『俺の妹は、こんなに手がかからない!』
第1話『そっくりさん?』
「おーい! 開けるぞー」
返事も聞かず、いきなり鈴音の部屋を開けると、部屋の片隅に、座った状態で頭から掛け布団を被っている、おそらく鈴音であろう人物の影が見えた。
淡く西陽の射す部屋に入ると、引っ越して間もないため、足元にはまだ開いてない段ボールが2つ放置してある、衣類は畳んではあるが収納もせずフローリングの上に置いたままになっている。
そんな状態で、鈴音は頭から布団を被っているんだから、まさに来るものを拒んでいるようにしか思えない。
だからと言って、鈴音を放っておくわけにはいかない。
まだ、片付けられてないのは住み慣れた地元を離れたのが辛いからなのか……俺たちが孫とはいえ春恵婆ちゃんの家に居候させてもらってる身なんだから、こんなことで迷惑をかけるわけにはいかない。
勢いよくその掛け布団を剥ぎ取ると、バスガイドのコスプレをした鈴音がこちらを睨んできた。
状況が、まだよくわかっていない。
昨日、鈴音からコスプレの会場に行くとは聞いていたが、それから着替えてすらないようだ……
本来なら兄として説教をしなければならないところだが、その赤くなった瞳と腫れぼったいまぶたからして、ずいぶん長く泣いていたであろうことがすぐわかった。
「どうしたんだ? なにかあったのか?」
………
そんな嫌いな人でも見るような顔をして見上げることはないのに……だが、なんと思われようと、俺は鈴音の前で弱いところを見せないと決めている。
それにしても、なんで俺よりしっかりした鈴音が学校をサボったりなんかしたんだろう……
何も答えてくれないというのは辛い、鈴音は、ただ両手で赤くなったまぶたを擦ったと思えば、また睨んでくる。
そもそも、なんで睨まれているのか心当たりはない……しかし、鈴音が困っているというのに、こんなところで引き下がる訳にはいかない。
いったいなんて話しかけたらいいんだ?こうして肝心なときにはいつも何も言ってやれない。そんな無力感に、いつからか胸が締め付けられるような想いをどこかで感じるようになっていた。
「あーっ……」
「ごめんなさいっ!」
(やっと! 沈黙の重圧から解放された!)
それは学校を休んだんだからなぁ、まぁ謝ればいいんだよ、なーんて偉そうに言うだけではダメだ、よく考えて喋らないと、言い合いになればまた鈴音を傷つけるかも知れない。
お前が辛いのはよくわかっている。母さんが天国に行ってもう3年になるんだもんなぁ……あれから色々あったよなぁ……
「私は、貴方の妹さんじゃないんです!」
「んっえ? いやいやいやっ……」
それをすぐに否定はしたものの、耳を疑い、目も疑った、眉間にはシワがより、そして思考は止まった。
言わずもがな、俺にその言葉を受け入れることはできない。 エイプリルフールじゃあるまいし
(ないない!)
「……なに言ってるんだよ! んっ、どうしたんだ?」
「だから、私は貴方の妹さんじゃないんです!」
俺は無意識に、左手を腰に当て、右手の親指と人差し指の第二関節で下唇を軽く挟み、鈴音から視線を右上に反らし……瞬きを数回、、そしてまた鈴音に視線を戻していた。
人生でこれほど、遅い二度見をしたことはない。
いっ 妹さんじゃないって!?
(いやいやいや、んなわけがない!)
だから!15年間も一緒に暮らしてる俺が、妹の鈴音を見間違える?
なるほど、わかりました。なんてその会話を肯定するとはまずできない!
というか……正直、当たり前すぎて最近、鈴音の顔はあまり見てないからホクロとかまではわからないよ!でも声も一緒だし、普通に鈴音にしか見えない。
もう、こうなると鈴音の言い分はさておき、今度はこっちから鈴音の証拠を見つけるしかないよね!
論より証拠だよ。小さい頃の怪我とかさ……
敷き布団の上で女の子座りをしている鈴音は、知らない人でも見るかのような、かなり冷たい目で俺を見てくる。
その他人行儀な感じが無性に俺を緊張させた。
腕回りに怪我はないようだ、後ろにも回って、よくー見ると……なんか……なんか違うような、カツラかと思っていたけど!これ?
