異世界魔女は気まぐれで最強です。

雨狗 嗄零(あめいぬ しゃお)

ランクアップ

男性の職員はおもむろに問いかけました。
3人は、興味もなさそうに顔を見合わせる。

「ピアスのカバンに手を出そうとしてたから、腕を掴んで止めただけ。」

タトューのその言葉だけで、どう言う理由で騒ぎが起こったのか容易く想像ができた職員は、小さな声で了解すると、頭を軽く下げて謝ってきた。

「申し訳なかった。ギルド内で犯罪行為が行われようといてただなんて。職員として謝る。」

「別にいい。未遂で終わった。それに、あの程度の奴どうとでもなる。」

タトューの話は言葉数が少なくシンプルだ。しかし、今回はその少なさが職員にとってありがたいと思っていた。

「この話はここまでにして、冒険者の説明に戻らせてもらうな。お前たちは正式に冒険者となった。基本的なマナーはこのマニュアルを読めば分かる。」

職員が出してきた手帳ほどマニュアル本には、ギルドのシステムやどんな施設があるか、冒険者同士の接し方やルールなどが書かれていた。

次に説明しだしたのは、ランクシステム。
それぞれのランクより以下の依頼しか受けることができないとのことだった。
アサミたちは最底辺のEランク。
最高はSランクだが、ギルドの枠を超えるほどの偉業を成すと国によって認められそれより上のランク、称号に近い物を与えられるとのことだった。

「ま、これはあくまでも新人たちのやる気を出させるための餌に過ぎないがな。実際、Sランクの上、SSランクになった奴なんて今までに二人しか居ないからな。」

「でも、いたんですね。私もなってみたいかも!」

「俺たちは冒険者の頂点を目指しにきたわけじゃないぞー。あくまでも目的を忘れるなよ。」

ピアスに軽く咎められながら、話は進んでいく。
疲れている事もあり、話は短めに済ませ席を立とうとすると男性職員がオススメの宿を教えてくれ、さらにサービスしてもらえるように手紙を用意してくれた。
今はいち早く休みたいと思っていた3人にとっては何より嬉しい事であった。



「安いのに結構いい部屋だね!でも、私だけ1人部屋にして良かったの?お金余分にかかっちゃうのに。」

「いいんだよ。アサミも一応、年頃の女の子だしな!」

「健全なあり方。男は狼とも言う。」

「タトューはそう言うタイプじゃないじゃん。ピアスもなんかじじ臭いし。2人ともそう言うタイプじゃないでしょ?」

「「たしかに。」」

くだらない話はほどほどに、2人は自分たちの部屋に戻って行き今日は宿でゆっくりするのであった。

次の朝、旅の資金集めのため依頼を選びにギルドに向かうと、私たちのランクが上げられていた。

「リングをお返ししますね。3名ともEランクからCランクへ昇格しましたので、より上位の依頼も受けることができるようになりましたよ。こんなに早く上がった人、私初めて、、、、。」

「「「なんで!!!!」」」

受付のルリンは少しびっくりした様子を見せたが、説明をしだした。
冒険者のランクはEからSまである。Cランクはベテランと認められるラインであるらしく、中央領域から持ち込んだ薬草や魔物の素材が元になりランクが自動的に上がったと説明された。

「中央領域の魔物や野生動物はどれも強く、実力がなければ持ち帰ることは難しいですからね。それに、お預かりした熊の毛皮!とても状態が良くて結構な値段がつきそうですよ。頭までついていたら絨毯として貴族も欲しがりそうでしたし。素材引き取り、受付、そして直接話したサブマスの後押しもあり、今回ランクが上がったんですよ。」

「サブマス?私たちそんな偉い人と話したっけ?」

「初めて来られた時に、私と一緒にいたじゃないですかw」

その話を聞いて、私はあのおじさんがサブマスだったのだとすぐに理解した。
怒っているような顔をしているくせに、綺麗に整えられた制服を着こなしているあの少し違和感を感じさせる男性職員さん。

「あの人がサブマスだったんですね。」

驚かされることが多いなと思っていたのもつかの間、今度はリングの中に保管されている金額を見て驚かされた。
高く買い取ってくれたとうわべでは理解していたが、まさかこんなに高いとは思わなかった。

そんな喜んだり驚いたりしているアサミたちを見ているものたちがいた。

「アイツら新人のくせに生意気な!今に見てろ!!」

アサミたちを見ていた奴らの1人に、昨日絡んできた奴の姿があり、その周りにいるものたちもガラがいいとは言えないものばかり。
視線にはもちろん気がついている。殺気と言うよりも、怒りが込められている事もなんとなくわかる。

「用は済んだし、宿に帰ろう。支度をして討伐に向かうぞ。」

アサミたちはギルドを後にする。
今回受けたのは特定の雇い主がいるわけではなく、国や町から出されている常駐依頼。
特別高い報酬額ではないし、魔物を倒さなければ報酬すら出ない。
それでも、特に期限や規則があるわけではないので気兼ねなくやることが出来る。

町を出ればすぐに魔物が出てくる領域となる。
今回の目標は魔物全般と凶暴な動物、熊や狼などである。
などと話しながら獲物を探していると、道を進んだ森の手前で狼たちと遭遇してしまった。

「さあ、狩りますか!」

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