異世界魔女は気まぐれで最強です。

雨狗 嗄零(あめいぬ しゃお)

動き出した者たち

シスターは一人、教会の像に向かって祈りを捧げていた。
しかしそれは、はたから見ればである。
実際に祈っていたのは始めのうちだけで、今は祈っているわけではなく教会本部と連絡を取るため、長距離通信魔法を使っていることを偽装するための行動であった。

「リブール村シスター:マリア。あなたからの報告を受け、私が直接話すことにしました。私は教皇:ベルナ・モーゼスと言います。」

「こ、これは教皇様!!私如きのためにお時間を頂いてしまい申し訳ありません。」

「それはいいのです。それよりも報告にあった「アサミ」と言う少女について詳しい説明を。」

「はい。報告した通り、五年ほど前から私のいる教会で預かっている子供ですが異世界人の可能性があります。歳は10才。現在分かっていることは、魔法の才があり。頭もよく、時に私すら知らない知識を示す時がありました。」

マリアは朝美について気づいたこと、気にかかることを全て報告した。

「シスター:マリア、報告を聞く限りでは確かに異世界人の可能性は低くないですね。で、その朝美という少女は聖遺物アーティファクトを持っていましたか?」

「いえ、今のところ確認できていません。」

教皇はその報告を聞くと、ガッカリしたようなため息をつきました。
異世界人は他の世界から来たものを指し、その者たちに共通していることは聖遺物アーティファクトと呼ばれる、神の力を宿した物を所有していることだ。
天地を揺るがすようなものから、生活を少し便利にするものまであらゆる力が存在し、異世界人一人につき一つの聖遺物が与えられ、本人以外これを使うことはできない。

「聖遺物は、神を証明し我ら教会が管理しなければならないと言うことを理解してますね、マリア。それらを、運ぶ異世界人は我らが保護しなければならない客人と同様。なので、あなたの村に大司教を派遣させます。」

「えっ!?」

「大司教ならば異世界人かどうかの判別を下すことができます。異世界人ならば、教会本部で保護、違うのならばそのまま村で面倒を見なさい。」

「ちょ、ちょっとお待ちください。私どもの報告により教皇様大司教様のお手を煩わせるわけには!」

マリアは焦っていた、ここまでのおおごとになってしまったことを。
マリアは恐れていた、自分が思い描いた以上に予想のつかない方向に話が進んでいることに。

教皇の話はその後長くは続かなかった、通信可能時間の関係もあったが大司教の派遣は絶対に覆らないとしっかりと言い切っだからだ。
通信が終わり、マリアは立ち尽くす。

「一週間以内に大司教様が・・・。本来であれば準備をしなければならないですが、誰にも気取られてはいけないなんて・・・。私はどうしたら良いのでしょう???」

マリアは強いプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、いつも通りを演じるのでした・・・。



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