「これ!カツラじゃなくて! 地毛じゃん!」
「いたっ!」
「あっごめん! え? 鈴音じゃないのか? ちょちょっちょっと来てくれる?」
強引に彼女の手を引き鏡の前に移動して重なるように並んだ。俺と比べても瞳の色も違えば、二重の感じもなんかちょっと違う気がする……鏡ごしに妹じゃないという妹を見てると、頭の中が真っ白になった。
「そうですよね……私と妹さんは紛れもない偶然の空似なんですから」
(いやっ、平気でとんでもないことを言っているんだけど……目も髪も水色って色が違うから!)
「カラーコンタクト着けて! 髪を染めたんだろ!?」
(もう、反抗期でもいいんですけどー)
「違いますって! ほんとに!」
(((ウソだ………これは、夢か?)))
夢なら覚めてくれと思ったのはこれが初めてだ。
聞けば聞くほど、ローレンシアさんはまるで夢としか思えないような事を言ってくる。
彼女の名前はローレンシア、異世界を又にかけて観光案内をする境界先案内人という仕事に就く、立派な新社会人だというじゃないか……
無論、この世界の住人ではない。
このような事があるのか?頭に入ってくる情報の全てが大きすぎて……その情報が何度も何度も頭を巡った。
バタッ……
(んっ…誰だ……俺を揺らすのは……)
目を覚ますと、目の前に鈴音。
(あれは夢だったのか?って!ちかっ)
「ちーかい! おはよっ……」
右手で鈴音の肩を突き、体を起こそうとするも頭がクラクラしている。
(いや……こっ、これは鈴音の布団?)
俺は、ただ寝ていたという訳ではないようだ。
「いやー、倒れちゃったから心配しましたよ!」
(やはり、倒れていたのか……)
反射的に右手は口を覆い、冷静さを保とうとはしているが、妹の鈴音はまだコスプレしていて、髪の色も違う。
これは、俺がどの時点で気を失ったかで、今後の生活が大きく変わってしまう、よーく考えろ、俺……
「あっ、あのー私は、貴方の妹さんじゃないですよ?」
想像はしていた。でも、それは望まない答えだ、そんな真剣な顔で同じようなことを、もう3回は言われた気がする。
つまり、彼女のコスプレが非常に似合うのは、本物のバスガイドだからと言うのか?
返事も聞かず、いきなり鈴音の部屋を開けると、部屋の片隅に、座った状態で頭から掛け布団を被っている、おそらく鈴音であろう人物の影が見えた。
淡く西陽の射す部屋に入ると、引っ越して間もないため、足元にはまだ開いてない段ボールが2つ放置してある、衣類は畳んではあるが収納もせずフローリングの上に置いたままになっている。
そんな状態で、鈴音は頭から布団を被っているんだから、まさに来るものを拒んでいるようにしか思えない。
だからと言って、鈴音を放っておくわけにはいかない。
まだ、片付けられてないのは住み慣れた地元を離れたのが辛いからなのか……俺たちが孫とはいえ春恵婆ちゃんの家に居候させてもらってる身なんだから、こんなことで迷惑をかけるわけにはいかない。
勢いよくその掛け布団を剥ぎ取ると、バスガイドのコスプレをした鈴音がこちらを睨んできた。
状況が、まだよくわかっていない。
昨日、鈴音からコスプレの会場に行くとは聞いていたが、それから着替えてすらないようだ……
本来なら兄として説教をしなければならないところだが、その赤くなった瞳と腫れぼったいまぶたからして、ずいぶん長く泣いていたであろうことがすぐわかった。
「どうしたんだ? なにかあったのか?」
………
そんな嫌いな人でも見るような顔をして見上げることはないのに……だが、なんと思われようと、俺は鈴音の前で弱いところを見せないと決めている。
それにしても、なんで俺よりしっかりした鈴音が学校をサボったりなんかしたんだろう……
何も答えてくれないというのは辛い、鈴音は、ただ両手で赤くなったまぶたを擦ったと思えば、また睨んでくる。
そもそも、なんで睨まれているのか心当たりはない……しかし、鈴音が困っているというのに、こんなところで引き下がる訳にはいかない。
いったいなんて話しかけたらいいんだ?こうして肝心なときにはいつも何も言ってやれない。そんな無力感に、いつからか胸が締め付けられるような想いをどこかで感じるようになっていた。
「あーっ……」
「ごめんなさいっ!」
(やっと! 沈黙の重圧から解放された!)
