詩集 絶望への招待

地水師

総序

広大な宇宙の果てで、その星は孤独に浮かぶ。
表面は海と陸地でおおわれて、生き物が棲む。

その星に降り立つ人の様々な思いが巡り、
運命の糸を絡めて、もてあそぶ神の悪戯。

美しく、野に咲く花すら仕組まれた悪意の仕業。
真実を知った後でも、今までと変わらぬ思いで

いられるか、敢えて問うまい。人は皆、自分の意思で
生きるもの。その意志すらも、予め計算された

結果だという事にさえ、気付かずに死ぬ幸いが
失われ、すべてが予定でしかない、と知ったときに

どうするか。そんな事実に向き合える者がいるのか。
遥かなる時空を越えた存在が、投げかけてくる

冷徹な観察者目線。情念は隠されたまま
行く末を見届ける意思。密やかに因子は蒔かれ、

自ずから巡る結末。それはまた、次の因子の
計算に使われたのち、捨てられる、時の彼方に。

広大な宇宙。丸ごと費やした実験場で、
消費する無数のいのち。組み上げた方程式は

的確に未来をとらえ、例外を許さない。
生き物は、自然のうちに計算の結果をたどる。

行動は、すべて因子が引き起こした予定調和。
性格は、行動により作られたパターン蓄積。

運命を呼び寄せるのは性格だ。言い換えるなら、
性格は運命(さだめ)を選ぶ。そこからは逃れられない。

人は皆知らないうちに、計算の結果をたどる。
例外は存在しない。無自覚でいるだけなのだ。

誰ひとり気づく事なく、静かなる実験装置は
営みを続けるだけだ。終わる事無く。


ひとかけら 己の生きた 証しさえ
 見えぬ儚さ 思う絶望

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