日常は崩れさり少年はあの日を想う
伍
 光が、見える。
 ぼやけている。
「先生、絢斗くんが!」
「此坂くん?分かりますか?私です、唯です!」
「絢斗、大丈夫か?」
 みんなの声が頭に響く。
「...僕は...聖徳太子じゃないんだよ...」
「絢斗くん!」
「此坂くん!」
「絢ちゃん!」
「おお、絢斗。おはよう」
 体を起こそうとすると、夕香に止められる。
「絢ちゃんだめだよ。二日も寝てたんだから」
「...二日も寝てたの?」
「ああ」
 冷静さを欠いて昔の呼び方に戻っている夕香とは変わって、冷静な声がする。
 壁側を向くと遙が手を振っていた。
「絢斗、あの着弾爆発もろに食らってさ。あ、周りのやつらは無事...ではないが生きてるぜ」
「そっ...か」
 やはりさすがは遙だ。僕が心配していたことを一番に教えてくれた。
 あとから話を聞くと、どうやら流星が高校のグラウンドに落下して、グラウンドがへしゃげたらしい。不幸中の幸いは、グラウンドや高校の周りに通行人や生徒がいなかったことか。
「高校はもう使い物にならないだろうな」
「ああ、それどころか半径1kmが消し飛んだからな、ビルも何もかもまっさらだぜ」
「は、半径1km!?おい待て、それって夕香の家が...」
 僕が夕香の方を向くと、夕香は苦笑して頭を掻いた。
「まさかのギリッギリセーフだったのよ」
「ま、マジかよ...」
 夕香の家は、旧家である。
 父が居合の師範、母が合気道の指導者と根っからの武道一家だ。また、夕香自身は武道をやっていないものの、身のこなしは幼少期から鍛えられてきたものが垣間見える。
 かなり大きい家で、武道場が庭にある。僕と遙もよくそこで武道の真似事をしていた。
「隆喜さんと紗雪さんは?」
「うん、お父さんとお母さんも無事だよ」
「それならよかったんだが...」
 と、そこで時計が鳴る。
「...もう、こんな時間か」
「面会終了時間ですよ、お早めにしてください」
「「はーい」」
 夕香と未月樹が揃って返事をする。後ろでは遙が苦笑して、
「じゃあ俺帰るわ。瑠花と瑠璃とあきら、きっとまだ飯食ってねえだろうし」
「あ、ルリルカ元気?」
「おうとも。ピンピンしてるぜ」
 鞄を肩にかけると、手を振って病室から出ていく。羽村先生がそこに続き、夕香が「明日も来るね」と言って出ていく。
 そして未月樹が、
「屋上にいるからね」
と言って、夕香を追いかけていった。
 急に静かになった病室で、僕は窓から空を仰いだ。空は夜に変わっていて、星が瞬いている。
「あ、そうだ。屋上にいるって言ってたな」
 言われて3秒で忘れる、アホの鏡である。
#
「お待たせ、明日南」
「あ、絢斗くん」
 屋上に行くと、そこには宣言通り未月樹が立っていた。屋上の手すりに寄りかかり、マフラーを風でたなびかせている。
「でも1回出なかったのか?」
「忘れ物したから先帰ってていいよって言っといたから、大丈夫だよ」
「親御さんは?」
「私、一人暮らしだから。それに洗濯物は取り込んできたし」
 そういえば、僕の洗濯物はどうなってしまったのだろうか...二日もたっているし、隕石の爆風とかでダメになってるかもなあ...