それは学校を休んだんだからなぁ、まぁ謝ればいいんだよ、なーんて偉そうに言うだけではダメだ、よく考えて喋らないと、言い合いになればまた鈴音を傷つけるかも知れない。
お前が辛いのはよくわかっている。母さんが天国に行ってもう3年になるんだもんなぁ……あれから色々あったよなぁ……
「私は、貴方の妹さんじゃないんです!」
「んっえ? いやいやいやっ……」
それをすぐに否定はしたものの、耳を疑い、目も疑った、眉間にはシワがより、そして思考は止まった。
言わずもがな、俺にその言葉を受け入れることはできない。 エイプリルフールじゃあるまいし
(ないない!)
「……なに言ってるんだよ! んっ、どうしたんだ?」
「だから、私は貴方の妹さんじゃないんです!」
俺は無意識に、左手を腰に当て、右手の親指と人差し指の第二関節で下唇を軽く挟み、鈴音から視線を右上に反らし……瞬きを数回、、そしてまた鈴音に視線を戻していた。
人生でこれほど、遅い二度見をしたことはない。
いっ 妹さんじゃないって!?
(いやいやいや、んなわけがない!)
だから!15年間も一緒に暮らしてる俺が、妹の鈴音を見間違える?
なるほど、わかりました。なんてその会話を肯定するとはまずできない!
というか……正直、当たり前すぎて最近、鈴音の顔はあまり見てないからホクロとかまではわからないよ!でも声も一緒だし、普通に鈴音にしか見えない。
もう、こうなると鈴音の言い分はさておき、今度はこっちから鈴音の証拠を見つけるしかないよね!
論より証拠だよ。小さい頃の怪我とかさ……
敷き布団の上で女の子座りをしている鈴音は、知らない人でも見るかのような、かなり冷たい目で俺を見てくる。
その他人行儀な感じが無性に俺を緊張させた。
腕回りに怪我はないようだ、後ろにも回って、よくー見ると……なんか……なんか違うような、カツラかと思っていたけど!これ?
「これ!カツラじゃなくて! 地毛じゃん!」
「いたっ!」
「あっごめん! え? 鈴音じゃないのか? ちょちょっちょっと来てくれる?」
強引に彼女の手を引き鏡の前に移動して重なるように並んだ。俺と比べても瞳の色も違えば、二重の感じもなんかちょっと違う気がする……鏡ごしに妹じゃないという妹を見てると、頭の中が真っ白になった。
「そうですよね……私と妹さんは紛れもない偶然の空似なんですから」
(いやっ、平気でとんでもないことを言っているんだけど……目も髪も水色って色が違うから!)
「カラーコンタクト着けて! 髪を染めたんだろ!?」
(もう、反抗期でもいいんですけどー)
「違いますって! ほんとに!」
(((ウソだ………これは、夢か?)))
夢なら覚めてくれと思ったのはこれが初めてだ。
聞けば聞くほど、ローレンシアさんはまるで夢としか思えないような事を言ってくる。
彼女の名前はローレンシア、異世界を又にかけて観光案内をする境界先案内人という仕事に就く、立派な新社会人だというじゃないか……
無論、この世界の住人ではない。
このような事があるのか?頭に入ってくる情報の全てが大きすぎて……その情報が何度も何度も頭を巡った。
バタッ……
(んっ…誰だ……俺を揺らすのは……)
目を覚ますと、目の前に鈴音。
(あれは夢だったのか?って!ちかっ)
「ちーかい! おはよっ……」
右手で鈴音の肩を突き、体を起こそうとするも頭がクラクラしている。
(いや……こっ、これは鈴音の布団?)
俺は、ただ寝ていたという訳ではないようだ。
「いやー、倒れちゃったから心配しましたよ!」
(やはり、倒れていたのか……)
反射的に右手は口を覆い、冷静さを保とうとはしているが、妹の鈴音はまだコスプレしていて、髪の色も違う。
これは、俺がどの時点で気を失ったかで、今後の生活が大きく変わってしまう、よーく考えろ、俺……
「あっ、あのー私は、貴方の妹さんじゃないですよ?」
想像はしていた。でも、それは望まない答えだ、そんな真剣な顔で同じようなことを、もう3回は言われた気がする。
つまり、彼女のコスプレが非常に似合うのは、本物のバスガイドだからと言うのか?
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