短編

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1.列車星々

 列車がホームにやってくるときは大抵、蒸気をあげて、騒音を響かせ、ひどい振動でもって荒々しくやってくる。

 うんざりしながら列車に乗り込もうとするけれど、今日はイベントのせいで、どうも人が多すぎる。入り口からはみ出し、それでもなお人々は乗り込もうとする。

 それじゃあ無理だと思った者達から、列車の屋根へと移動する。僕もそのうちの1人だ。入り口横の、小さなでっぱりが並ぶとっかかりをするするとのぼり、列車の屋根へと上がる。

 前方に乗ってしまうとすすだらけになってしまう。それにトンネルなんてあったらみんなばらばらになるけれど、これから先にはトンネルはないし、僕はちゃんと後方の屋根にいる。

 ようやく一息ついて、鞄からパンを取り出すとむしゃむしゃと食べはじめる。隣に座った麦わら帽子を被った老人が横目で見てくるが仕方がない。移動時間でなければ食事をすることも難しいのだから。

「今日は一体どうしたんでしょう」

 前に座っていたスーツの男の人が急に話しかけてきたので、パンを噛みちぎり、モゴモゴとしたまま、それに返答する。

「今日はイベントがあるんですよ。星が落ちる日でしょう」

「ああ、そういえば、そうでした」

 僕はむしゃむしゃとパンを食べては、小さな水筒からミルクを飲み干す。すると、列車の中から歓声が上がる。列車の先を見ると、大きな光の玉が空を斜めに横切ってゆく。

「はじまりましたね」

 スーツの人はそう言って、僕に振り返る。

「これからどちらへ?ここから先はさらに人でごったがえすはずですよ」

 そう尋ねてくるので、答えるのに面倒くさくなって逆に聞き返すことにした。

「そちらは、どちらへ?」

 スーツの人はモゴモゴと何かを言って、すうっと息を吐き出す。

 すると、ぱっと、列車から飛び降りた。体はくるくると回転し、腕を広げると、大きな黒い布が出てきて、体は安定する。すると今度は風にのり、上空に行ってしまった。

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