「ちなみに絢斗くんの洗濯物は無事でした」
「何でそれが分かるの!?」
「羽村先生が鍵持ってた」
「ああ...唯さんか」
 唯さん──もとい羽村先生は、唯一の肉親である姉を亡くしてから僕の保護者になってくれた人だ。僕が羽村先生の担当クラスに入るのも、実はそういう感じで力が動いているからだ。
「唯さん、一応あれ僕の家なんだけどなあ...普通に入ってきて酒飲んでるからなあ...」
「へ、へぇ...羽村先生ってお酒飲むんだ」
「あの人ああ見えて30代よ?」
「ええ!?」
 中身は30代だが、あの人は紗雪さんと張り合えるくらい若作りしている。というか、ある病気で体が成長しないのだ。
 まあ、教えるつもりはないが。
「ってそうじゃなくて」
「だろうね」
「あ、知ってたんだ!?」
「うん、まあね」
 本題に入りたくなかったので、話を長くしてたんだけど。まあ、気づかないよね。
「で、本題」
 急に明日南の顔が真剣になった。僕もそれを感じ取り、気を引き締める。
「何」
 つとめて、冷静に。明日南は話し出す。
「君には、選択をしてもらいます」
「───ッ!?」
 圧倒的、既視感(デジャヴ)。
 奇しくもそれは、あの謎生物から告げられた言葉と同じ。 なんという偶然。...いや偶然なのか?本当はあれは明日南だったのでは?
 新しい仮説と妄想が次々に頭をよぎっていく。だが、何一つとして納得のいくものは現れなかった。
「選、択って...何を?」
 僕は勇気を出し、尋ねる。
 すると明日南はブレザーの中から、黒い物体を取り出した。
 あれは────────
拳銃ッ!?
パンッ
「うおっ」
「あれっ、弾出ちゃった」
 見ると、先程まで僕が居たところに何がが穿った跡が見える。
「おい待て、今の僕じゃなきゃ死んでたぞ!?」
「いやあ...威嚇のつもりが、セーフティ外れてたみたい。...危うく私死んでたね...」
「その前に、僕!」
「え?...あ、ごめんなさい!」
 な、なんだこれ...謎だぞ、この明日南とかいう転校生...拳銃持ち歩いてるし、セーフティ外れてるし...
「で、でね。選択、なんだけど」
「お、おう」
 気を取り直して、と言わんばかりに咳払いをする明日南。僕もこのままだと収拾が付かなそうなので、それに乗ることにする。
「...ふぅ。でね、絢人くんには私達【組織】と共にくるか、敵対するか選択してもらいます。あ、あとは記憶を失って、普通に生きるでもいいよ?」
「い、いや、突拍子もなさすぎてどうしたらいいのかわかんねえよ!」
 なーにを言ってんだこいつは。共に行く?敵対する?記憶を失う?前後説明が無さすぎて話になんねえ!
「な、何が何だかよく分からないぜ...」
「うーん...じゃあ分からないうちに記憶消しちゃおっか。その方がきっと君の身に危険が及ばないはずだよ」
「え、いや、待て...記憶ってどこまで消えるんだ?まさか生まれた時からとか」
「流石にそれはないよ」
 明日南は苦笑した。
「せいぜい、今日1日のことだけ。私が【組織】の人間であること、そしてあれは隕石が落ちてきただけのただの事故ってこと。少し、記憶の書き換えも必要かな?」
 さ、さりげなく記憶の書き換えとか言いやがった...恐ろしい子ッ!!
「じゃ、記憶変化でいいかな?」
「...いや、ちょっと待ってくれ。さっき敵対するとか言ってなかったか」
「...絢人くん、それはフラグというものだよ」
「え、どこg」
 明日南は、踵を返すと、階下に消えていった。
「絢人くん、気をつけて。あなたを狙っている人がいるの」
「は、はあ!?ちょっと待て、色々ごっちゃでよく分からないぜ...」
「じゃあね」
「いや待てーい...」
 フェードアウトしていく言葉。そして消えていった明日南。
 展開が早すぎて、主人公に位置するであろう僕でさえ理解が追いついていなかった。
#
 そして、朝。
「...あれ、いつの間に戻ってきたんだ?」
「え、私が運んで来たんだよ、お兄ちゃん」
「...え?」
 体を起こすと、見知らぬ金髪煌眼の少女が椅子に座っていた。
『君は妹と未月樹、どちらかを取ることになる。』
「いも、うと...?」
「あれ、お兄ちゃん私のこと忘れちゃったの?」
 少女は、某チル○リスを相棒にするアイドルと同じポーズをして、言った。
「私は此坂日向」
 てへ、と舌を出して
「あなたの愛すべき妹、だよ!」
to be contenued...ッ!!! 
