日常は崩れさり少年はあの日を想う
壱
「ふぁぁぁ...今日もいい朝だ」
僕はうーん、と伸びると起き上がった。
4月5日。今日は高校の始業式である。
僕は弁当を作ると、鞄にしまう。そして、誰もいない部屋に向かって一言告げると玄関を出た。
「行ってきます、姉さん」
#
「よっす、絢斗」
「やぁ、遙」
高校へと向かう電車に乗り、つり革に手を掛けると、横から挨拶が飛んできた。
一条遙。幼馴染み、というわけでもないが、中学以来の心許せる友人のひとりだ。
「ついに今日から学校再開だな!課題終わったか?」
「当たり前だろ。第一、僕に予定なんてない」
「非リアの反応だな」
「人の事言えないくせにw」
顔を見合わせ、苦笑する僕ら。
この調子ではいつまでも春は来なそうである。
「お、そういえば今日の始業式はなんかあるらしいぞ」
「またぁ?...うちの校長はほんとに何がしたいんだろうな...」
こんな風にいつも通り雑談をしている日常。
だが、今日は少し違った。
──最初はただの直感だった。
隣の車両との連結部分、
そしてその向こうのドア。
──僕を、見ている?
「おい、絢斗?」
「ん...あぁ、なんだ?」
「いや、いきなり止まったからなんかあったのかと」
「いや、あっちに僕を見てる女の子がいてさ」
先程の場所に目を向けると、そこには少女が存在していなかった。
「ん?誰もいねぇじゃん」
「確かにさっきまで...」
突如いなくなる、なんてことはできないくらい混んでいる車内。まるでそこの空間だけぽっかりと消え去ったかの様な感覚。
「まさか幽霊か?くわばらくわばら...」
「お前はいつの時代の人間だよ…くわばらなんてきょうび聞かねぇよ...」
まるで狐につままれたような、肩透かし感が頭を通り過ぎていく。そして次の瞬間。
『───見つけた。』
と。
僕はもう1度先程の場所を見た。
しかし、少女はそこにいなかった。
#
「そいやさー」
「えいやっさー」
「違うわ!...ってそうじゃなくてさ。今日の校長のアレ、周りの話聞いた感じだとうちの学年に転校生が来るって話らしいぞ」
「ふーん...美人かな?」
「知らねw」
第一、美人だったら俺らには縁の無い人種だろ、と遙は笑い飛ばした。
「さて、今回は何組かなっと」
「僕は...B組か。遙は?」
「...俺もB組だな。今年もよろしく」
「こちらこそ」
パン、とハイタッチを交わす僕ら。
肩越しに後ろを向くと、ハイタッチのまま通り過ぎた遙が苦笑していた。僕も苦笑し、生徒玄関へ足を向けた。
まだ、平和。
僕はうーん、と伸びると起き上がった。
4月5日。今日は高校の始業式である。
僕は弁当を作ると、鞄にしまう。そして、誰もいない部屋に向かって一言告げると玄関を出た。
「行ってきます、姉さん」
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「よっす、絢斗」
「やぁ、遙」
高校へと向かう電車に乗り、つり革に手を掛けると、横から挨拶が飛んできた。
一条遙。幼馴染み、というわけでもないが、中学以来の心許せる友人のひとりだ。
「ついに今日から学校再開だな!課題終わったか?」
「当たり前だろ。第一、僕に予定なんてない」
「非リアの反応だな」
「人の事言えないくせにw」
顔を見合わせ、苦笑する僕ら。
この調子ではいつまでも春は来なそうである。
「お、そういえば今日の始業式はなんかあるらしいぞ」
「またぁ?...うちの校長はほんとに何がしたいんだろうな...」
こんな風にいつも通り雑談をしている日常。
だが、今日は少し違った。
──最初はただの直感だった。
隣の車両との連結部分、
そしてその向こうのドア。
──僕を、見ている?
「おい、絢斗?」
「ん...あぁ、なんだ?」
「いや、いきなり止まったからなんかあったのかと」
「いや、あっちに僕を見てる女の子がいてさ」
先程の場所に目を向けると、そこには少女が存在していなかった。
「ん?誰もいねぇじゃん」
「確かにさっきまで...」
突如いなくなる、なんてことはできないくらい混んでいる車内。まるでそこの空間だけぽっかりと消え去ったかの様な感覚。
「まさか幽霊か?くわばらくわばら...」
「お前はいつの時代の人間だよ…くわばらなんてきょうび聞かねぇよ...」
まるで狐につままれたような、肩透かし感が頭を通り過ぎていく。そして次の瞬間。
『───見つけた。』
と。
僕はもう1度先程の場所を見た。
しかし、少女はそこにいなかった。
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「そいやさー」
「えいやっさー」
「違うわ!...ってそうじゃなくてさ。今日の校長のアレ、周りの話聞いた感じだとうちの学年に転校生が来るって話らしいぞ」
「ふーん...美人かな?」
「知らねw」
第一、美人だったら俺らには縁の無い人種だろ、と遙は笑い飛ばした。
「さて、今回は何組かなっと」
「僕は...B組か。遙は?」
「...俺もB組だな。今年もよろしく」
「こちらこそ」
パン、とハイタッチを交わす僕ら。
肩越しに後ろを向くと、ハイタッチのまま通り過ぎた遙が苦笑していた。僕も苦笑し、生徒玄関へ足を向けた。
まだ、平和。
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