狩龍人と巫女と異世界と
2 いざログイン!
視界が暗転し、しばらくすると目蓋に明かりを感じた私はゆっくりと目蓋を開く。
そうして飛び込んできた光に目蓋を少し顰めて明かりに目を慣らし、ようやく両目をパッチリと開いて周囲を見渡し────
絶句した。
正直、今の私の服装が旧時代の巫女さんが着てそうな薄手の布で、その両サイドを紐靴のようにジグザグに紐を通されただけの際どい衣装による羞耻の心が沸かないほどに。
なぜなら、私の周囲を取り囲むように貫頭衣っぽい布を被った人たちが何やらブツブツと呟いていて、さらにその外周をいろんな年代の人たちが頭を下げて跪いていたからだ。
「儀式?このゲーム……最初から精神的ハードル高すぎないかなぁ?」
私は目の前に広がっている光景に頬を描いた。
その私の声に反応したのか、念仏を唱えている風の貫頭衣の人たちや跪いていた老若男女が一斉に顔を上げる。
正面の一部と視線がバッチリと合ってしまった。
「あ、ども」
私が手を上げて挨拶すると、跪いていた老若男女が一斉に立ち上がり雄叫びを上げた!
「おおおおお!」
「巫女様!」
「みこさまぁぁぁ!」
「ご降臨なされたぁぁぁぁ!」
「我らの祈りが通じたのだ!」
「おお天よ!」
「これで救われるぅぅぁ!」
「なになに?!なんなの?!」
驚く私をよそに、手を一斉に天高く突き上げて号泣する者、隣の人と抱き合い涙を流す者、果には服を脱ぎだして踊りだす者までいる。
あまりにもの気持ち悪さにログアウトをしようと思った私は視界の端に歯車マークを見つけ、たまらず意識を向けた。
この視界の端にある歯車マークは意識を向ける事でシステムメニューを呼び出す事が出来るとマニュアルに書いてあったからだ。
そのマニュアルの通りにシステムメニューが開き、ログアウトの項目を探している内に、一人のおじいちゃんが目の前に進んで来る。
「巫女様」
「……その巫女様って私のこと?」
「もちろんでございます巫女様。どうか私達の話しを聞いてはもらえないでしょうか?」
そうおじいちゃんと会話している間もログアウトの項目を探していたがパッと見みつからず、私は一つ軽く息を吐いたあと、おじいちゃんに話しの先を促した。
「ありがとうございます巫女様」
「今現在、このマハー・ヴァイロ国は危機にひんしております……」
「危機?」
「はい。原因は魔の者と呼ばれる者達が彼らの領土を越え、このマハー・ヴァイロ国に攻め込んで来ているからに他なりません」
「国も必死の抵抗をみせてはおりますが、相手は倒しても倒しても際限なく現れ、軍も最早半壊滅状態……」
「そこで、我ら祈祷師団は国から大役を仰せつかりました。そう……封印されし狩龍人を目覚めさせる事が出来るという伝説の巫女様の召喚という大役です」
そこまでおじいちゃんの話しをチュートリアルってやつね?と思って聞いた私に一つの疑問が浮かび上がった。
「かりゅうど?」
狩人ってあれよね?
弓使って鳥とか落としたりするアレよね?
「はい。このマハー・ヴァイロ国には遠い過去、ドラゴンさえも一撃で屠る伝説の狩龍人がおりました」
「ふむふむ」
弓職最つよフラグかな?
「しかしその狩龍人は自身の力に溺れ、国に牙を剥きました」
「すごい人だねそれ」
ってかこのゲーム、弓ってそんな強いの?
ソシャゲじゃ弓矢の補給代がバカにならない燃費災悪の雑魚職なのに?
「そして国に牙を剥いた狩龍人は民を殺し、兵を殺し、王族すらも手に掛けようとしたその時、当時の巫女様によって封印の岩に封じられ、永遠とも呼べる長い年月を老いもせず、ただ送っているという事なのですが……」
そんな強い弓師って……最早未来の英霊アーチャーさんレベルじゃないですか!
きゃー素敵!
「つまり、私はその封印を解く為にこの世界に召喚されたって事ですよね?!ですよね!!」
「は、はい」
「よし行こう。すぐ行こう。レッツラゴー!」
「巫女様──そちらではございません~!」
何も考えずにタッタカタ~と駆け出すと、おじいちゃんから道が違う!と言われて急旋回。
そうしておじいちゃんに道案内されること三十分くらい。結構歩いたな……
私は一つの大きな岩の前に立っていた。
その岩には太い綱が巻かれ、その綱の正面には一枚の御札が付いている。
「この岩が封印の?」
「さようでございます」
「ふぅん……」
「あ、巫女様!」
私がなんの気なしにその綱に手を伸ばし、おじいちゃんが声を上げた瞬間────
バチィィィン!
ものすごく強い静電気のような物綱に手を伸ばした私の手を弾いた!
同時にポロリと落ちたのは一枚の御札。
そして────
今の今まで青く、雲一つ無かった空から突然に、蒼白い稲妻が轟音を立てて封印の岩に突き刺さる!