 ぼやけている。
「先生、絢斗くんが!」
「此坂くん?分かりますか?私です、唯です!」
「絢斗、大丈夫か?」
 みんなの声が頭に響く。
「...僕は...聖徳太子じゃないんだよ...」
「絢斗くん!」
「此坂くん!」
「絢ちゃん!」
「おお、絢斗。おはよう」
 体を起こそうとすると、夕香に止められる。
「絢ちゃんだめだよ。二日も寝てたんだから」
「...二日も寝てたの?」
「ああ」
 冷静さを欠いて昔の呼び方に戻っている夕香とは変わって、冷静な声がする。
 壁側を向くと遙が手を振っていた。
「絢斗、あの着弾爆発もろに食らってさ。あ、周りのやつらは無事...ではないが生きてるぜ」
「そっ...か」
 やはりさすがは遙だ。僕が心配していたことを一番に教えてくれた。
 あとから話を聞くと、どうやら流星が高校のグラウンドに落下して、グラウンドがへしゃげたらしい。不幸中の幸いは、グラウンドや高校の周りに通行人や生徒がいなかったことか。
「高校はもう使い物にならないだろうな」
「ああ、それどころか半径1kmが消し飛んだからな、ビルも何もかもまっさらだぜ」
「は、半径1km!?おい待て、それって夕香の家が...」
 僕が夕香の方を向くと、夕香は苦笑して頭を掻いた。
「まさかのギリッギリセーフだったのよ」
「ま、マジかよ...」
 夕香の家は、旧家である。
 父が居合の師範、母が合気道の指導者と根っからの武道一家だ。また、夕香自身は武道をやっていないものの、身のこなしは幼少期から鍛えられてきたものが垣間見える。
 かなり大きい家で、武道場が庭にある。僕と遙もよくそこで武道の真似事をしていた。
「隆喜さんと紗雪さんは?」
「うん、お父さんとお母さんも無事だよ」
「それならよかったんだが...」
 と、そこで時計が鳴る。
「...もう、こんな時間か」
「面会終了時間ですよ、お早めにしてください」
「「はーい」」
 夕香と未月樹が揃って返事をする。後ろでは遙が苦笑して、
「じゃあ俺帰るわ。瑠花と瑠璃とあきら、きっとまだ飯食ってねえだろうし」
「あ、ルリルカ元気?」
「おうとも。ピンピンしてるぜ」
 鞄を肩にかけると、手を振って病室から出ていく。羽村先生がそこに続き、夕香が「明日も来るね」と言って出ていく。
 そして未月樹が、
「屋上にいるからね」
と言って、夕香を追いかけていった。
 急に静かになった病室で、僕は窓から空を仰いだ。空は夜に変わっていて、星が瞬いている。
「あ、そうだ。屋上にいるって言ってたな」
 言われて3秒で忘れる、アホの鏡である。
#
「お待たせ、明日南」
「あ、絢斗くん」
 屋上に行くと、そこには宣言通り未月樹が立っていた。屋上の手すりに寄りかかり、マフラーを風でたなびかせている。
「でも1回出なかったのか?」
「忘れ物したから先帰ってていいよって言っといたから、大丈夫だよ」
「親御さんは?」
「私、一人暮らしだから。それに洗濯物は取り込んできたし」
 そういえば、僕の洗濯物はどうなってしまったのだろうか...二日もたっているし、隕石の爆風とかでダメになってるかもなあ...
