狩龍人と巫女と異世界と
10 世界の成り立ち
「戻ったぜ!」
「随分とゆっくりとした帰還じゃなぁナツキよ」
「宿屋のベッドでしっぽりとした一夜を過ごさせてもらったからな」
「な、なんと?!巫女様!それは真ですか!」
「まことじゃございません!」
城塞都市サイガを飛び立った私達は小一時間程度の空の旅を経てマハー・ヴァイロ国の首都マハー・ヴァイロへと戻って来ていた。
神殿のオルトロイへ帰還の報告をするぞとナツキに連れられて来ればこの掛け合いである。
封印していた側と封印されていた側という正反対の位置にいる二人のくせに凄く仲が良い。
まったくおかしな二人だね。
「ンで、オルトロイ。当座の危機は去ったンだろ?」
「そうじゃな。今後はなぜここまで魔の者達が活性化したのか原因を突き止める必要がありそうじゃが……」
「行動が遅いな」
「今は戦争も無くてな。二百年前の魔龍王戦争時とは兵も、隠密も質が落ちておっての……」
「平和過ぎたってこったな」
やれやれと息を吐くおじいちゃんと肩を竦めるナツキ。本当に仲がいい。
しかし
「魔龍王戦争?」
「ああ、ユナは知らなくて当然だな」
「二百年前の事ですじゃ……魔の大地に住まう魔の者を、魔龍王と名乗る一頭の龍が平定したのが始まりです」
マハー・ヴァイロ国の衛星都市、城塞都市サイガから歩く事一週間くらいの場所に魔の者が住まう大地との国境と定めた大森林がある。
国境と言っても、魔の者には人間の言葉などほとんど通用しないため、半ば一方的にこちら側が国境と称して線引をしたのが始まりである。
そしてその大森林の奥深くには、魔の大地と呼ばれる地域がある。
魔の大地には人間は一人も居ない。
というのも、これは二百年前よりも遥かに昔、当時この星が、全ての大地が神々の楽園と呼ばれ、人と神々が住まう神話の時代に遡る。
当時の神々の間に一人の子供が産まれた。
それはもう、その子供は全ての神々からの祝福を与えられ育てられる事になった。
そしてその子供は当時大地に住まう人間と一緒に、仲良く育っていったという。
ある時、仲の良い一人の人間から神々しか食す事を許されないという伝説の果実を分けてもらえないか?と懇願され、神の子は親の神々に相談なしに、一つだけならいいか?と果実をもいで与えてしまった。
その果実を下賜された人間は、急速に力を付けてしまう。
それは実は、神々しか食すことを許されない伝説の果実は神々のパワーの源だったからだ。
その力を付けた人間はもっと果実を食べれば、自分たちを支配している神々を逆に支配できるかもしれないと考えた。
そして、入念な計画を練り、果実を黙って持ってきてしまった神の子を脅し、果実を再び、今度はみのっている実の全てを手に入れてしまった。
そしてそれら全てを食した人間は神々をも超える圧倒的な力と姿を手にしてしまう。
その段階になってようやく異変に気がついた神々だったが時すでに遅く……
神をも圧倒するほどの力を手にし、姿形すら異形となった元人間により、一人、また一人と討滅されてしまう。
そうして減っていく神の数に恐怖した神々は総力を結集し、その異形となった人間を大地の果てに肉体を、そして魂を結晶化して砕き、大地の果てに散り散りにする事で封印する事が出来たのだが……
その結果、力を使い果たした神々は神界があるとされる天空へと帰っていったという。
そうして大地に取り残された形になった人々だったが、神に与えられた技術や魔法を駆使し、なんとか自分たちだけの力で発展していこうと奮闘していた矢先の出来事である。
異形となった人間の肉体と魂が封印されたとされる大地の果て。
そこから今まで見たこともない異形の動植物が姿を現し始める。
それは緑の裸をした小人や、豚の鼻を持つ巨漢、または額に角を生やした巨人のような者など様々だった。
そして、現れた彼らは一様に人間を見かけると襲いかかったという。
