくる。
私は、守ろうとした人に守ってもらったんだ、と。
何も出来なかった。
やはり私は無力なんだ、と。
「そしてありがとう、日向」
「...え?」
 彼は笑って言った。
「君がいなきゃ、僕はもう1度立ち上がれなかった。君のおかげで、僕はみんなを助けられるんだから、お礼を言うのは当然でしょ?」
 不意打ちに、思わず涙が止まる。
 私は息を吸い込むと、確認を取るために言う。
「お、兄ちゃん...わ、私は、お兄ちゃんの力になれたのかなあ...?」
 そして、彼はまた笑った。
「ああ。やっぱり、君は僕の自慢の妹だ」
 頭を撫でられ、さらに涙を流してしまう。でも、は無力感からくる涙ではなく───もう、嬉しさからくる暖かい涙になっていた。
#
「と、いうことで兄共々よろしくお願いします!」
『...此坂絢斗おおおおおおおおおおっ!!』
「僕は悪くねえ!」
 退院して2日目。久しぶりの登校にも関わらず日向が爆弾をぶん投げていた。
「おい、日向」
「はい、何でしょうお兄ちゃん」
「お前1年なのになんで2年のところにいるのかなあ...!?」
「痛い痛い痛い痛いよお兄ちゃん」
「このまま頭蓋砕いてやろうか...?」 
「やめて、そこは生命を司っておるじゃろ?」
「よし、砕く」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
 仕方ないので許した。
「...チョロイな(笑)」
「...(殺意)」
 あー、マジでぶっ〇そっかなあ...
どうにか自我を抑えることが出来た僕は、日向を引きずって今来た道を戻った。
「絢斗くん、これはどういう事!?その女は誰!?」
「明日南悪ノリするな!お前5.5話であってんだろうが!」
「...(๑>•̀๑)テヘペロ」
「許すか」
 明日南の頭蓋を砕く間に説明をば。
 うちの高校は見事に吹き飛び、跡形も残らなかった。ぶっちゃけ跡地みて笑ってしまった。
 学び舎が無くなってしまったことを受けて校長は市に掛け合い、臨時の校舎を立てることに成功、今僕達は仮設校舎に通っているという訳だ。以上、説明終わり。
「あっ、頭蓋ピキっていった!ピキっていった!」
「良かったな、体重が軽くなるぞ」
「あ、やったあ...じゃないよ!?」
 こいつ、本当に僕の敵になりうるのか...?
 こんなところを見ると、つい先日の拳銃を構えた時に一瞬だけ見た狩人の目が気のせいに見える。
「なあ、明日南」
「...どうしたの、いきなり真剣になって」
 周りは日向に夢中で気づいていない。
「僕、なんか変なのにあったんだ」
「あ、鏡みたの?」
...
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
 手を離すと、明日南は頭に手を当てて痛がっている。自業自得乙。
「で、鏡の中の自分がd...ごめんなさい前言撤回しますどうされたんですか絢斗様」
「ウザ...まあいいや。で、なんか目覚める前に変なのにあってさー」
「へえ...可愛い子?」
「わかんない」
「...ふぇ?...いや、え?」
 不思議な顔をしている明日南だが、姿が決まっていないのだから可愛いかどうか分からないだろう。そういう説明をしたところ、明日南は断言した。
「あ、それノアだね」
「ノア...っていうと方舟のか?」
「そうそう、ノアの方舟のノア。人類に救いと破滅を等しくもたらす迷惑な神様。...なんで絢斗くんのところに行ったんだろう?彼女はあまり個人に干渉しないのに...」
「あ、あいつ女だったのか」
 遙に化けたりしてたから、性別も分からない状態だったので余計に驚く。
「で、その、女神様がなんで僕に?」
「え、知らないけど。逆に心当たりない?」
「ねえよ」
「えぇ...(困惑)」
 困惑されてもな。自分自身わかんねえから分かりそうなのに聞いてみたんだけどね。
「使えな」
「さすがに使えなはないんじゃないかなっ!?」
 なんか軽く吐血しながら未月樹が叫ぶが、教卓の方を見て、それどこじゃなかった。
「ねえねえ日向ちゃんは、此坂くんと住んでるの?」
「まだ引っ越してないけどそのつもりですー」
「「此坂ぁ...?」」
 男子諸君のHateが僕に集まっているのが分かる。てかマジでなんか黒いオーラ立ち上ってませんかねえ...?
「日向」
「何、お兄ちゃ...失礼しましたっ」
「逃がさん」
 この後のことを単純に言うと。
 数学担当の教師に廊下を走るな、と怒られた。ん?日向?...星になったよ。
#
「お兄ちゃんに殴られたところがまだジンジンするよお...」
「自業自得だ。天誅天誅」
「何色の弾丸よ...」
「ちなみに僕のイメージカラーは青らしい」
「じゃあ私は黄色かな」
「なるほど、頭がおかしいからか」
「どこの黄色いピエロアバターよ!」
 あいつは頭がおかしいんじゃなくて精神がおかしいんだと思うんだよなあ...そういえばぺドコンなんだっけ、あいつ。実の妹にガチドン引きされてたっけ。
「ってもう書籍化してる有名作品のネタ持ってきたって、書籍化はされないよ、お兄ちゃん」
「知ってるよ。だからしばらく書籍化されない事を自虐ネタで行こうと思う」
 ...