「ちなみに絢斗くんの洗濯物は無事でした」
「何でそれが分かるの!?」
「羽村先生が鍵持ってた」
「ああ...唯さんか」
 唯さん──もとい羽村先生は、唯一の肉親である姉を亡くしてから僕の保護者になってくれた人だ。僕が羽村先生の担当クラスに入るのも、実はそういう感じで力が動いているからだ。
「唯さん、一応あれ僕の家なんだけどなあ...普通に入ってきて酒飲んでるからなあ...」
「へ、へぇ...羽村先生ってお酒飲むんだ」
「あの人ああ見えて30代よ?」
「ええ!?」
 中身は30代だが、あの人は紗雪さんと張り合えるくらい若作りしている。というか、ある病気で体が成長しないのだ。
 まあ、教えるつもりはないが。
「ってそうじゃなくて」
「だろうね」
「あ、知ってたんだ!?」
「うん、まあね」
 本題に入りたくなかったので、話を長くしてたんだけど。まあ、気づかないよね。
「で、本題」
 急に明日南の顔が真剣になった。僕もそれを感じ取り、気を引き締める。
「何」
 つとめて、冷静に。明日南は話し出す。
「君には、選択をしてもらいます」
「───ッ!?」
 圧倒的、既視感(デジャヴ)。
 奇しくもそれは、あの謎生物から告げられた言葉と同じ。 なんという偶然。...いや偶然なのか?本当はあれは明日南だったのでは?
 新しい仮説と妄想が次々に頭をよぎっていく。だが、何一つとして納得のいくものは現れなかった。
「選、択って...何を?」
 僕は勇気を出し、尋ねる。
 すると明日南はブレザーの中から、黒い物体を取り出した。
 あれは────────
拳銃ッ!?
パンッ
「うおっ」
「あれっ、弾出ちゃった」
 見ると、先程まで僕が居たところに何がが穿った跡が見える。
「おい待て、今の僕じゃなきゃ死んでたぞ!?」
「いやあ...威嚇のつもりが、セーフティ外れてたみたい。...危うく私死んでたね...」
「その前に、僕!」
「え?...あ、ごめんなさい!」
 な、なんだこれ...謎だぞ、この明日南とかいう転校生...拳銃持ち歩いてるし、セーフティ外れてるし...
「で、でね。選択、なんだけど」
「お、おう」
 気を取り直して、と言わんばかりに咳払いをする明日南。僕もこのままだと収拾が付かなそうなので、それに乗ることにする。
「...ふぅ。でね、絢人くんには私達【組織】と共にくるか、敵対するか選択してもらいます。あ、あとは記憶を失って、普通に生きるでもいいよ?」
「い、いや、突拍子もなさすぎてどうしたらいいのかわかんねえよ!」
 なーにを言ってんだこいつは。共に行く?敵対する?記憶を失う?前後説明が無さすぎて話になんねえ!
「な、何が何だかよく分からないぜ...」
「うーん...じゃあ分からないうちに記憶消しちゃおっか。その方がきっと君の身に危険が及ばないはずだよ」
「え、いや、待て...記憶ってどこまで消えるんだ?まさか生まれた時からとか」
「流石にそれはないよ」
 明日南は苦笑した。
「せいぜい、今日1日のことだけ。私が【組織】の人間であること、そしてあれは隕石が落ちてきただけのただの事故ってこと。少し、記憶の書き換えも必要かな?」
 さ、さりげなく記憶の書き換えとか言いやがった...恐ろしい子ッ!!
「じゃ、記憶変化でいいかな?」
「...いや、ちょっと待ってくれ。さっき敵対するとか言ってなかったか」
「...絢人くん、それはフラグというものだよ」
「え、どこg」
 明日南は、踵を返すと、階下に消えていった。
「絢人くん、気をつけて。あなたを狙っている人がいるの」
「は、はあ!?ちょっと待て、色々ごっちゃでよく分からないぜ...」
「じゃあね」
「いや待てーい...」
 フェードアウトしていく言葉。そして消えていった明日南。
 展開が早すぎて、主人公に位置するであろう僕でさえ理解が追いついていなかった。
#
 そして、朝。
「...あれ、いつの間に戻ってきたんだ?」
「え、私が運んで来たんだよ、お兄ちゃん」
「...え?」
 体を起こすと、見知らぬ金髪煌眼の少女が椅子に座っていた。
『君は妹と未月樹、どちらかを取ることになる。』
「いも、うと...?」
「あれ、お兄ちゃん私のこと忘れちゃったの?」
 少女は、某チル○リスを相棒にするアイドルと同じポーズをして、言った。
「私は此坂日向」
 てへ、と舌を出して
「あなたの愛すべき妹、だよ!」
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