人々はそれら異形種を、魔に堕ちた人間から産まれし者という意味を込め、『魔の者』と呼ぶようになったという。
結局、バラバラに現れる魔の者は、力を束ねた人々の手により大森林の奥地へと追いやられ、そこに封じ込められるようにして生活する事を余儀なくされたそうだ。
そして約二百年
一頭の龍が現れる。
その龍は様々な言語を使い、また魔の者特有の豊富な魔力から様々な強力な魔法を操る。
そして龍特有の恵まれた体躯により、瞬く間に果ての大地に住まう魔の者を集め、併合した。
そして魔の者の住まう果ての大地を魔国と称し、また自身の事を魔龍王と名乗る。
そして大森林を挟んで繁栄する人間に牙を剥いたのだ。
「ンで、困った人族の筆頭マハー・ヴァイロ国は当時の巫女である風凪を使って俺を召喚した」
ナツキはVRMMO、パーフェクトレジェンドという私のパーフェクトオンラインの最新版ゲームの最古参プレイヤーだったらしい。
つまり、ナツキは私から見れば未来人という事になる。
そんな未来人ことナツキは、いろいろな職業からなるツリーの最上位に位置する狩龍人という、世界展開しているゲーム内において、当時三人しか存在して居らず、その内の一人だったという。
そして、召喚されたナツキはその持ち前の金と時間に物を言わせた能力で、魔の大地に攻め入り、十年足らずで魔龍王を討伐したそうだ。
「アレが龍種ってぇのもな。狩龍人は職業上、対龍特攻があってな。内容は龍相手だと与えダメ四百%の壊れ効果な」
うん。聞いてるだけでぶっ壊れだね。
なんせ、都市を覆うほどの数を一瞬で滅する事が出来るナツキの能力が四倍なのだから反則もいいところだ。
討伐された魔龍王は泣いていいと思う。
そして召喚というある意味ガチャに勝った人族は運が良かったのだろう。
しかし、狩人だと思っていたら龍をも狩る人で狩龍人という事で、私の盛大な勘違いであった。
「随分とゆっくりとした帰還じゃなぁナツキよ」
「宿屋のベッドでしっぽりとした一夜を過ごさせてもらったからな」
「な、なんと?!巫女様!それは真ですか!」
「まことじゃございません!」
城塞都市サイガを飛び立った私達は小一時間程度の空の旅を経てマハー・ヴァイロ国の首都マハー・ヴァイロへと戻って来ていた。
神殿のオルトロイへ帰還の報告をするぞとナツキに連れられて来ればこの掛け合いである。
封印していた側と封印されていた側という正反対の位置にいる二人のくせに凄く仲が良い。
まったくおかしな二人だね。
「ンで、オルトロイ。当座の危機は去ったンだろ?」
「そうじゃな。今後はなぜここまで魔の者達が活性化したのか原因を突き止める必要がありそうじゃが……」
「行動が遅いな」
「今は戦争も無くてな。二百年前の魔龍王戦争時とは兵も、隠密も質が落ちておっての……」
「平和過ぎたってこったな」
やれやれと息を吐くおじいちゃんと肩を竦めるナツキ。本当に仲がいい。
しかし
「魔龍王戦争?」
「ああ、ユナは知らなくて当然だな」
「二百年前の事ですじゃ……魔の大地に住まう魔の者を、魔龍王と名乗る一頭の龍が平定したのが始まりです」
マハー・ヴァイロ国の衛星都市、城塞都市サイガから歩く事一週間くらいの場所に魔の者が住まう大地との国境と定めた大森林がある。
国境と言っても、魔の者には人間の言葉などほとんど通用しないため、半ば一方的にこちら側が国境と称して線引をしたのが始まりである。
そしてその大森林の奥深くには、魔の大地と呼ばれる地域がある。
魔の大地には人間は一人も居ない。
というのも、これは二百年前よりも遥かに昔、当時この星が、全ての大地が神々の楽園と呼ばれ、人と神々が住まう神話の時代に遡る。
当時の神々の間に一人の子供が産まれた。
それはもう、その子供は全ての神々からの祝福を与えられ育てられる事になった。
そしてその子供は当時大地に住まう人間と一緒に、仲良く育っていったという。