「「悲しっ」」
 まったくもってその通りである。
 日向と僕は、夕食の買い物の帰りだった。と、いうのもこの前の隕石落下で断線されてて、さらに2週間ほど入院してたから食材が腐ってたっていう...メインディッシュないし。
「今夜は、ハンバーグにしようと思う」
「やったね」
「とりあえず肉を捏ねるとこからだぞ」
「はあい」
『はあい』
「いい返事だ────ぐふっ!?」
 視界から日向が消えた。
「お兄ちゃん!?」
どうやら、痛みと日向の声からして視界から消えたのは僕の方だったらしい。
「痛っ...って」
 背中から壁にぶつかり一瞬呼吸が止まる。それよりも、
『くははははははっ...ニンゲンは脆いなあ』
 目の前に立っている、異形への驚きの方が強かった。
 一言で表すなら、山羊人間。頭が山羊で、躰は成人男性くらいだろうか。ところどころ体毛が茂っていて、山羊が二本足でたっているようにも見える。
「あっ、それだけ冷静になれるならお兄ちゃん大丈夫そうだね」
「地の文に直接突っ込むな」
『の、呑気なんだな、ニンゲンって...』
「「恐らく僕(私)らだけ」」
『そ、そうか...』
【ケント と ヒナタ は 山羊人間 を 怯ませた !】
...なんだこれ。
 とりあえずだが、怯ませた(結果オーライ)とはいえ、相手の方が筋力などがあることが分かった。この無駄な会話はただ無駄なだけではなかったのだ。
「本音は?」
「ただこの状況を垂れ流したかっ...っていつまでもシリアス気分になれないんですが」
「それはこのどうみても現実離れした現実のせい...って矛盾してるね」
『セルフツッコミやめろ』
「「すいませんでした」」
to be contenued...だよね?
 自分があまりにも無力だったことに気付かされた。
──────ああ、私はなんて無力なんだろう。私なら彼を守れると思ったのに。
 甚だしいほどの思い上がり。自分には力がある。だから自分なら彼女が果たせなかった使命を果たすことが出来る、と思っていた。信じていた。
「なあ、日向」
「な、なに、お兄ちゃん」
 彼は息も絶え絶えの中、私に言った。
「────────よく、頑張ったね」
 涙がこみ上げてくる。
私は、守ろうとした人に守ってもらったんだ、と。
何も出来なかった。
やはり私は無力なんだ、と。
「そしてありがとう、日向」
「...え?」
 彼は笑って言った。
「君がいなきゃ、僕はもう1度立ち上がれなかった。君のおかげで、僕はみんなを助けられるんだから、お礼を言うのは当然でしょ?」
 不意打ちに、思わず涙が止まる。
 私は息を吸い込むと、確認を取るために言う。
「お、兄ちゃん...わ、私は、お兄ちゃんの力になれたのかなあ...?」
 そして、彼はまた笑った。
「ああ。やっぱり、君は僕の自慢の妹だ」
 頭を撫でられ、さらに涙を流してしまう。でも、は無力感からくる涙ではなく───もう、嬉しさからくる暖かい涙になっていた。
#
「と、いうことで兄共々よろしくお願いします!」
『...此坂絢斗おおおおおおおおおおっ!!』
「僕は悪くねえ!」
 退院して2日目。久しぶりの登校にも関わらず日向が爆弾をぶん投げていた。
「おい、日向」
「はい、何でしょうお兄ちゃん」
「お前1年なのになんで2年のところにいるのかなあ...!?」
「痛い痛い痛い痛いよお兄ちゃん」
「このまま頭蓋砕いてやろうか...?」 
「やめて、そこは生命を司っておるじゃろ?」
「よし、砕く」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
 仕方ないので許した。
「...チョロイな(笑)」
「...(殺意)」
 あー、マジでぶっ〇そっかなあ...
どうにか自我を抑えることが出来た僕は、日向を引きずって今来た道を戻った。
「絢斗くん、これはどういう事!?その女は誰!?」
「明日南悪ノリするな!お前5.5話であってんだろうが!」
「...(๑>•̀๑)テヘペロ」
「許すか」
 明日南の頭蓋を砕く間に説明をば。
 うちの高校は見事に吹き飛び、跡形も残らなかった。ぶっちゃけ跡地みて笑ってしまった。
 学び舎が無くなってしまったことを受けて校長は市に掛け合い、臨時の校舎を立てることに成功、今僕達は仮設校舎に通っているという訳だ。以上、説明終わり。
「あっ、頭蓋ピキっていった!ピキっていった!」
「良かったな、体重が軽くなるぞ」
「あ、やったあ...じゃないよ!?」
 こいつ、本当に僕の敵になりうるのか...?
