異世界魔女は気まぐれで最強です。

雨狗 嗄零(あめいぬ しゃお)

草原の先

朝美はひたすら歩き続けた。
転移転生してきた場所から道に沿って。
どこまでも続くかのように感じていた長い道のりを・・・。
そして、歩き続けて行った先でだんだんと何かが見えてきた。

不安や恐れが徐々に強くなってきていたことなど忘れて、朝美はいつの間にか走り出していた。しかし、うまく走れていたのは始めのうちで足がもつれて転んでしまい、そのまま気を失ってしまった。
それもそのはず、慣れない体と服装、長時間の歩行に、精神だってストレスを貯めていたであろう。これだけ負荷がかかっていたのだから小さな体の朝美は簡単に限界を越えてしまい、気を失った・・・。

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「先生、あそこに何かあるよ?ちょっと見てくる〜!」

「ミナは目がいいわね。どこかしら?って、あっ!ちょっと!!」

「俺も行くぞ!!」

「ちょっと、待ちなさい!」

「先生、私がついていきますから、安心してください。」

この日、シスターと三人の子供たちは外を散歩していたが、何かを見つけ丘を走り出した子供たちに、シスターは呆れながらもしっかり者の子の言葉を信じ教会へ帰っていった。

子供たちは、丘を駆け下り村の家を抜けて村の外を目指す。
丘の上から見つけた何かを確かめるために。
そして見つけたのは・・・。

「こ、子供が倒れてるよ!早く大人を呼ばないと!!!」

「お、俺、誰か呼んでくる!」

「トウヤ、出来るだけ早くね!ミナ、少し落ち着きなさい!とりあえず、様子を確認して・・・。特に怪我とかはしてなさそうね。」
「ミナ、背負うから手伝って!」

一番年上の女の子が朝美を背負い、村に向かい歩き出す。
トウヤが大人を連れてやってきたのはちょうど村の入り口辺りを着た時だった。

「プスさん、この子が道に倒れてて。」

「まさかこの子、この道を歩いてきたの!?もし草原の道を歩いてきたのなら、疲れ果ててるだけだと思うけど・・・。念のために、とりあえず教会に運びましょ。」

プスと呼ばれた女性は、朝美を受け取ると教会へ走り丘を登っていった。

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朝美の治療はシスターの手によって恙無つつがなく行われ、朝美がベットで目を覚ましたのは翌朝であった。

「・・・。こ、ここは?」

「こんにちは、初めまして。あ、まだ起きちゃダメよ。まだ治りきってないから。」

朝美の前に現れたのは、優しそうな笑顔を向けるシスターであった。年はそこまで取っているようには感じさせないが、三十くらいだろうか?

「え、えっと。私を助けてくれたのはあなたですか?」

「治療をしたのは私です。でも、あなたを見つけたのは子供たちですよ。でも、びっくりしたわ。何かを見つけたから見てくるって言って出て行ったのに、戻ってきたらプスと一緒にあなたを抱えて大慌てだったんだものw」

「それは、とてもご迷惑ををおたけしました。」

朝美がベットに座りながら頭を下げると、シスターは慌てて辞めさせて「教会は救いの手を差し伸べ、神と対話するための場所なのです」と言って笑いかけ、手を頭に乗せて撫でる。

「あなたの身なりや話し方から、ここら辺の出身ではないですね。だからと言って、村の出身とかではない様に感じますが・・・。何者か教えてくれますか?」

朝美は考える、どう答えるのが正解なのかと。そうして、沈黙は続く。

「はあ、まあいいです。そこまで思い詰めるほど言いたくないのでしょう。それならそれで構いません。さっきも言いましたが、救いの手を差し伸べるのが教会の務めですから。」

優しく笑うシスターの顔を見て、ホッとする朝美はお礼をしっかりと言いつつ、話を進めた。

「私はアサミと言います。元気になったら出ていきますので、もう少し居させてください。」

朝美がそう言うと、シスターは少し残念そうな顔をしました。
なぜ、そんな顔をするのかわからない朝美は顔に出さない程度に驚き、何か間違えたかと思った。

「アサミ、あなたはまだ子供なのですよ。今のうちからそんなに強がらなくていいのです。」

朝美は強く抱きしめられた。優しく慈愛に満ちた抱擁は、ただ純粋な愛を感じさせるもので自然と涙が出ました。
自分でも気がついていないうちに、心は強がっていたようで、知らず知らずにシスターを抱き返していました。

「私はこの村のシスター:マリアと言います。アサミ、もし良ければここにいていいのよ。」

アサミは、この世界に来て初めに会った人がシスターでよかったと思い。この言葉に甘えることにするのであった・・・。

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