ある時、仲の良い一人の人間から神々しか食す事を許されないという伝説の果実を分けてもらえないか?と懇願され、神の子は親の神々に相談なしに、一つだけならいいか?と果実をもいで与えてしまった。
その果実を下賜された人間は、急速に力を付けてしまう。
それは実は、神々しか食すことを許されない伝説の果実は神々のパワーの源だったからだ。
その力を付けた人間はもっと果実を食べれば、自分たちを支配している神々を逆に支配できるかもしれないと考えた。
そして、入念な計画を練り、果実を黙って持ってきてしまった神の子を脅し、果実を再び、今度はみのっている実の全てを手に入れてしまった。
そしてそれら全てを食した人間は神々をも超える圧倒的な力と姿を手にしてしまう。
その段階になってようやく異変に気がついた神々だったが時すでに遅く……
神をも圧倒するほどの力を手にし、姿形すら異形となった元人間により、一人、また一人と討滅されてしまう。
そうして減っていく神の数に恐怖した神々は総力を結集し、その異形となった人間を大地の果てに肉体を、そして魂を結晶化して砕き、大地の果てに散り散りにする事で封印する事が出来たのだが……
その結果、力を使い果たした神々は神界があるとされる天空へと帰っていったという。
そうして大地に取り残された形になった人々だったが、神に与えられた技術や魔法を駆使し、なんとか自分たちだけの力で発展していこうと奮闘していた矢先の出来事である。
異形となった人間の肉体と魂が封印されたとされる大地の果て。
そこから今まで見たこともない異形の動植物が姿を現し始める。
それは緑の裸をした小人や、豚の鼻を持つ巨漢、または額に角を生やした巨人のような者など様々だった。
そして、現れた彼らは一様に人間を見かけると襲いかかったという。
人々はそれら異形種を、魔に堕ちた人間から産まれし者という意味を込め、『魔の者』と呼ぶようになったという。
結局、バラバラに現れる魔の者は、力を束ねた人々の手により大森林の奥地へと追いやられ、そこに封じ込められるようにして生活する事を余儀なくされたそうだ。
そして約二百年
一頭の龍が現れる。
その龍は様々な言語を使い、また魔の者特有の豊富な魔力から様々な強力な魔法を操る。
そして龍特有の恵まれた体躯により、瞬く間に果ての大地に住まう魔の者を集め、併合した。
そして魔の者の住まう果ての大地を魔国と称し、また自身の事を魔龍王と名乗る。
そして大森林を挟んで繁栄する人間に牙を剥いたのだ。
「ンで、困った人族の筆頭マハー・ヴァイロ国は当時の巫女である風凪を使って俺を召喚した」
ナツキはVRMMO、パーフェクトレジェンドという私のパーフェクトオンラインの最新版ゲームの最古参プレイヤーだったらしい。
つまり、ナツキは私から見れば未来人という事になる。
そんな未来人ことナツキは、いろいろな職業からなるツリーの最上位に位置する狩龍人という、世界展開しているゲーム内において、当時三人しか存在して居らず、その内の一人だったという。
そして、召喚されたナツキはその持ち前の金と時間に物を言わせた能力で、魔の大地に攻め入り、十年足らずで魔龍王を討伐したそうだ。
「アレが龍種ってぇのもな。狩龍人は職業上、対龍特攻があってな。内容は龍相手だと与えダメ四百%の壊れ効果な」
うん。聞いてるだけでぶっ壊れだね。
なんせ、都市を覆うほどの数を一瞬で滅する事が出来るナツキの能力が四倍なのだから反則もいいところだ。
討伐された魔龍王は泣いていいと思う。
そして召喚というある意味ガチャに勝った人族は運が良かったのだろう。
しかし、狩人だと思っていたら龍をも狩る人で狩龍人という事で、私の盛大な勘違いであった。
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