「キャッ!────」
その稲妻を受けた岩は、私を吹き飛ばしながら粉々に砕け散り、辺りを粉塵で覆い隠す。
「けほっ……何なのよもう!」
吹き飛ばされた私だが、ゲーム内のアバターの肉体はダメージらしいダメージを負ってはおらず、普通に立ち上がる事ができた。
現実世界だったら死んでたねこれ。なんて暢気な事を思いつつホコリを叩いた落としていると
「外……か。あンのアバズレめ、俺を時間の牢獄になンかに閉じ込めやがって……」
突然聞こえてきた男臭い声にガラの悪いセリフに私は顔を向けた。
その視線の先は
粉塵が冷め、封印の岩があったところには一人の男が立っていたのだった。
そうして飛び込んできた光に目蓋を少し顰めて明かりに目を慣らし、ようやく両目をパッチリと開いて周囲を見渡し────
絶句した。
正直、今の私の服装が旧時代の巫女さんが着てそうな薄手の布で、その両サイドを紐靴のようにジグザグに紐を通されただけの際どい衣装による羞耻の心が沸かないほどに。
なぜなら、私の周囲を取り囲むように貫頭衣っぽい布を被った人たちが何やらブツブツと呟いていて、さらにその外周をいろんな年代の人たちが頭を下げて跪いていたからだ。
「儀式?このゲーム……最初から精神的ハードル高すぎないかなぁ?」
私は目の前に広がっている光景に頬を描いた。
その私の声に反応したのか、念仏を唱えている風の貫頭衣の人たちや跪いていた老若男女が一斉に顔を上げる。
正面の一部と視線がバッチリと合ってしまった。
「あ、ども」
私が手を上げて挨拶すると、跪いていた老若男女が一斉に立ち上がり雄叫びを上げた!
「おおおおお!」
「巫女様!」
「みこさまぁぁぁ!」
「ご降臨なされたぁぁぁぁ!」
「我らの祈りが通じたのだ!」
「おお天よ!」
「これで救われるぅぅぁ!」
「なになに?!なんなの?!」
驚く私をよそに、手を一斉に天高く突き上げて号泣する者、隣の人と抱き合い涙を流す者、果には服を脱ぎだして踊りだす者までいる。
あまりにもの気持ち悪さにログアウトをしようと思った私は視界の端に歯車マークを見つけ、たまらず意識を向けた。
この視界の端にある歯車マークは意識を向ける事でシステムメニューを呼び出す事が出来るとマニュアルに書いてあったからだ。
そのマニュアルの通りにシステムメニューが開き、ログアウトの項目を探している内に、一人のおじいちゃんが目の前に進んで来る。
「巫女様」
「……その巫女様って私のこと?」
「もちろんでございます巫女様。どうか私達の話しを聞いてはもらえないでしょうか?」
そうおじいちゃんと会話している間もログアウトの項目を探していたがパッと見みつからず、私は一つ軽く息を吐いたあと、おじいちゃんに話しの先を促した。
「ありがとうございます巫女様」
「今現在、このマハー・ヴァイロ国は危機にひんしております……」
「危機?」
「はい。原因は魔の者と呼ばれる者達が彼らの領土を越え、このマハー・ヴァイロ国に攻め込んで来ているからに他なりません」
「国も必死の抵抗をみせてはおりますが、相手は倒しても倒しても際限なく現れ、軍も最早半壊滅状態……」
「そこで、我ら祈祷師団は国から大役を仰せつかりました。そう……封印されし狩龍人を目覚めさせる事が出来るという伝説の巫女様の召喚という大役です」
そこまでおじいちゃんの話しをチュートリアルってやつね?と思って聞いた私に一つの疑問が浮かび上がった。
「かりゅうど?」
狩人ってあれよね?
弓使って鳥とか落としたりするアレよね?
「はい。このマハー・ヴァイロ国には遠い過去、ドラゴンさえも一撃で屠る伝説の狩龍人がおりました」
「ふむふむ」
弓職最つよフラグかな?
「しかしその狩龍人は自身の力に溺れ、国に牙を剥きました」
「すごい人だねそれ」
ってかこのゲーム、弓ってそんな強いの?
ソシャゲじゃ弓矢の補給代がバカにならない燃費災悪の雑魚職なのに?
「そして国に牙を剥いた狩龍人は民を殺し、兵を殺し、王族すらも手に掛けようとしたその時、当時の巫女様によって封印の岩に封じられ、永遠とも呼べる長い年月を老いもせず、ただ送っているという事なのですが……」
そんな強い弓師って……最早未来の英霊アーチャーさんレベルじゃないですか!
きゃー素敵!
「つまり、私はその封印を解く為にこの世界に召喚されたって事ですよね?!ですよね!!」
「は、はい」
「よし行こう。すぐ行こう。レッツラゴー!」
「巫女様──そちらではございません~!」
何も考えずにタッタカタ~と駆け出すと、おじいちゃんから道が違う!と言われて急旋回。
そうしておじいちゃんに道案内されること三十分くらい。結構歩いたな……
私は一つの大きな岩の前に立っていた。
その岩には太い綱が巻かれ、その綱の正面には一枚の御札が付いている。
「この岩が封印の?」
「さようでございます」
「ふぅん……」
「あ、巫女様!」
私がなんの気なしにその綱に手を伸ばし、おじいちゃんが声を上げた瞬間────
バチィィィン!
ものすごく強い静電気のような物綱に手を伸ばした私の手を弾いた!
同時にポロリと落ちたのは一枚の御札。
そして────
今の今まで青く、雲一つ無かった空から突然に、蒼白い稲妻が轟音を立てて封印の岩に突き刺さる!
「キャッ!────」
その稲妻を受けた岩は、私を吹き飛ばしながら粉々に砕け散り、辺りを粉塵で覆い隠す。
「けほっ……何なのよもう!」
吹き飛ばされた私だが、ゲーム内のアバターの肉体はダメージらしいダメージを負ってはおらず、普通に立ち上がる事ができた。
現実世界だったら死んでたねこれ。なんて暢気な事を思いつつホコリを叩いた落としていると
「外……か。あンのアバズレめ、俺を時間の牢獄になンかに閉じ込めやがって……」
突然聞こえてきた男臭い声にガラの悪いセリフに私は顔を向けた。
その視線の先は
粉塵が冷め、封印の岩があったところには一人の男が立っていたのだった。
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