『俺の妹は、こんなに手がかからない!』

黒猫

 第2.5話『コスプレ作戦?』

「さっきは、ありがとう」




 ローレンシアさんが優しい人なのはわかった。しかし、これから何をしたらいいのか、わからなくなってしまった。




「さっき、妹さんが、宮子さんに会いに行ったって言ってたのは、何かわかったってことですか?」


 やはり、聞こえてたのかぁ……これは、正直に話すべきだよなぁ。
 確信をついた発言に、ローレンシアさんから少し目を背けたが、俺が鈴音でも同じことをしていたかも知れない。


「昨日のコスプレックス2023には、妹の鈴音も行ってたみたいなんだ、そして自分にそっくりなローレンシアさんを見つけた鈴音は、理由はわからないがこの世の住人じゃないことに気付いて、母が昔していたバスガイドのコスプレまでしているローレンシアさんを違う世界の自分だと思ったんじゃないかな? それで、この世界じゃなければもう一度お母さんに会えるって考えたのかも知れない」




「そんな、賭けみたいなことします?」




「それが、見た目はローレンシアさんそっくりなんだけど、亥年生まれの鈴音は、昔から猪突猛進なところがあるんだ。本当にそうならローレンシアさんには申し訳ないと思っている。」




 深く頭を下げ思っていることは言った。


 これからどうなるのやら……




「よかったー。わかっててヴァーフルに行ってるなら、妹さんは大丈夫かもしれませんよ。」


(よかったの?)


「そうなの?」


 ローレンシアさんは自分も困っているのに、俺のことまで、よく考えてくれる。なんていい子だ。


「だって、ヴァーフルでは、私の家に宮子さんが居候してますからね!」




 すごく笑顔で、また……とんでもないことを言っている。


 妹にも、こんな笑顔ができたのか?




 聞けば、彼女のいたヴァーフルと呼ばれる異世界の星では、この世界では見えない物が具現化されたりするのだと言う。
 霊体の母さんは輪廻転生の途中でヴァーフルを通過している時、普通なら表れない心残りを思い出したのだと言う。それは、ローレンシアさんが鈴音にすごく似ていた為に消えたはずの記憶をいろいろと思い出したのだという。
 そこで本来の霊体なら立ち止まる理由もなく転生先に進むところ、娘にそっくりなローレンシアさんの成長を見守りたくなったようで、何故か、日本語家庭教師としてローレンシアさんの家に居候しているらしい。


 もし、母がローレンシアに会っていなかったら、ローレンシアさんが日本語や文化を教わることもなく、この世界に来ることもできなかったのだという。


 異世界観光は超高額で、日本を教えてくれた母にはすごく恩があるのだという。




 正直、鈴音なら大丈夫だとは思っていたが、母と一緒ならもっと安心できる。


 むしろ、鈴音には悪いが、鈴音の心配をしている暇はないかも知れない……




「でも、なんで鈴音さんがヴァーフルに行けたのか、不思議なんですよね。私とそっくりだからなのか」




「俺は、その異世界に行けたりしないの?」




「それは無理でしょーね。 私のいたヴァーフルから往き来はできても、本来は違う世界の人は連れて帰れないはずなんです。逆に、連れてきた人を置いて帰ることもできません。 それなのに、私を探しに来ないと言うことは、やはり鈴音さんがゲートを問題なく通過したんでしょう。 当然、この世界には、境界を越えられる利器はありませんし、全世界の境界には世界毎に様々な条件がありますから行けないと思います。 もし、この世界からヴァーフルに行けるとしたら、輪廻転生でこの世界から解放されて、数多ある異世界の中から偶然通りかかって、宮子さんのように奇跡的に記憶を思い出すしかないと思うんですよね。」


(それは、無理ですね……)






 やはり、今、考えるべきは……


 ローレンシアさんとの今後の計画か……


(なんだ?)


 ローレンシアさんがすごく何か言いたそうな顔をしてる、他人とは思えないわかりやすさだ。






「だからぁ!おそらく!来年のコスプレックスまで……私は……帰ることができないんです!」


「で、ですよね……」


(想定外の長さですけどね!)


「そんなに長い間ほんとにいいの?」




「むしろ、鈴音が帰るまで居てくれないと、こっちも困るからさ……いいっ……」


 って、すぐ抱きついてくるのは日本の文化じゃないんですけど……


「あーりーがーとー」


「もう、いいから……」




「あっ、あと、この世界でも、私が別の世界の人だとは!」


「わかってるよ、秘密だよね!」


「はい。もしバレたらヤバいと思うので……」


「ん? ヤバいって?」




「私のいたヴァーフルには『境界協定法』と言うのがあって、世界間の侵略や逃亡をすると罪になるんですよ。」


(なるほど……)


「で? 罰が重いとか?」


「もしバレて、理解が得られない場合は、これを知っている人は全て消されてしまうかも知れませんっ!」




((とんでもないこと言ったな!!))




 まぁ不運不運の人生でしたよ。成長する度に人が離れていき……ついに消されますか……


「じゃあ……絶対バレないようにしないとね」


 今、完全に俺の顔はひきつってるだろう。
 俺は、想像していたよりかなり大きな問題を抱えてしまったようだ、これこそ、神谷家の呪いというべきか……




「でも! 大丈夫ですよ!」




(なんの自信ー!?)


「大丈夫?」




「だって私はコスプレ上手いですから! 鈴音さんのコスプレをしたらいいんですよね!?」


 まさかの乗り気か? なんか、騙されたとか思ってないのかな?


「え、あーっ 怒ったりしてないの?」




「なんで? 日本で1年間! 日常体験できるんですよ? すごくないですか?」




 ある意味すごい……さっき深刻な顔して消されるとか言ってたのに、もう笑ってる……やはり、鈴音とは全然違うなぁ。




 それでなくても俺は苦労が絶えないのに、どうやらこの1年は、ローレンシアさんと鈴音の秘密を守って生活しなければならないようだ……




「……あっ、この部屋使ってくれたらいいからさ。むしろ、使ってくれないと変に疑われるからね! ほんとに妹の事は、ゴメっ……」


 って、また、なんでこんなに抱きついてくる?


「ありがとっ」


「ちょっ 恥ずかしいから……」




 これが妹じゃない女子なら、すごく嬉しいのかもしれない……でも、ローレンシアさんは鈴音にしか見えない。




「あっごめんっ! ついつい!」




 その、ついついって言う補足が、なんかわざとらしい




(気のせいか……ローレンシアさんに限って、そんなことはない……)







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