 こんなところを見ると、つい先日の拳銃を構えた時に一瞬だけ見た狩人の目が気のせいに見える。
「なあ、明日南」
「...どうしたの、いきなり真剣になって」
 周りは日向に夢中で気づいていない。
「僕、なんか変なのにあったんだ」
「あ、鏡みたの?」
...
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
 手を離すと、明日南は頭に手を当てて痛がっている。自業自得乙。
「で、鏡の中の自分がd...ごめんなさい前言撤回しますどうされたんですか絢斗様」
「ウザ...まあいいや。で、なんか目覚める前に変なのにあってさー」
「へえ...可愛い子?」
「わかんない」
「...ふぇ?...いや、え?」
 不思議な顔をしている明日南だが、姿が決まっていないのだから可愛いかどうか分からないだろう。そういう説明をしたところ、明日南は断言した。
「あ、それノアだね」
「ノア...っていうと方舟のか?」
「そうそう、ノアの方舟のノア。人類に救いと破滅を等しくもたらす迷惑な神様。...なんで絢斗くんのところに行ったんだろう?彼女はあまり個人に干渉しないのに...」
「あ、あいつ女だったのか」
 遙に化けたりしてたから、性別も分からない状態だったので余計に驚く。
「で、その、女神様がなんで僕に?」
「え、知らないけど。逆に心当たりない?」
「ねえよ」
「えぇ...(困惑)」
 困惑されてもな。自分自身わかんねえから分かりそうなのに聞いてみたんだけどね。
「使えな」
「さすがに使えなはないんじゃないかなっ!?」
 なんか軽く吐血しながら未月樹が叫ぶが、教卓の方を見て、それどこじゃなかった。
「ねえねえ日向ちゃんは、此坂くんと住んでるの?」
「まだ引っ越してないけどそのつもりですー」
「「此坂ぁ...?」」
 男子諸君のHateが僕に集まっているのが分かる。てかマジでなんか黒いオーラ立ち上ってませんかねえ...?
「日向」
「何、お兄ちゃ...失礼しましたっ」
「逃がさん」
 この後のことを単純に言うと。
 数学担当の教師に廊下を走るな、と怒られた。ん?日向?...星になったよ。
#
「お兄ちゃんに殴られたところがまだジンジンするよお...」
「自業自得だ。天誅天誅」
「何色の弾丸よ...」
「ちなみに僕のイメージカラーは青らしい」
「じゃあ私は黄色かな」
「なるほど、頭がおかしいからか」
「どこの黄色いピエロアバターよ!」
 あいつは頭がおかしいんじゃなくて精神がおかしいんだと思うんだよなあ...そういえばぺドコンなんだっけ、あいつ。実の妹にガチドン引きされてたっけ。
「ってもう書籍化してる有名作品のネタ持ってきたって、書籍化はされないよ、お兄ちゃん」
「知ってるよ。だからしばらく書籍化されない事を自虐ネタで行こうと思う」
 ...
「「悲しっ」」
 まったくもってその通りである。
 日向と僕は、夕食の買い物の帰りだった。と、いうのもこの前の隕石落下で断線されてて、さらに2週間ほど入院してたから食材が腐ってたっていう...メインディッシュないし。
「今夜は、ハンバーグにしようと思う」
「やったね」
「とりあえず肉を捏ねるとこからだぞ」
「はあい」
『はあい』
「いい返事だ────ぐふっ!?」
 視界から日向が消えた。
「お兄ちゃん!?」
どうやら、痛みと日向の声からして視界から消えたのは僕の方だったらしい。
「痛っ...って」
 背中から壁にぶつかり一瞬呼吸が止まる。それよりも、
『くははははははっ...ニンゲンは脆いなあ』
 目の前に立っている、異形への驚きの方が強かった。
 一言で表すなら、山羊人間。頭が山羊で、躰は成人男性くらいだろうか。ところどころ体毛が茂っていて、山羊が二本足でたっているようにも見える。
「あっ、それだけ冷静になれるならお兄ちゃん大丈夫そうだね」
「地の文に直接突っ込むな」
『の、呑気なんだな、ニンゲンって...』
「「恐らく僕(私)らだけ」」
『そ、そうか...』
【ケント と ヒナタ は 山羊人間 を 怯ませた !】
...なんだこれ。
 とりあえずだが、怯ませた(結果オーライ)とはいえ、相手の方が筋力などがあることが分かった。この無駄な会話はただ無駄なだけではなかったのだ。
「本音は?」
「ただこの状況を垂れ流したかっ...っていつまでもシリアス気分になれないんですが」
「それはこのどうみても現実離れした現実のせい...って矛盾してるね」
『セルフツッコミやめろ』
「「すいませんでした」」
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